【京成杯】ベール脱ぐ!グラティアス“類いまれなる心肺能力”

【京成杯・POGマル秘週報】ジョギングを習慣にしている筆者にとって、呼吸についての話には自然と耳を傾けることが多い。あくまで人間においての話だが、GⅢ京成杯(日曜=17日、中山芝内2000メートル)のネタ探しをしていた先週のある日、馬に関してのそれに触れる機会があった。

グラティアス(牡・加藤征)は半姉にレシステンシアがいる良血。一昨年のセレクトセール(1歳)で2億4840万円(税込み)の高値をつけた馬だが、当時はまだレシステンシアがデビューする前で、1年タイミングがずれていたら価格はさらに高額になっていたことは容易に察しがつく。その証拠に昨年の同セール(当歳)に上場された2歳下の半弟は、活躍する可能性としては全く未知数であるキタサンブラックの2年目の産駒ながら、2億900万円と同産駒のセール最高価格となった。

馬の価格=能力でないことはこの世界では常識だ。冷静な能力分析はひとまず唯一の実戦であるデビュー戦(東京芝2000メートル)に頼るしかないが、そこで冒頭の“呼吸話”。グラティアスが所属する加藤征厩舎では、レースから引き揚げてきた際の検量室前での息遣い(呼吸音)を動画撮影していて、実際にその映像に触れるとこれが実に面白い。“フーッ、フーッ”“ハアー、ハアー”といったいかにも“走ってきました!”といった疲労感に満ちたものも多くある中で、グラティアスのそれは“ハッ、ハッ”と短く、浅い。音質に疲れが感じられないのは明らかで、加藤征調教師は「(レース後で)多少興奮している音は混じっているけど、息は全然上がっていない。調教でもまだ一度も上がったことがないんだ」と心肺機能の高さ、いかに肉体的負担がなく走ってきたかを説明してくれた。

「デビュー戦は2、3番手からの競馬を想定していたけど、スタートの反応が良くて逃げる形に。直線で(2着の)モズマンジロウに並ばれてようやく気持ちに火がついたみたいで、本気で走ったのは最後の少しだけ。クリストフ(ルメール)も“ゴールを過ぎてフルパワー”と言っていたくらいだからね。中間は体幹が強くなってすごくパワーアップ。前走時とは全然違う。今度は2戦目だし、重賞だから甘やかすわけにもいかない。(1週前は)ビシッと追い切りました」

キャリア1戦での重賞制覇は並大抵ではない。それでもレース内容や呼吸音など素材の秀逸さを示す客観的材料は十分に備えるうえ、肉体的上積み、そして鞍上にルメールを確保できたことはクラシック戦線を控えたこの時期だからこそ重要な意味を持つ。飛躍の春へ――。グラティアスが一気に羽ばたく瞬間だ。

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