『キング・オブ・シーヴズ』高齢者窃盗団の実話を映画化

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 『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュの新作だ。『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を得ている監督だけに、今回もまた実話を題材にしている。2015年にロンドンの宝飾店街の堅牢な貸金庫を破った窃盗団の平均年齢が、60歳以上だったという事件の映画化だ。

 だから前半は、金庫破り大作戦! といってもメンバーは老人ばかりなので、「手に汗握る」というわけにはいかないものの、無駄な説明を排した簡潔明瞭な語り口と、高齢者ゆえのとぼけたユーモアが生む緩急が絶妙で、痛快な犯罪劇に仕上がっている。

 ところが一転、後半は別モノの様相を呈する。仲間割れが起き、泥沼化していく関係性と、彼らの知らぬところで(防犯カメラなどによる近代捜査によって)警察に追い詰められていく過程が描かれるから。ラストに一ひねりこそあるものの、人間の負の側面があぶり出される笑えない展開なのだ。

 それでも、マイケル・ケインはじめ英国名優陣の若かりし日の映像が、ノスタルジックなニュース映像と共に差し挟まれ、卓越したコラージュの魅力に満ちている。それらが、どこから持ってきたの?と驚くほど本作の物語や世界観に溶け込んでいるのだ。クラシカルなのに新鮮。前作『喜望峰の風に乗せて』は微妙な出来だったが、今回はジェームズ・マーシュの本領発揮作と言っていい。★★★★☆(外山真也)

監督:ジェームズ・マーシュ

出演:マイケル・ケイン、ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、チャーリー・コックス、ポール・ホワイトハウス、レイ・ウィンストン、マイケル・ガンボン

1月15日(金)から全国順次公開

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