東京オートサロン2021 「生で見られるはずだった」クルマを紹介

今や世界最大級のカスタムカーの祭典と呼ばれるまでに成長した「東京オートサロン」。本来であれば1月15日から17日までの3日間、千葉の幕張メッセで開催予定でしたが、新型コロナ禍の影響で中止となりました。そこで生で見ることが出きなくなった、ちょっと気になる車達をチェックしてみました。


業界内で衝撃が走った中止の知らせ

「東京オートサロン2021」の開催概要が広報事務局から届いたのが昨年の11月25日でした。それからわずか1ヶ月後の12月23日に中止が決定したのです。今回はショーを盛り上げるイメージガール“A-class”が4年ぶりに復活予定とか、クルマ以外の部分でも楽しめるコンテンツが用意されていただけに、中止の一報は来場予定者やメディア、メーカーなど各方面に衝撃を与えることになったのです。

ここまで影響力を持つ「東京オートサロン」ですが、そのスタートは1983年の「東京エキサイティングカーショー」です。チューニングカーマガジンとして人気の雑誌「OPTION」が、日本のカスタムカー文化を世に広めるために始めたショーでした。当初は「改造屋さんのローカルショー」といったような扱いを受けていました。ところがカスタムカーに対するイメージの改善や愛好者の増加、そして規制緩和などによって集客力は、年を追うごとに上がっていきました。そして1987年の第5回からは現在の「東京オートサロン」に名称は変更され、会場も晴海から有明、さらには幕張メッセへと開催場所を変え、年々規模を拡大してきたのです。昨年の来場者は3日間合計で33万6,060人でした。初日はプレスデーなどもありますから実質2日半の入場者といっていいでしょう。

一方、日本自動車工業会が主催する東京モーターショーですが、2019年の「第46回東京モーターショー2019」を見ると12日間の会期で130万900人が来場しました。会期がまったく違いますから単純には比較できませんが、一日当たりの入場者では歴史ある東京モーターショーを凌ぐほどです。

こうなると自動車メーカーもその影響力を無視できず、近年では内外の自動車メーカーも出展するようになりました。中には東京オートサロンの会期中に新車やワークス体制の発表などが行われるまでになったのです。当然、客層も走り屋やカスタムカーファンだけでなく、ファミリーなども多くなり、会場の雰囲気も変わりました。今回の開催を楽しみにしていた人たちの嘆きが聞こえるという理由は、こんなところにあるのです。そして今回、感染に留意しながらも開催されていれば入場料は一人3千円。主催者側はこの入場料収入も失ったわけですから、やはりかなりの痛手となったわけです。

ジャンル別にチェック

残念なのは展示されるはずだったクルマも同じです。そこで気になるクルマをジャンル別に少し見てみましょう。

(コンセプトカー部門)
「HKS RACING GR YARIS」は世界的に知られた自動車用チューニングパーツメーカー「HKS」が仕上げたがコンセプトカーです。ノーマルでも十分な走りのGRヤリスをさらに磨き上げたスーパースポーツです。

オートバックスのオリジナルブランド「GORDON MILLER (ゴードン ミラー)」の「GMLVAN V-01」は丸目四灯フェイスというクラシカルの雰囲気を生かしたバンです。ベースはトヨタ・ハイエースで内装は大部分が無垢のリアルウッドに覆われ、他のクルマにはない温もりや風合いを感じながらキャンプや車中泊を楽しめる1台です。

オートバックスのオリジナルブランド「ゴードン ミラー」の「GMLVAN V-01」

「Rocky3000GT」は伝説の名車トヨタ2000GTを現在に蘇らせたといわれるカスタムカーです。実際にトヨタ2000GTで世界記録を樹立したレジェンドドライバー、細谷四方洋さんの監修を得て完成させた限定生産車です。見た目は2000GTですが中身はエンジンだけでなくオートエアコン、パワステなども装備して快適に走れる現代のクルマに仕上がっています。

名車の中身は最新装備の「Rocky3000GT」

1970年代にF1を始めとしたモータースポーツの世界で活躍したウオーターウルフ氏が公認した日本のカスタム・チューニング・レストア会社「ウオーターウルフJapan」のコンセプトカーが「ヴァナゴン」です。コミックの世界から抜け出してきたようなコミカルスタイルのベース車両は1989年のフォルクスワーゲン・ヴァナゴンというバンで、約2年半の歳月をかけて完成させたそうです。

(ドレスアップカー部門)
オープンカーの「DUCKS-GARDEN NC RHT JJY-2」は3代目のマツダ・ロードスターをベースに「DUCKS-GARDEN」が仕上げました。キャラの強いフロントマスクで個性が強調されます。

1999年式のトヨタ・ヴィッツをベースに「これまでに見たこともないような車を作りたい」という想いを実現したのが「Vit2」です。手掛けたのはトヨタ自動車直営の大学校「トヨタ東京自動車大学校」です。

二台のヴィッツを合体して「Vit2」と名付けたところがしゃれてます

(チューニングカー部門)
オートサロンのメインといえる部門には数多くのクルマが並びます。その中でちょっとも面白いのがロータリーエンジンのチューナーとして世界的に名を知られた「RE雨宮」の車両「IMS Ferrari and RE雨宮」です。フェラーリ・テスタロッサをベースに、4ローターエンジンを搭載したスーパースポーツです。

もう1台、4ローターエンジンを搭載しているのが「BANZAISPORTS AVUS」が仕上げた「NISSAN スカイライン」です。見た目は「ハコスカ」と呼ばれる伝説のスカイラインですが、搭載しているのはチューニングされたロータリーエンジンというマシンです。

(SUV部門)
街乗り派からアウトドア派まで、豊富に揃うSUVですが、クラシカルな雰囲気を生かしたSUVの人気も堅調です。そんなニーズにピッタリなのが1989年式のトヨタ・ランドクルーザー60をベースに「フレックスドリーム」が仕上げた「ランドクルーザー60 FD-classic」です。

話題のニューモデル三菱のエクリプスクロスPHEVをベースに、タイヤメーカーのTOYOTIREが仕上げた出展車が「ECLIPSE CROSS PHEV」。新製品のタイヤ、PROXES CL1 SUVを装着し、クルマとの融合がどのようになるかというドレスアップの提案です。

(軽自動車部門)
毎回、面白いクルマが揃う軽自動車部門。今回も盛りだくさんです。そんな中で光っているのが「AEROOVER」が手掛けた「AEROOVER G62」です。一見、セレブ御用達とも言える人気のメルセデスのGクラス、それもAMGですが、ベースはスズキのジムニーです。

大人気のスズキのジムニーをベースにこれまた人気のGクラスAMG風に仕上げた「AEROOVER G62」

軽自動車のカスタム改造で知られる「ブロー」が手掛けたのは「ウーキーライダー」です。個性的なフロントマスクは1957年製のジープFC150 / FC170にインスパイアされたデザインで、そのベースとなったのはスズキのスーパーキャリー。実用本位の軽トラックに愛くるしい表情を与え、より愛着の湧く1台に仕上げたそうです。

(インポートカー部門)
普段、あまり目にすることの出来ないスーパースポーツや憧れのSUVモデルなどがベースのカスタムの提案があります。
さらにはマクラーレンの究極のマシンといわれる「McLaren Senna」。その出展者は「HC GALLERY」です。東京モーターショーではおそらく目にすることのないスーパーカーも並びます。

あまり見かけることのない「McLaren Senna」も予定されていました

以上、ほんの一部ですがピックアップしてみました。この他に、内外の自動車メーカーが出展を予定していました。最近では新興国の台頭などもあり、モーターショー自体の存在意義の見直しなど、色々と言われていますが、オートサロンは特色ある独自の路線を歩み、カーライフを提案していることで支持されています。今回の中止は残念ですが、実はバーチャルでの東京オートサロンは無料で開催中です(https://www.tokyoautosalon.jp/2021/)。

今年は2年に一度の東京モーターショーの開催年でもあります。収束して無事に開催されることを願います。

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