名優・綿引勝彦さん 生前最後の〝大噴火〟「俺の芝居の邪魔すんじゃねぇ!」

芝居に厳しかった綿引さん

俳優の綿引勝彦さんが昨年12月30日にすい臓がんのため亡くなっていたことが13日、分かった。享年75。所属事務所がマスコミ各社に書面で報告した。

葬儀は近親者のみで執り行い、喪主は妻で女優の樫山文枝(79)が務めた。

綿引さんは2018年8月にすい臓内の嚢(のう)胞を取り除く手術を受けた際、進行性のがん細胞が発見された。19年12月、肺への転移が見つかり、昨年2月から本格的な化学療法を開始したが、寛解には至らず。昨年11月に治療を打ち切り、自宅で療養を続けてきた。

昨年12月25日未明に容体が急変し、再入院。所属事務所によると「最期は眠りについたまま穏やかに息を引き取りました」という。

綿引さんは1965年に劇団民芸に入団。85年に退団後、映画「極道の妻たち」やドラマ「鬼平犯科帳」「ナニワ金融道」など、数多くの作品に出演。大家族を描いたTBS系ドラマ「天までとどけ」シリーズでは、昨春に新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった岡江久美子さん(享年63)と夫婦役で共演した。

綿引さんは芝居に対して、とにかく厳しい人だった。俳優の坂上忍(53)は同日、ブログで「実はわたし、若かりし頃に綿引さんに叱られたことがありまして」と切り出し「綿引さんはわたしの芝居が気に入らなかったようで。いろいろと、小言を頂戴したわけです」と明かした。

昨年公開の映画「瞽女GOZE」の現場でも綿引さんは〝大噴火〟したという。現場関係者の証言。

「現場入りした段階からピリピリしていて、撮影が始まるや共演者に『俺の芝居の邪魔すんじゃねぇ!』と声を荒らげていました。スタッフにも『邪魔だ、どけオラ!』と。綿引さんのことを知らない若手女優はビビりまくっていましたね。今にして思えば、役者としての厳しさを教えていたのかもしれません。結局、何にイラ立っていたかはわからずじまいでしたが…」

妻によれば、病気のことは誰にも言わないよう口止めしていたという。合掌。

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