新成人に無料しらす丼 藤沢の料理店「心ばかりの贈り物」

新成人に振る舞う予定のワンプレートを手にする鈴木さん(左)と調理担当の鈴木千恵さん=藤沢市

 藤沢産の食材で新成人の門出を祝おう─。藤沢市内でイタリア料理店を営む鈴木一哉さん(48)が、成人式の会場開催延期を受け、手作りの催しの実現に奔走している。緊急事態宣言が再発令されるなど、飲食店は依然苦境にある。しかし、「街に元気を発信する」原点に立ち返り、湘南シラスや地元食材を使ったワンプレートを無料で振る舞う企画を進めている。

 市は新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、新成人が集える機会を別途設ける方針。具体的な日時は未定だが、藤沢駅南口の南藤沢イータウン商店会会長も務める鈴木さんは仲間に協力を呼び掛け、その機会を捉え、「心ばかりのプレゼント」を届ける構想を練り上げている。

 メインとなるのは、地産地消を通じて新成人に地域への愛着を醸成してもらう企画。湘南シラスや地元産の野菜や米を使った「藤沢しらす丼セット」の限定100食を無料提供する。

 実際に販売すると1500円相当という。混雑を避けるため、一定の期間を設け、かねて地域活性化イベントで連携している湘南初のバケーションホテル「FUJISAWA HOTEL EN(フジサワ ホテル エン)」(同市南藤沢)のラウンジで食事券を配布する計画だ。

 このほか、抽選で10組20人に同ホテルでの朝食付き宿泊券や地域で人気のスイーツの贈呈、着物の無料レンタルと写真撮影などの案も具体化しつつある。

 新型コロナの感染拡大が続く中、鈴木さんは「飲食店は元来、地域の人々や街に元気を発信する存在。苦境の下、悲鳴を上げてばかりいるのはいかがなものか」と考えを巡らせていた。

 成人式が延期となり、肩を落とす20歳のアルバイト店員の姿を見て、思いを強くした。ホテル事業者など商店会メンバーに相談するとともに、SNS(会員制交流サイト)を通じて賛同者を募った。

 コロナ禍にあって、店舗だけでなくテークアウトやデリバリーなど販路拡大に努めてきた鈴木さん。現状について「再び緊急事態宣言が出される状況になるとは思いもしなかった」と述べつつ、「ただ手をこまねいているわけにはいかない」と笑顔を見せた。

 鈴木さんは「宣言発令中、改めてアイデアを肉付けする」といい、地域のつながりやSNSを通じてさらに賛同者を募る考えだ。

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