チェックすべきはこの2点!プロが教える効果絶大の決算分析術

まもなく3月決算企業の決算発表が本格的に始まります。企業の決算発表というのは株価に対する影響が決定的に大きいイベントで、既に株式投資をされている方にもこれから始める方も、ぜひチェックしていただきたいと思います。

そうは言っても決算発表というと会計の知識がないと理解できない難しいものだと思う人が多いかもしれません。もちろん会計知識はあるに越したことはないのですが、なくてもいくつかのポイントをチェックするだけで大まかに理解することができます。

それでは早速、チェックするべきポイントをご紹介します。


ポイント1:直近3ヶ月の売上高と営業利益を前年同期と比較する

まず、企業決算を見る上で最も大切なのが、「売上高と営業利益の直近3ヶ月業績の前年同期との比較」です。営業利益とは「本業の利益」とも呼ばれており、企業の決算を分析する上で最も大切な利益だと考えてください。

ここで重要なのが「直近3ヶ月」というところです。実際の例で説明します。

玩具のトップメーカーであるバンダイナムコホールディングス(7832)が昨年11月6日に発表した第2四半期の決算数値を見てみましょう。

「2021年3月期第2四半期」の売上高は3,371億円で前年同期比3.5%減、営業利益は459億円で4.2%減と業績が悪化しています。これなら決算を受けて株価が下がりそうなものですが、実は決算発表の翌営業日の11月9日に同社の株価は10%近い大幅高となりました。

なぜ業績が悪くなっているはずなのに大幅高となったのでしょうか?それは3ヶ月ごとに業績を見ていくとすぐに答えがわかります。

バンダイナムコホールディングスは「第1四半期(4月-6月)」や「累計値」は前年同期比で「減収減益」ですが、実は「第2四半期(7月-9月)の3ヶ月で見ると「増収増益」です。決算短信の上部に「2020年4月1日~2020年9月30日」と書いてあるように、決算短信では発表時期までの「累計値」が記載されます。

バンダイナムコホールディングスの場合新型コロナウイルスの影響で4~6月は業績が苦しかったものの、7~9月に入って業績がV字回復しました。ただ、4~9月の6ヶ月間にするとまだ減収減益のままだったということになります。

このように日本の決算短信は累計値を発表するという決まりがあります。そのため、一見すると悪い決算なのに実は良い決算、またはその逆ということがよく起こります。

筆者は個人的に累計値と3ヶ月の数値を両方発表するべきだと思っています。皆さんもぜひ「直近3ヶ月をチェックする」という癖をつけてみてください。

ポイント2:業績予想に対する進捗率をチェックする

もう1つの大切なポイントが「業績進捗率」です。上場企業は原則として1年間の「業績予想」を発表します。

「原則として」と書いているのは、事業の内容や経済の状況から合理的な予想をすることが困難な場合には例外が認められる場合があるからですが、殆どの企業は発表するとお考えてよいでしょう。

先程も例に出したバンダイナムコホールディングスも、2020年度(2021年3月期)の業績予想を発表しています。

企業について最も詳しいのは企業自身ですから、この予想が強気か弱気かによって株価は大きく影響を受けます。バンダイナムコホールディングスは「2020年度に売上高は6,500億円、営業利益は500億円稼ぐつもりです」と宣言していることになります。

では、第2四半期時点(半分経過した時点)での進捗を見てみましょう。

バンダイナムコホールディングスは第2四半期時点で売上高は進捗51.9%、営業利益に至っては91.9%も進捗しています。特にすごいのが営業利益で、年の半分が経過した時点で年間計画の9割超を達成しているということになります。

これなら実際には年間計画を大幅に上回る業績を達成できるのでは?と考えるのが自然ですよね。

おそらく「バンダイナムコホールディングスの7~9月の業績は好調だったし、年間の業績計画は保守的なので今後業績予想の修正や上振れ着地が期待できそうだ。これなら今後、株価の値上がりが期待できそうだから今のうちに株を買っておこう。」と考えた投資家の買いにより株価は大きく上昇したと考えられます。

「そんなの決算前に考えておかないと遅いじゃないか」とお考えになった方もいるかもしれませんが、実はチャートに示したようにバンダイナムコホールディングスの株価は決算発表後もグングン上がっていきました。結果論にはなってしまいますが、決算発表後に投資を検討しても遅くはなかったのです。

これまで2つのポイントを見てきました。もちろん決算分析を本格的にするとなるとまだまだ見るべき点は多いですが、ご紹介した2つのポイントだけでもチェックするのとしないのでは投資成果に雲泥の差が出ると思います。

肩の力を抜いてぜひ分析にトライしてみてください。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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