【2021年国内ストーブリーグ前編】トヨタのチャンピオンコンビ復活か。あのエンジニアにも動き

 2021年に向けたシート争いは、いよいよ大詰めを迎えつつある。1月15日(金)発売号のauto sport No.1545では、スーパーGT GT500とスーパーフォーミュラのストーブリーグ情報を掲載している。ここでは本誌発売日の同日に体制が明らかになるホンダのほか、トヨタ、ニッサン陣営の最新ストーブリーグを前編/後編に分けてお届けしよう。
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■ホンダ陣営は昨年のラインアップをほぼ継続

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、昨年のレーススケジュールは当初の予定から大幅に遅れた。そのあおりを受け、今季に向けたGT500のシート争いは、過去に例を見ないほど不透明な状況が続いていた。しかし、年が明けて各陣営のドライバーラインアップはおおむね固まってきた模様だ。

 ホンダ陣営は1月15日(金)に『2021年4輪モータースポーツ参戦体制発表会』を行うことをアナウンスしている。本稿執筆時点の情報では、おおむね昨年のラインアップが継続され、唯一、変化があるのは16号車だけとなりそうだ。

 武藤英紀に変わって抜擢されるのは、昨年のスーパーフォーミュラ(SF)で初優勝を遂げた大湯都史樹が濃厚。笹原右京は継続となる可能性が高く、もし、このコンビが実現すれば24歳の笹原、22歳の大湯というフレッシュな顔ぶれとなる。

 ふたりは奇しくも2016年SRS-F(鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ)の同期。ちなみに、同年のSRS-Fで最終選考会に残ったのは笹原と大湯のほか名取鉄平、そしてスクーデリア・アルファタウリ・ホンダからF1デビューが決まっている角田裕毅の4名だった。この4人のなかから大湯は首席、笹原は次席という成績をおさめた。そんなふたりが今季のGT500でコンビを組むみ、いったいどのようなレースを見せてくれるのか。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京)
第6戦鈴鹿でSF初優勝を飾った大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)

■トヨタ陣営最大の焦点は2019年王者の山下健太

 ニック・キャシディの離脱にともない、ドライバーラインアップの再考を余儀なくされたトヨタ陣営。一時はキャシディに変わって新たな外国人ドライバーを招聘するとの噂もあったが、いまだ国内外で猛威をふるう新型コロナの状況を鑑みて、2021年シーズンは日本人ドライバーを中心に陣営内の体制を固めざるをえなくなった。

 同時に昨年のWEC/ル・マン24時間で世界にその実力を示した山下健太も、今季は海外への渡航リスクを避け、活動の軸足を国内に置くと思われる。トヨタ陣営の今季最大の焦点は、その山下がどのチームで走るかであろう。

 昨年のラスト2戦、キャシディの代役として披露した山下のパフォーマンスは秀逸で、当然、平川亮/山下というコンビも考えられる。しかし、トヨタ陣営内でいまもっとも勢いに乗る若手ふたりを、果たして1台に集約させて良いものか? 陣営全体の底上げを狙うことを目的に、トヨタは山下を“あえてトムス以外のチーム”で走らせる可能性が高い。

■チームの要ともいえるエンジニアにも動きが

 そこで有力な予想として挙げられるのは2019年のチャンピオンコンビ、大嶋和也/山下組の復活だ。当時、タイトル獲得に大きく貢献した阿部和也エンジニアも14号車の続投が濃厚と見られ、これが実現すればチャンピオン獲得経験を備える有力な1台となる。もっとも、2019年と異なるのは陣頭指揮を執っていた脇阪寿一監督が同チームには不在ということであり、その意味での不安は拭い切れないが……。

 仮に山下が14号車で大嶋と組むことになった場合、トムスの2台、36号車と37号車のラインアップはどうなるのか? 昨年は37号車がシリーズランキング2位、36号車が同4位で、“トヨタ内ランキング1-2”を独占した。そうした実績を踏まえれば、それぞれのAドライバー(平川、関口雄飛)は不動と考えられる。悩ましいのはその相方だ。

 有力な候補に挙げられるのは成長著しいサッシャ・フェネストラズと坪井翔だろう。昨年の坪井はSF第2戦岡山と最終戦富士で年間2勝を挙げ、その実力に疑いがないことを証明した。坪井とは正反対に、SFでのフェネストラズは自身に非のない不運なアクシデントに見舞われ続け、多くのレースを失った。

 しかし、ことGT500に限ってみれば、年間を通じてルーキーとは思えぬ速さとクレバーなレース運びを見せ、“キャシディの後継者”と言っても過言ではないパフォーマンスを見せた。とくにフェネストラズのレースの組み立て方はキャシディと酷似していることから、37号車が平川/フェネストラズ組、36号車は関口/坪井組と予想する。

 19号車の国本雄資/宮田莉朋組、38号車の立川祐路/石浦宏明組、39号車のヘイキ・コバライネン/中山雄一組の3台は不動と思われるが、チームの要とも言えるエンジニアには動きがありそうだ。昨年はGT300を担当していた田中耕太郎エンジニアが、今季はGT500に復帰するという噂があり、しかも、それが38号車だとも言われている。

 そうなると、これまで長年にわたって38号車のエンジニアを務めてきた村田卓児エンジニアは、他チームへと移籍することになる。これまで幾度もの勝利、そしてタイトルを獲得してきた村田エンジニアが新たな活動の場として選択するのはバンドウか、サードか。その決断にも注目したい。

 また、トヨタ陣営内では、水面下でチームを支えるメカニックの移籍も活発だと言われている。なかにはチーフメカニック級の移籍があるとも言われており、そうした動きが各チームのパフォーマンスにどう影響してくるのかも気がかりだ。

2019年のスーパーGT第8戦もてぎ、au TOM’S LC500とバトルを繰り広げたWAKO’S 4CR LC500

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