井岡一翔、PFP10位にランクイン 大晦日の一戦で評価上げる

WBOスーパーフライ級世界戦の5回、田中恒成(右)を攻める井岡一翔=大田区総合体育館

 世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン、井岡一翔(Ambition)が、最新の米専門誌「リング」で全階級を格付けするパウンド・フォー・パウンド(PFP)の10位にランクインした。

 歴史と伝統を誇る同誌。バンタム級の井上尚弥(大橋)が2位に入っており、日本人が二人もトップ10に顔を出すのは快挙といえるだろう。

 「世界のイオカ」の存在を大きくアピールした。

 それほど昨年大晦日の一戦は、圧巻のTKO防衛だった。

 31歳の井岡が2度目の防衛戦に迎えたのは、無敗で4階級制覇を狙う25歳の田中恒成(畑中)。誰もが熱望した日本人対決の予想はほぼ互角と見られていた。

 キャリアでは井岡が上回るが、田中の若さとスピードも高く評価されていた。

 しかし、井岡は自信満々で試合に臨んだ。「格の違いを見せる。すべてはリング上で証明する。最後に勝つのは自分」

 その言葉通り、試合は序盤から井岡ペースで進んだ。田中の攻撃を巧みにかわし、的を絞っていく。

 5回、抜群のタイミングの左フックで痛烈なダウンを奪った。ここからは井岡の独壇場。6回にも同じパンチでダウンを奪い、8回、再び左フックを決めると、レフェリーが迷わずストップした。

 本人は「有言実行できた。拳の重みが違う」と胸を張った。それほど威力十分の左フックだった。井岡の底力をあらためて見る思いがした。

 それでもリング誌のPFPトップ10入りには驚かされた。

 世界のリングで躍動するスーパースターがひしめく中、ランクされるのは至難の業。リングサイドからも称賛の言葉が相次いだ。

 山中慎介氏(元世界バンタム級王者)は「いろんなパンチが打てるし、対応力がすごい」と多彩なパンチを評価し、内藤大助氏(元世界フライ級王者)も「とにかく井岡は強かった。それに尽きる。最高の試合だった」と語った。

 これまで実績の割にはやや地味なイメージもあったが、それを一気に払拭するような会心の内容といえるだろう。

 大きな山を越えた井岡は、早くも次を見据えている。「田中戦では冷静に闘うことができ、自信につながった。今後も結果で証明していく」と意欲的だ。

 今年の目標を色紙に「統一王者」と記した。最大の目標は世界ボクシング協会(WBA)同級スーパー王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)か。楽しみな2021年である。(津江章二)

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