“父と娘の一区切り” 高3木塚陽菜、平野美宇に敗れ全日本終える「一番近くで支えてくれた」

<2021年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)、2021年1月11日~17日>

共に歩んできた父と娘の一区切りだ。

全日本女子一般シングルスで、木塚陽菜(済美高校)が4回戦で平野美宇(日本生命)と対戦し、1-4で敗れた。
木塚は高校3年の勝負の今年、インターハイ、選抜など主要な大会がすべて中止になり、この全日本に照準を絞って練習を重ねてきた。昨年の全日本の一般シングルスでは1回戦敗退だったが、今年は4回戦まで駒を進め、さらに力をつけていることを証明した。

写真:木塚陽菜(済美高校)/撮影:ラリーズ編集部

「平野さんと当たるためにと思って(全日本を)戦いました。最初は自分のサーブレシーブが効いたが、中盤から相手のペースになってしまった。(平野さんは)コース、打点、威力など、一球の質が違った」

写真:平野美宇(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部

見つけた課題は、大学卓球界でさらなる飛躍するための糧にする。来春から神戸松蔭女子学院大学への進学が決まっている。

父であり、監督である

済美高校を率いているのは、陽菜の父でもある木塚健一監督だ。

1999年、地元・松山の済美高校に新卒の体育教員として赴任してから、古豪卓球部の復活に尽力してきた。いまや済美高校は、県高校総体11連覇、全国高校選抜県予選12連覇中と、愛媛の学生女子卓球界を牽引する存在になった。

監督として娘の指導は難しくなかったかと問うと「試合に出たいなら頑張らないといけない、というくらいのことしか言ってない。本人が考えてコツコツ頑張って、周囲がサポートくれた結果」と、娘の成長に目を細める。

「学校では厳しいが」

娘の陽菜も、健一氏に感謝している。
「母もなんですけど、一番私をよく知っている両親が、一番近くで自分の卓球を見て支えてくれて、信頼していました」

写真:木塚陽菜にベンチでアドバイスを送る健一氏/撮影:ラリーズ編集部

練習でどれだけ厳しい指導を受けても、同じ家に帰る日々が終わる。

「練習では厳しく、家ではめちゃくちゃ甘いんです」と陽菜は笑って、少し離れた場所に立つ父に目をやった。そうなんですかと健一氏に聞いてみると「そりゃそうでしょう」と父の顔で即答する。

「特に今は、あと二ヶ月したらいなくなると思うと、家では完全に(娘の)いいなりですよ」。

写真:試合前に娘にゼッケンをつける木塚健一氏(済美高校)/撮影:ラリーズ編集部

再出発の春

「ここから先は本人がどれだけ努力して、高いレベルに向かっていけるか」健一氏はそう力を込めた後、ふっと笑顔になった。

「次にバトンタッチします」

そして、健一氏自身も済美高校を率いる監督として、再出発のタイミングだと気を引き締め直す。
「(娘がチームのエースとしていたことで)娘を便利に使っていた部分もあったので、もう1回リセットしてやらないと」

それぞれの新たな決意の春は、もうすぐそこだ。

写真:肘タッチする父と娘/撮影:ラリーズ編集部

文:ラリーズ編集部

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