パナソニック、周辺状況を画像で表示するヘッドアップディスプレイなどを発表【CES2021】

パナソニックオートモーティブカンパニーオブアメリカ(以下、パナソニックオートモーティブ)は、周辺状況を画像で表示し、リアルタイムで運転環境を更新するARヘッドアップディスプレイ(以下、AR HUD)などをCES2021で発表した。

パナソニックはCES2021において基調講演を実施。その中でパナソニックオートモーティブ社長のスコット・キルヒナー(Scott Kirchner)氏は、フロントガラスに周辺状況を表示するAR HUD、後方の様子を映すWi-fiカメラ、V2XコミュニケーションのCirrusを紹介した。

スコット氏は、AR HUDの紹介に先立って、ADASの使用率の低さを指摘した。ADASに関する調査によると、新車所有者の61%がADAS機能により事故を回避することができたとADASの有効性を認めている。しかし、所有者の多くが都市部で運転支援システムを解除していることが明らかになった。システムの解除理由として挙がっているのは、システムが何を示しているのか理解することが難しいというものだ。

これらの調査結果に対するスコット氏の見解は、情報を話すのではなく見せるべきだというもの。この見解の下で開発したのが、今回のAR HUDだ。

今回のAR HUDの特徴は、視覚的かつ直感的に状況が把握できる点だ。AIテクノロジーを組み合わせて、速度などの車両情報、検出したオブジェクトや歩行者、目的地までのマップやルートガイダンスといった情報をリアルタイムで更新し、AR技術を使ってフロントガラスにシームレスで表示する。

フロントガラスに情報を表示するメリットは、視覚的かつ直感的に状況が把握できる点だけではない。ADASが発する警告やアラートが何を意味しているのか理解する必要がなくなるという効果もある。これによりユーザーは、フロントガラスやガラス越しに見える道路に意識を集中することが可能だ。

パナソニックはPRIZMプロセスという独自の基準を採用している。PRIZMとは、Precise placement(正確な配置)、Reflection(反映)、Intuitive(直感的)、Zonal(帯状の)、Mission Control(ミッションコントロール)の頭文字を取ったものだ。ReflectionにはAIを用いて検出したオブジェクトやサインの表示、Zonalには道路に沿って表示するという意味合いがある。パナソニックは、今回のAR HUDの開発でもPRIZMプロセスを採用。現在、そして将来のユーザーのニーズのあらゆる側面に対応する。

またスコット氏は、AR HUDに続いて車両後方を支援する方法としてWi-fiカメラを紹介した。このカメラは防水性で、パナソニックの開発しているIVI

プラットフォームにシームレスで統合可能だ。スコット氏は、キャンピングカーやボートなどをけん引するときに強みを発揮すると説明した。車線変更やバックをするときでも、カメラを使ってけん引している荷物の状態を確認することができる。

※IVI(In Vehicle Infortainment): インフォメーション(情報)とエンターテイメント(娯楽)を組み合わせた造語。例えばコックピットシステムやカーナビディスプレイにインターネット機能や音楽・映像コンテンツ、各種アプリサービスを加えるなどして、情報と娯楽の提供を両立させるシステム。

Wi-fiカメラ

パナソニックは車道の安全についての取り組みも行っている。Cirrus by Panasonic(以下、Cirrus)は、道路上にある車、歩行者、オブジェクトなどあらゆるものをつなぐV2Xコミュニケーション。既にアメリカ・ユタ州と提携し、同州のビッグコットンウッド・キャニオンでV2Xの公道試験も実施した。従来事故から関係各局への通知・対応に10分から15分の時間を必要としていた。しかしこの公道試験では、通知・対応までを数秒に短縮することに成功している。

なおパナソニックは、CES2021の講演の様子を公開。20:37あたりからAR HUD、Wi-fiカメラ、Cirrusの順番で解説している。

(出典:パナソニック CES2021特設Webサイトより)

© 株式会社自動車新聞社