ソニーのEV「VISION-S」が公道走行開始 新型ドローンの実機も初公開【CES2021】

ソニーは1月11日から14日にかけてオンラインで開催中のCES2021に出展し、同社が開発しているEV「VISION-S」の公道走行の様子を動画で公開した。ソニー代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏は、VISION-Sの開発活動が次の段階に到達したと明かした。

ソニーは昨年のCES2020でプロトタイプEVとしてVISION-Sを初公開し、世界中の注目を集めた。ソニーが持つ高度なセンシング技術を活用し、車体の周囲360度からの情報をリアルタイムに処理することができる。

昨年開催したソニー本社でメディア向けの試乗デモには多くの報道陣が集まり、その注目度の高さが伺えた。

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今回CES2021で公開された車両は、車載CMOSイメージセンサーを従来の計33個から計40個へと増設。内訳は、カメラが13個から18個へ、レーダー/ウルトラソニックが17個から18個へ、LiDARはリア用に1個追加されて4個へ、それぞれ増加した。

車両内外に設置された40個のセンサーによって、VISION-Sは360度の監視が可能となり、自動走行、自動パーキング、自動車線変更など、自動運転レベル2+

相当の運転支援を実現している。さらに、5Gネットワークへの接続機能も搭載されており、将来的にはソフトウェアのアップデートを通じてレベル4相当の高度な自動運転システムへの対応を目指しているという。

※自動運転レベル2+:自動車線変更など高度運転支援の組み合わせで行う特定条件下での自動運転機能がレベル2に相当する。それらに条件付きでのハンズフリー運転など、さらに機能を高めたものがレベル2+。半導体メーカーのNVIDIAが提唱した概念とされている。

また、VISION-Sでは通常のサイドミラーの代わりに、カメラとディスプレイを組み合わせたデジタルミラーを装備。独自のセンシング技術や、高輝度・高解像度のモニター、HDRなどの信号処理技術により、悪天候時などでも通常のミラーよりも見やすい次世代の安全システムの構築に取り組んでいる。

キャビン内ではToFカメラ

が乗員の状態を認識・確認し、ドライバーの集中力や倦怠感を判断して必要に応じてアラートを出す。また、ドライバーモニタリングカメラと共に現在研究開発中の読唇システムによって、車内が騒がしい状況でもドライバーの発話意図を正確に捉え、コンテンツ表示やナビゲーションシステムの運用に反映させることが可能だという。

※三次元情報を計測できるカメラ

もちろんソニーの強みであるエンタメ面も充実している。ダッシュボード全面に液晶ディスプレイを配置し、スピーカーが各シートに埋め込まれた「360 Reality Audio(360RA)」によって乗員を音で包み込み、臨場感を味わえる設計となっている。後部座席にも10.1インチのディスプレイが設置され、コンテンツを個別に楽しむことが可能だ。

ダッシュボード全面に設置された液晶ディスプレイ

VISION-SのEVプラットフォームはMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)が担当しており、クーペとしてだけでなくセダン、SUV、MPVなどの他の車種にも使用可能だ。この他にもボッシュやコンチネンタル、ZFなどが開発パートナーとして同プロジェクトに参画。2020年12月には技術評価のため、パートナーらと共にオーストリアで公道走行実験を開始し、現在も安全性の最適化を進めている。

また、この公道走行の様子の動画撮影は、ソニーが2021年春に事業展開を予定しているドローン「Airpeak」を用いて行った。Airpeakはソニーが昨年11月にAIロボティクス領域における新たなドローンプロジェクトの開始を発表した新ブランド。

画像:EV「VISION-S」の公道走行中の様子を撮影する「Airpeak」

Airpeakは、イメージング&センシング技術やリアリティ、リアルタイム、リモートの「3Rテクノロジー」を活用しており、ドローンの機体に業界最小クラスのデジタル一眼カメラ「α(アルファ)」を搭載することが可能。高画質でフルフレームの空撮・動画撮影もできるため、映画製作などより高度な技術を求められる制作現場での利用を見込んでいる。CES2021ではAirpeakの実機が初公開され、公道走行中のVISION-SをAirpeakが実際に空撮している様子からも、その高い機動性が見て取れた。

ソニーの吉田CEOは、2020年11月に発売したPlayStation5、VISION-S、Airpeakなどの今回展示している製品を紹介しながら「ソニーの技術で、創造性には限界がない」と強調した。CES2021に関連するソニーの全コンテンツは、新設したデジタルイベントプラットフォーム「ソニースクエア」から視聴が可能だ。

ソニー代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏

【当記事の掲載画像は、「ソニー CES 2021 – デジタルプレスイベント」公開動画のキャプチャ画像を使用】

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