【マーティ&上坂すみれ 昭和・平成ソングって素敵じゃん】少年隊「仮面舞踏会」ジャニーさんから一度却下されていた

筒美さんのヒット曲を分析したマーティと上坂(左)

昭和生まれのアラフォー~アラ還が懐かしむ歌手や楽曲を、平成生まれのアイドルと外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか。ゲストは声優・歌手として活躍する上坂すみれ。今回もマーティ・フリードマンと昭和歌謡を代表する作曲家、故筒美京平さんの曲について語ります。曲を聴きながら読んでみてください。

【筒美京平論3】

――曲を聴く前に、おふたりは筒美さんのことをよく知っていましたか

マーティ ぼくは名前を知らなかったです。だからあまり詳しくないんですよ。

上坂 私は作曲者を見ながら音楽を聴いたことがなかったんですけど、筒美さんの作曲リストを見たら、少年隊やCCB、中山美穂さん…と好きな歌手の曲がたくさん! しかもそれぞれの方のヒット曲を手掛けていらっしゃったんですね。意識しなくても、自然と聴いていました。

――上坂さんと同じ感想を持つ人は多そうですね。では筒美さんの曲、まずは1970年代初めと80年代の終わりに2回ヒットした「17才」です。最初は南沙織版(71年)から。マーティさん、このメロディーはどう思いますか

マーティ 70年ごろのアメリカの音楽の影響を感じますね。カーペンターズ系の人の音を取り入れながら、東洋的な解釈を加えたイメージです。

――確かにカーペンターズはこの曲が出る前年、70年からヒット曲を次々と出して、アメリカで大人気になっていました

上坂 私は森高千里さんがカバーした「17才」(89年)を先に聴いて、それがオリジナルだと思ってました。後から南さんが歌っていたと知りました。いま聴くととてもいいですね。

――ではその森高さんバージョンを聴いてみましょう

上坂 かわいいですね~。

マーティ 80年代っぽいですね。80年代はシンセの音を入れると現代的という作り方でした。最初の南さんと森高さんの間に、例えばYMOが出てきたじゃん。森高さんバージョンはテクノの影響がしっかり入ってます。

――続いて先ほど名前が出た少年隊のデビュー曲「仮面舞踏会」(85年)です

マーティ ドラムビートのチャチさが気になります。楽器屋で一番安いドラムマシンの音ですよ。

上坂 わざと使ったんですかね?

マーティ その当時はチャチに感じなかったと思います。YMOのクオリティーからははるか遠いです。これはとにかくエレクトロニックな音を入れちゃおうって感じです。

――曲はどうでしょう

マーティ 邦楽の中の邦楽ですね。

上坂 タンタタン、ヒューがアイドルっぽいですね。アニソンでも特にBメロによく入ってます。お客さんが乗りやすいんです。こういうのが入っているとうれしいですね。

――筒美さんが残した名曲のひとつですが、当時担当した音楽プロデューサーの鎌田俊哉氏によれば、ジャニー喜多川さんから「この曲じゃダメ」と一度却下されたそうです

上坂 なぜですか?

――ジャニーさんは少年隊を世界デビューさせようとしていたんです。そのためにダンスはマイケル・ジャクソンの振付師、マイケル・ピータースに指導してもらっています。世界を目指していたため、ハードルが非常に高かったそうです

マーティ ぼくはジャニーさんの肩を持ちます。この曲、ちょっと微妙ですよ。ほかの筒美さんの曲、例えば「魅せられて」とは別の世界です。ジャニーさんが納得しなかった気持ち、わかります。

――ちなみに鎌田氏によれば、独特のイントロは当時人気だった「クイズ・ドレミファドン!」のイントロクイズで出題されることも狙ったそうで、「トゥナイヤヤヤヤ」のところは、サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」(78年)の「ラララ~ララ」を意識して作ってもらったそうです

上坂 当時の人がうれしいものを筒美先生が詰め込んだんですね。ノスタルジーを感じながら楽しめますね。

☆うえさか・すみれ 1991年12月19日生まれ。神奈川県出身。上智大学外国語学部ロシア語学科卒。2012年に本格的に声優デビュー。13年にアニメ「波打際のむろみさん」の主題歌「七つの海よりキミの海」で歌手デビュー。ロシア、昭和歌謡、メタルロック、戦車、ロリータ、プロレス、ひげなど多方面の知識を持つ。最新アルバムは「NEO PROPAGANDA」(キングレコード)。

☆マーティ・フリードマン 米国・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮華」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。伝説の音楽バラエティー「ROCK FUJIYAMA」がユーチューブで復活。

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