ハーゲンダッツは冬に売れる!高級アイスの売上が年末年始にピークを迎える納得のワケ

今冬、3年ぶりに冬らしい寒さになる地域が多いという予報が出ています。厳しい冷え込みになることが少なかった昨冬と比べ、今年は鍋物料理などの熱々メニューを食べる機会が増えそうです。

しかし、実はこの寒い時期にアイスの売上が伸びるというデータがあります。どういうことなのでしょうか。データを追ってみます。


アイスは夏に売れるはず?

株式会社True Dataでは、全国のスーパーマーケット、ドラッグストア約6,000万人規模の消費者購買情報を統計化した標準データベースを設計・運用しています。その中からカテゴリー「ファミリーアイス」の売上と気温の関係を見てみます。

「ファミリーアイス」とは、スーパーマーケットなどでよく見かける、5~6個のアイスが入った箱入りのもの。ご家庭の冷凍庫に常備して家族で楽しむ方も多いのではないでしょうか。

横軸に最高気温、縦軸に売上(買物指数:来店者100万人当たりの売上)を入れ、ファミリーアイスと気温の関係を示しました。全体的に点の分布が右(つまり気温が高い方向)に行けば行くほど上に向いており、気温上昇に伴って売上が伸びていることを示しています。

スポーツ飲料や麦茶なども、多少の形状の違いはありますが、おおむね同じような点の分布の形となっており、夏物商品の典型例です。

必ずしも夏に最も売れるわけではないアイスとは

しかしながら、同じ「アイスクリーム類」をさらに詳しく見てみると、ファミリーアイスと異なり、必ずしも夏に最も売れるわけではないアイスのカテゴリーがありました。それが「プレミアムアイス」です。おなじみの「ハーゲンダッツ」など、一人用サイズでも商品単価が200円前後のものが主流の高級志向アイスです。

ファミリーアイスと同様に売上と気温の関係を示しました。プロットに規則性が見られず、気温と売上の間に明確な相関関係がないことが確認できます。同じ「アイスクリーム類」の分類の中でもはっきりとした違いです。

プレミアムアイスが最も売れる時期

次に、データを2018年12月10日から2020年1月26日までの期間で週別に見てみると、プレミアムアイスの売上が最も高かった週は、真夏の最も気温が高い7~8月頃ではありませんでした。

売上のピークは、2018年は12月31日週、2019年は12月30日週と、年末年始の週なのです。年末年始に家族など多くの人が一堂に集うタイミングの食後デザートという感覚なのかもしれません。なお、ファミリーアイスも年末年始の週はその前後の週と比べて売上がわずかに伸びていましたが、プレミアムアイスほどの顕著なものではありませんでした。

「冬アイス」が支持される理由

夏場に売上のピークを迎えるファミリーアイスと、年末年始の集いのタイミングに売上が大きく伸びるプレミアムアイス、両者の違いは何でしょうか。プレミアムアイスはファミリーアイスに比べて乳脂肪分の比率が高く、その分価格がお高めです。そして、濃厚な味。これがポイントです。

夏に食べたくなるものの中には、「暑さによる体温の過上昇を防いで、体を冷やしたい」という欲求から生まれるものがあります。飲食によって即座に体を冷やすための方法は、「冷たいものを飲む・食べる」と「水分を摂取する」です。

アイスは一般に体を即座に冷やすには非常に適していますが、水分補給にはあまりつながりません。むしろ食べたときに乳成分が口の中に残り、さらに水分が欲しくなるほどです。

一方、冬に食べたくなるものの中には、「冷えた体を温めたい」、「寒さに耐え忍ぶためエネルギーを貯蔵しておきたい」という欲求からうまれるものがあります。脂肪は体内でエネルギー源として働き、余った分は体内に栄養として蓄えられます。体温維持のために冬に脂肪分の高い食品を食べたくなるというのは理にかなっています。

つまり、アイスの中でも特に乳脂肪分の比率が高いプレミアムアイスは、暑ければ暑いほど売れるというものではなく、科学的にも「寒い季節にも食べたくなるアイス」であると言えるのです。人間の身体は本当にうまくできていますね。

近年ではプレミアムアイスの製造を手掛ける各メーカーも、「冬アイス」と銘打って、寒い季節に乳脂肪分やこってり感を楽しむ新たな市場を展開しています。

今年は密を避けるため、多くの人が一堂に集まる機会があまりないかもしれません。皆さんもこたつに入りながら濃厚なプレミアムアイスを楽しんでみてはいかがですか。

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