医療系国家試験、コロナ感染「追試なし」 学生不安「内定取り消しの恐れも」

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熊本保健科学大の校舎内に張り出された、新型コロナ感染防止対策の徹底を呼び掛けるポスター。同大では約400人の学生が医療系の国家試験を控えている=熊本市北区

 高校や大学などの受験シーズンを迎える中、今月末から、医師や看護師など医療関係22職種の国家試験も順次行われる。ただ、新型コロナウイルス感染で受験できない人の追試験の予定はない。熊日の調査報道企画「SNSこちら編集局」(S編)に、「国家試験合格を前提に就職内定した人もいる。受験者側に立った対応をしてほしい」との切実な声が寄せられた。

 声を寄せたのは、医療系の国家試験を控える娘を持つ熊本県内の50代女性。コロナ禍、娘は試験勉強や実習に励みながら就活し、希望する病院への就職が決まったという。「家族全員で細心の注意を払っているが、万が一感染したら…。国家資格を取れなければ内定取り消しの恐れもある。コロナだから仕方ない、と割り切れない」

 医療系の国家試験は熊本を含む全国各地で行われる。厚生労働省は昨年12月、大学などに療養中の感染者の受験を認めないことをあらためて通知。一方、それまで受験を認めなかった濃厚接触者には、陰性の確認、無症状などを条件に別室受験を認めるよう方針転換した。

 濃厚接触者への方針転換は、政府の新型コロナ感染症対策分科会で了承された、文部科学省の大学入学共通テスト対応を踏まえた判断。ただ、今月16日に始まる共通テストでは追試があるが、厚労省は追試をしない方針のままだ。

 看護系大学の関連団体や一部自治体は、厚労省に対し、文書で追試を要望しているが、同省医事課は「専門的な問題の作成には約8カ月かかり、同様の質を維持した追試を用意するのは難しい」と説明。2014年の大雪の際、看護師試験で追試をした例はあるものの「基本的に追試は準備できていない」と理解を求める。昨年8月、例年より3カ月遅れで実施された司法試験でも追試はなかった。

 受験者を送り出す学校側からも不安の声が上がる。熊本保健科学大(熊本市北区)は、看護師や理学療法士を目指す学生約400人が受験予定。学務課の担当者は「追試実施が難しい状況は分かるが、国家試験は年1回。感染への不安を抱える学生は納得できないだろう」と声を落とす。

 全国医学部長病院長会議の副会長を務める富澤一仁・熊本大医学部長は、「仮に追試を行う場合、本試験との公平さをどう保つかは難しい問題」と、厚労省の対応に一定の理解を示す。その上で、医療現場が逼迫[ひっぱく]する状況を踏まえて「コロナ禍の長期化を見据えると、現場を支える看護師や臨床検査技師などの追試は検討が必要だろう」と提言する。

 「国家資格がなければ就職できず、もう1年勉強が必要。一発勝負ならば、体調が悪くても無理して受験する人が出てくるのでは」と話すのは臨床検査技師の試験を受験する熊本市の20代男子大学生。「これだけコロナが感染拡大すれば、受験できない人も出てくる。しっかりした支援策を考えてほしい」と求めた。(原大祐)