業務のしわ寄せがネック…誰もが働きやすくなる“職場改革”を

今の働き方に満足していますか?と聞かれた時、満足しています!と力強く答えられる人はどれくらいいるでしょうか。

リクルートワークス研究所が2018年に行った調査によると、「仕事に満足している」と回答した人の割合は39.9%。この結果を裏返すと、およそ6割の人は何らかの不満を抱えているということになります。

仕事への不満には、様々な要素があります。仕事内容や給与、役職などもその一つです。さらには勤務時間、勤務地、在宅勤務の可否、職場での人間関係といったことも影響します。

一つひとつ細かく要素を洗い出していくと、どこかに不満は生じるものです。今仕事があるだけでも有難いこと。あれもこれも求めるのはワガママ。そう考えたり、諭されたりして諦めてきた人は少なくないはずですが、本当にそうなのでしょうか?


時短勤務を望むのはワガママか?

「すみません。お先に失礼します。」と、同僚がまだ働いている中、時短勤務の自分だけが仕事を切り上げて帰宅するのは気が引けるものです。責任感が強い人ほど、同僚たちに申し訳ない思いを抱いたり、業務のしわ寄せが行ってしまうことを心配したりしがちです。

一方で、自分は時短勤務の契約だし、その分給与も低いのだから当然の権利だ、と知らん顔で帰ってしまう人もいます。帰宅した後もやることが山ほどあるのに、誰かに業務のしわ寄せが行くからとイチイチ気にしていたら精神が持たない!といった割り切りもあるのでしょう。

仮に前者をAさん後者をBさんとした場合、同僚の心情に配慮するAさんに対し、Bさんの振る舞いは感情的に理解が得にくく、ワガママと受け取られてしまうこともあるかもしれません。通常勤務で忙しくしている同僚の立場からすれば、少しは残業して手伝ってほしい…、と愚痴の一つも言いたくなるのが人情です。

しかし、同僚に業務のしわ寄せが行ってしまうことについてはAさんもBさんも変わりありません。業務量が日増しに増え、フルタイム勤務の同僚たちが連日遅くまで残業せざるを得ないような状態になってくると、Aさんでさえワガママと言われてしまうかもしれません。

そんな周囲の目に苛まれたり、軋轢が表面化してしまえば、AさんもBさんも、無理して残業するか、退職するかという選択を迫られることになりそうです。あるいは逆に、負担に耐え切れなくなった通常勤務の同僚が退職してしまうこともありえます。それは実際の職場で起こりがちな不幸な葛藤です。

業務のしわ寄せがなかったとしたら…?

では仮に、時短勤務の同僚が先に帰宅したとしても、その分のしわ寄せが誰にも行かない職場だったらどうでしょうか。

業務は個人に紐づいていて、個々の裁量でコントロールすることができる。あるいは、チームで同じ業務を分担しているが、時短勤務の同僚が帰った後は、残った人だけで対処できる業務量に調整できる。または、時短勤務の同僚が帰った後のカバー要員が予め用意されている、といった具合です。

そんな業務体制の職場だったとしたら、早く帰る人がいても誰にもしわ寄せが行きません。しわ寄せが行かず、誰にも迷惑がかからないとしたら、時短勤務する人と通常勤務をする人の間で軋轢が生まれることはなくなります。

それは理想論だ、そんなことはできるはずがない、と思う人もいるでしょう。しかし、実際に時短勤務や短日数勤務、在宅勤務といった多様な働き方の人たちが集っても上手く機能している職場は存在します。それらの職場は得てして、多様な働き方をする人が互いに不利益を生じさせないように業務設計されています。

問題は時短勤務をする人の態度ではなく、業務設計に不備があるまま時短勤務を認めている職場にあります。業務上のしわ寄せを他の同僚たちに押し付けた状態を放置していることこそが最大の問題なのです。先ほど例に出したAさんは、決められた時間通りに帰宅するのにも関わらず、同僚たちに「すみません」と謝罪しました。それは本来、おかしなことです。

希望が言えない社会など豊かではない

人は誰しも、何らかの個別の事情を持っています。その個別事情の重要度は、人によって全く異なります。育児や親の介護であれば、重要であることがわかりやすいかもしれません。しかし、中には家族同等にペットを大切に思っている人もいます。音楽活動に打ち込んでいる人、アイドルを追いかけることに人生の喜びを見出している人もいます。人それぞれ、大切なものは異なります。

それらの事情で、時短勤務にしたり、休みを取ったり、リモートワークを希望することをワガママだと見なしてしまう社会は、本当に豊かな社会と言えるのでしょうか。

もちろん、周囲との軋轢をものともせず、自分の都合しか考えないようなスタンスはいただけませんし改めるべきだと思います。しかし、自らの気持ちに素直に向き合い、希望として伝え、仕事と上手く両立できるように工夫しようと試みることまで、否定されるべきではないはずです。

これまでは、職場の都合に合わせて個人が何かを犠牲にし、我慢するという考え方が主流でした。希望しない転勤命令に応じて家族が離れ離れに暮らすようなケースは、その典型例の一つです。

しかし、価値観は徐々に移り変わり、多様性が尊ばれる時代になりました。これからは、個々の希望に素直に向き合い、職場や社会で果たすべき役割とどう両立させて行くかに知恵を絞り、実現させていく時代です。

仕事シーンにおいては、人々がより豊かさを感じながら働き、生活できるようになるために、変わらなければならないのは職場の方です。そして、マネジメントのあり方も変わらなければなりません。

一方、働く側としては、自らが犠牲になるのではなく、自らの希望も叶えつつ、職場でしっかりと役割を果たして成果を出すために何ができるかを考え、実行しなければなりません。それができる働き方こそが、その人にとってベストなワークスタイルであるはずです。

2018年から足掛け4年に渡って書かせていただいた当連載も、今回で一区切りとなります。これまで書かせていただいた記事のどれか一つでも、ワークスタイルを見つけるためのヒントとなっていればと願う次第です。ご自身にとってのベストなワークスタイルを見つけたいと希望し、模索されている全ての方をこれからも心から応援しております。

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