世間は怒! 序二段力士の「コロナ引退」騒動で改めて露見した相撲協会のズレっぷり

初場所が〝強行開催〟されている両国国技館

大相撲初場所(東京・両国国技館)は新型コロナウイルスの影響で力士が大量休場する異常事態が続く中、土俵外でも騒動が広がっている。新型コロナに対する恐怖心を理由に引退した元序二段琴貫鐵(ことかんてつ)の柳原大将氏(22)がSNSを通じて無念の思いを吐露した。ネット上では日本相撲協会への批判が噴出する一方で、協会側も柳原氏の主張に〝猛反論〟を展開。事態は泥沼化の様相を呈しているのだ。

柳原氏は初場所の初日前日(9日)に自身のツイッター上で「コロナの中、相撲を取るのは怖い」と引退を報告。当初は休場することを希望していたが、相撲協会から却下されたことを引退の理由に挙げた。10日には元関脇貴闘力の鎌苅忠茂氏(53)によるユーチューブチャンネル「貴闘力部屋」に出演し、過去に心臓の手術を受けていたことなどが明かされた。

一方、日本相撲協会の芝田山広報部長(58=元横綱大乃国)は「『コロナが怖いから休場させて』では理屈が通らない」と柳原氏の主張を一蹴。さらに「力士は相撲を取ってなんぼなんだから。協会は(感染症の)対策を取ってやっている。ユーチューブで〝師匠にやめさせられた〟とか言っていたとか。続編もある? こちら(協会)としては、どうこうはない」と突き放した。

角界内も、今回の〝コロナ引退〟に関しては冷ややかな視線を向けている。関係者の一人は「引退は本人の自由」と前置きした上で「どうして、わざわざ場所中に騒ぎを大きくしようとするのか」と疑問を投げかけた。その是非は別にして、角界では古くから本場所開催中に力士らが相撲以外の話題で注目を集めることは〝禁じ手〟とされてきた。世間の関心が土俵外に向けば、本場所の盛り上がりに水を差されるとの考えがあるからだ。

すでに引退したといっても、元力士は協会の一員だった立場。今回の行動は理解しがたいものに映っているようだ。とはいえ、これも角界の内側からの見方に過ぎない。ネット上では相撲協会の一連の対応について「時代錯誤」「最悪の組織」などといった批判的な書き込みが相次いでいる。

ただでさえ、今場所は政府による緊急事態宣言発令下で中止を求める意見が噴出。〝強行開催〟で世間からの風当たりは強まっている。今回の一件は、結果的に反発の火に油を注ぐこととなった。それと同時に、相撲界と世の中との間にある認識の「ズレ」も浮き彫りとなった格好だ。

肝心の土俵に目を向ければ、新型コロナの影響で横綱白鵬(35=宮城野)をはじめ戦後最多の16人の関取衆が大量休場。初の綱取りに挑む大関貴景勝(24=常盤山)は初日から2連敗を喫し、新横綱誕生の期待感は大きくしぼみつつある。

土俵の内外がともに混迷の度合いを深める中、果たして無事に15日間を終えることができるのか。新年最初の場所は序盤戦から不安材料が尽きない状況だ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社