大推薦!グリーン・デイのビリー・ジョーが伝える 80's カバーソング 2020年 11月27日 ビリー・ジョー・アームストロングのアルバム「ノー・ファン・マンデーズ」がリリースされた日

80'sを思いっきりカバーした、ビリー・ジョー・アームストロング

カバー曲って面白い! そのアーティストの受けた影響を垣間見る最も分かりやすいサンプルだし、過去の隠れた名曲を掘り起こしたり、新しい解釈の発見にもなる。だから、カバー曲だけで構成されるアルバムなんて、私はもう大好物なわけなのだ。

そこで、本日は、ビリー・ジョー・アームストロングが昨年(2020年)リリースしたカバーアルバム『ノー・ファン・マンデーズ』を紹介させていただきたい。

ビリー・ジョー・アームストロング? 誰やねん? … そんなツッコミも聞こえてきそうだが、グリーン・デイのボーカル / ギターのフロントマンがビリー・ジョー・アームストロング、その人なのです。

おいおい! ここはリマインダーだぜ! グリーン・デイがいくら人気バンドだからって、90年代以降のメロコア / ポップパンクの代表的なバンドを取り上げるのはさすがに無理があるのでは?

いやいや、そんなことはございません! このアルバム、先にお話しした通りカバーアルバムで、本作でビリーが取り上げている楽曲が80年代のヒット曲や有名曲、隠れた名曲がたんまり入っているリマインダー世代にとっては興味深いアルバムとなっているのだ。

そんなわけで、本作の中からリマインダー読者のストライクゾーン的な楽曲をピックアップして、収録曲を紹介してみたい。

■ アイ・シンク・ウィアー・アローン・ナウ

ティファニーにより1987年にリバイバルされ、全米1位を獲得した大ヒット曲。元々は、60年代に活躍したバンド、トミー・ジェームス&ザ・ションデルズによる全米4位のヒット曲。

■ マニック・マンデー

説明不要のバングルスの大ヒット曲。プリンスが曲提供したことは有名なエピソード。ビリー・ヴァージョンのPVにはバングルスのスザンナ・ホフスも参加しており、こちらも必見!

■ ユー・キャント・プット・ユア・アームズ・ラウンド・ア・メモリー

ニューヨーク・ドールズのギタリストだったジョニー・サンダースの代表曲のひとつ。1978年のソロ・アルバム『ソー・アローン』に収録のバラード。

■ キッズ・イン・アメリカ

キム・ワイルドのデビュー・シングル。全英2位、全米25位のヒット曲。このへんの選曲センスもいい感じ。

■ ギミ・サム・トゥルース

ジョン・レノンの『イマジン』収録曲だが、ビリーはジェネレーションXのカバーにより知ったそうだ。

■ ポリス・オン・マイ・バッククラッシュ

でお馴染みの曲だが、オリジナルはイギリスのバンド、イコールズの1967年の曲。

■ ア・ニュー・イングランド

イギリスのシンガーソングライター、ビリー・ブラッグのデビューアルバムの収録曲。1985年にイギリスの女性シンガー、カースティ・マッコールによるカバーが全英7位のヒットとなった。

他にもパワーポップの隠れた名バンド、スタージェッツや新型コロナウイルス感染症で亡くなったファウンテンズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャーが映画『すべてをあなたに』へ提供し、劇中バンド、ワンダーズによりヒットした「ザット・シング・ユー・ドゥー!」も取り上げられている。

コロナ禍で来日延期、毎週月曜日に新録カバーソングをYoutubeで発表

さて、ここで本作が制作された背景についても触れておこう。

グリーン・デイは2020年2月に新作『ファザー・オブ・オール…』をリリースし、大規模なワールドツアーが予定されていた。日本でも同年3月に来日公演がアナウンスされていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によりライブ活動ができなくなり、ツアーは延期せざるを得ない状況になっている。

そんな折、ビリーは、毎週月曜日に新録カバーソングをYoutubeで発表するという企画に取り組んだ。こうしてストックされたカバー曲をコンパイルしたものが本作『ノー・ファン・マンデーズ』だ。

ビリーもカバー企画に取り組むことによって自身が今まで聴いてきた音楽を振り返りながら選曲に頭を悩ませ演奏したそうだ。そして、出来上がった本作を自らの人生のサウンドトラックとまで語っている。

激しくオススメ! カバーアルバムを通じて触れる現在進行形のロック

それでは、カバーアルバムが私たち音楽ファンにとって、どのような意義があるのか考えてみたい。

1. 若いリスナーへの啓蒙としての意義
カバーアルバムは過去の名曲やヒット曲を現在の若いリスナーに紹介し、アーティストがどんな曲を聴いてきたのかを紹介する意義がある。アーティストが受けてきた影響に触れることで、ファンはよりアーティストへの理解が深まり、オリジナル作品をさらに楽しむことができるようになるのではないだろうか。

2. オールドリスナーに現行ロックを紹介する意義
カバー曲のオリジナルを知る世代は当然、ビリーや我々と同じ世代の大人たちだ。こうした世代には、現役ロックファンを引退してしまっている人も多くいるだろう。こうした元ロックファンに対して、カバー曲をきっかけにもう一度、現在進行形のロックに興味を持ってもらうチャンスとしての意義があるのではないだろうか。

ビリー・ジョー・アームストロングがこうした意義にどこまで意識的に取り組んだのかは分からないが、主な目的はコロナ禍でロックダウン状態にあったアメリカのキッズに向けたプレゼントという意識が強かったのだろう。しかし、私たち大人世代にはカバー曲を通じて現在進行形のロックに触れる最高の機会を与えてくれているのだ!

そして、本作のサウンドは、ギターの鳴りがざっくりとした、とてもシンプルでオーソドックスな音づくりになっていて、最近ロックはご無沙汰… という中高年層にも安心してオススメできる王道感満載のロック・サウンドなのだ!

是非とも、リマインダーの読者の皆さんには、このアルバムを契機に現在進行形のロックを聴いていただきたい! そう思わせるストレートでポップな楽しいアルバムなのだ。そして、何よりも本作は、リマインダーが掲げる “懐かしむより超えていけ!” という心意気を思いっきり体現している作品であり、現在のロックアルバムとして激しくオススメの大推薦盤なのだ!

斬新な作品に期待大、コロナ禍で変わる音楽制作のルーティーン

新型コロナウイルスの蔓延はポップミュージック・シーンに計り知れない影響を与えた。特にロックバンドの活動における新作発表~ワールドツアーという当たり前のルーティーンを覆したことにより、現在のシーンは停滞を余儀なくされている。しかし、本作におけるビリー・ジョー・アームストロングのように今までのルーティーンの中からは制作されなかったような作品が作られ、私たち音楽ファンはこうしたアルバムを楽しむことが可能となっている。

今後、コロナ禍における音楽制作は、ライブで演奏されるという前提を取り払った作品づくりもスタンダードになるのではないだろうか? こうした傾向が強まるとスタジオワークにこだわった作品や工夫を凝らした宅録作品から斬新なものが生まれてくるのではないかと個人的には感じている。

ポップミュージックが時代を映す音楽であるのならば、こうした状況から新しい表現を獲得した作品が生まれ、withコロナの2021年を生きる私たちのサウンドトラックとして力強く鳴り響いてくれるのではないだろうか。そのサウンドトラックを聴きながら前向きに音楽好き人生を楽しみたい。ビリー・ジョー・アームストロングの『ノー・ファン・マンデーズ』はそんなことを考えさせてくれる作品だ。

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追記
私、岡田浩史は、クラブイベント「fun friday!!」(吉祥寺 伊千兵衛ダイニング)でDJとしても活動しています。インフォメーションは私のプロフィールページで紹介しますので、併せてご覧いただき、ぜひご参加ください。

カタリベ: 岡田浩史

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