新型コロナ療養施設のホテル どこかが引き受けなければ 五島 近隣から懸念、応援も

宿泊療養施設となるホテルでは、アルコール消毒液やマスクなどの準備が進んでいた=五島市内

 新型コロナウイルス感染者の急増で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する中、長崎県は無症状・軽症者が入る「宿泊療養施設」の拡充を進めている。地域医療を支える重要な存在だが、新たに受け入れを決めたホテルなどには、近隣から懸念の声も。「不安な気持ちはよく分かるけれど、どこかが引き受けなければ」。ホテル関係者は、住民の声と使命感のはざまで揺れた心情を吐露する。
 今年に入り感染者が急増した五島市。飲食店クラスター(感染者集団)を中心に感染者は20人を超え、13日には、五島医療圏の専用病床数が最大の23床に引き上げられた。
 感染拡大が止まらぬ中、市内のあるホテルは県の要請を受け、宿泊療養施設として協力すると決めた。県が14日から借り上げるのを前に、既に3月末まで入っていた宿泊予約780泊分を全てキャンセル。県との契約終了後は全館を消毒し、寝具や部屋の備品は全て買い替えるが、来客が元通りになるのか不安を抱えながらの決断だった。
 施設には看護師らが配置され、出入りは巡回や監視カメラで24時間管理。近所にも説明したが、住民の不安はゼロではない。「なぜここで引き受けるのか」「入所者が外出して感染が広がったらどうするのか」-。そんな声が寄せられた一方、差し入れを手渡し応援してくれる人もいた。
 支配人は県に最大限の対策を求めた上で、「小さな島だからこそ助け合いが必要。(住民には)地域のために理解をお願いしたい。入所者は、同居家族に感染させることも心配せずに済むので、安心して過ごしてほしい」と語る。
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 県によると、県内8医療圏で確保した宿泊療養施設は計12施設384室(14日現在)。昨年4月の公募に応じたホテルなどの他、状況に応じて各振興局が個別に相談して確保したケースもある。直近では五島市に加え、年末年始に感染が拡大した壱岐市でも1施設を追加した。
 いずれも国の交付金を活用し、県が3月末まで1棟全体を借り上げる。日中は看護師が入所者の健康を管理し、自治体職員らが務める生活支援員も常駐。県医療政策課は「安心できる環境を整えるために必要な施設。近隣地域の理解がなければ運営は難しい。しっかりと運営していくので見守ってほしい」とする。

 


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