豆蔵・日本電産シンポ・三井化学、「軽さ」「柔らかさ」を実現する協働ロボットの設計手法を確立

労働力不足などの背景から、産業用ロボットの市場は拡大を続けている。その中でも、ヒト協働ロボットの市場の拡大が著しく、2023年には産業用ロボット市場のうち15%(20万台/年)に達すると予想されている。協働ロボットはISO/TS 15066:2016で定義された人と協働で作業ができるロボットで、特定の条件下では従来の産業用ロボットで必須であった安全防護柵が不要になるため、これまで産業用ロボットが導入できなかった中小企業が新たなユーザー企業として期待されている。株式会社豆蔵と日本電産シンポ株式会社、三井化学株式会社は、新たなヒト協働ロボットの設計手法の共同研究を2020年4月から実施している。同共同研究では、協働ロボットの「軽さ」と「柔らかさ」を設計コンセプトとし、ロボットアームのフレームの樹脂化、減速機の逆駆動性の実現に取り組んでいる。スキームとして、豆蔵がロボットの設計・制御技術、三井化学が樹脂部品の設計・成形技術、日本電産シンポが新型の高バックドライバビリティ減速機を提供し、10kg可搬の7軸協働ロボットの試作機「Beanus2」(トップ画)を開発した。同共同研究により、三井化学の樹脂部品の設計・成形技術によりロボットアームのフレームの大部分を樹脂化し、重量が同形状の金属製アームと比べて最大1/2まで軽量化することができた。金属との接合が必要な個所には金属樹脂一体成形技術を使用し、樹脂でありながらも剛性を備えている。また、軽量化によって衝突時の衝撃力の低減、可搬重量の増加、部品コストの削減、省電力化などが期待できるという。また、一般的な波動減速機を採用している協働ロボットでは、アームに加わる外力をモーター電流値で高精度に検出することは困難であるため、ロボットの各関節にトルクセンサーを搭載する設計が一般的であるが、同共同研究では日本電産シンポの高バックドライバビリティ減速機を使用することにより、モーター電流値で外力を検出できるようになった。ここに豆蔵の力制御アルゴリズムを融合することで、トルクセンサーなしでロボットアームを柔らかく制御することが可能となった。トルクセンサーを使用しないことにより、センサーの故障や断線による誤動作抑止、関節部の省スペース・軽量化に貢献する。今後3社は、高バックドライバビリティ減速機を含む駆動部品の樹脂化にも取り組み、更なる軽量化と安全性向上の共同研究を継続するとのことだ。

© 株式会社アールジーン