【新型コロナ】既存の抗リウマチ薬で重症患者の生存率改善 英政府、治療薬として承認へ

 英国のジョンソン首相は現地時間7日の記者会見で、既存の抗リウマチ薬2種類について、新型コロナウイルス感染症の重症患者の生存率などが優位に改善したとし、近日中に治療薬として承認する方向だと発表した。国立病院などが参加していた臨床試験で、重症となり集中治療を受けていた患者に対し投与したところ、有意に生存率の改善と集中治療期間の短縮がみられたという。

トシリズマブ」と「サリルマブ」の投与で効果みられる

 首相が発表したのはインペリアル・カレッジ・ロンドンが主導していた臨床試験の内容で、重症化し集中治療室(ICU)に入った患者401人に対し、現在主に抗リウマチ薬として使用されている「トシリズマブ」「サリルマブ」を投与したところ、死亡率について対照群では35.8%だったのに対し、トシリズマブで28%、サリルマブで22.2%であったことが分かったという。また投与した患者については、同時に約1週間早く集中治療室(ICU)から出られたことも判明している。

 この両薬は体内の免疫を制御する物質のひとつ「インターロイキン(IL-6)」と結合し、主にリウマチの悪化を予防するための薬として承認され広く処方されている。そのうち「トシリズマブ」は大阪大学と中外製薬が共同開発した世界初のIL-6阻害剤。

 リウマチも新型コロナウイルス感染症も、重症化には免疫物質が過敏な反応を起こし体内組織を攻撃し始める「サイトカインストーム(免疫暴走)」が大きく関わっているとされており、重症化した段階ではこれら既存の免疫抑制剤が効果的なのでは、という声が世界の医療現場から上がっていた。今回臨床研究でエビデンスが得られたことで、各国での取り組みが加速することが期待される。なお今回発表された研究については、査読前の論文として以下に公開されている。

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