コロナ感染の独居80代、6日間入院できず自宅で死亡 京都、病床使用率30%台でも受け入れられず

入院を待っている間に自宅で死亡した80代女性が使っていた杖。基礎疾患はあったが、コロナ感染までは元気だったという

 昨年末、京都市で新型コロナウイルスに感染した80代の独居女性が、自宅で入院を6日間待つ間に重症化し、肺炎で亡くなった。今年1月には、同様に京都市の自宅で入院待ちだった70代男性が重篤な状態になった。いずれも高齢で症状や基礎疾患があり、原則的には最初から入院が必要なケースだった。年末以降、京都府のコロナ患者向け病床使用率は30%台で推移しているが、実は医療体制は数字以上に危機的な状況にあり、受け入れる病院がなかった。

■最初は軽症だった80代女性、容体が急変

 80代の女性は、通っていた福祉施設で新型コロナの陽性者が出たため、昨年12月24日にPCR検査を受け、翌25日に陽性判定を受けた。近所に暮らす家族や市によると、基礎疾患はあったが、当初は37~38度の熱と鼻づまりなどで比較的軽症だったという。

 その後、女性は毎日、市保健所からの電話で状況の確認を受け、家族も毎日様子を確かめていた。

 しかし、30日に容体が変わり始め、女性は家族に「息苦しい」と訴えた。家族は入院の必要性などを市保健所に尋ねたが、受け入れる病院が見つからなかった。女性と家族は、入院先が決まるまで市保健所からの連絡を待つしかない状況になった。

 翌31日午前、女性から家族に電話があり、容体がさらに悪化した様子が感じられた。しかし当時、近所に住む50代の息子は、仕事の手が離せない状況にあった。息子は救急車を呼ぶか迷ったが、容体が詳しく分からないことや、医療現場の逼迫(ひっぱく)を思って119番できなかったという。

 その日の午後、家族が電話で様子を尋ねたが、応答がなく、息子が駆け付けると、女性はベッドに横たわっていた。すぐ救急車を呼んだが、死亡が確認された。死因は新型コロナによる重度の肺炎だった。

 息子は「(31日に容体が悪化した時に)すぐに駆け付け、救急車を呼んでいれば…」と涙ながらに悔やみ、「なぜ症状や基礎疾患がある高齢者が入院できなかったのか。二度と母のような犠牲が出てほしくない」と訴える。

■70歳男性は39度の熱でも入院できず、3日後に意識もうろう

 心臓に疾患がある男性(70)=京都市=は今月4日に39度近い熱が出て、検査の結果、6日に感染が分かった。症状や基礎疾患があることは当初から市保健所に伝えていたが、自宅で様子を見るようにと指示を受けたという。

 解熱剤を服用したが、高熱は続いた。本人や家族は毎日の市保健所からの電話に病状を訴え、入院を求めた。しかし「容体が急変したら電話して」と、緊急連絡用の電話番号を伝えられただけだった。

 陽性判明から3日後の9日朝。嘔吐(おうと)が続き、意識がもうろうとしている男性の様子に家族が気付いた。すぐに緊急連絡先の番号に電話したが4時間つながらず、その間にも男性の血中酸素濃度は酸素吸入が必要な数値まで低下。ようやくつながった電話では、救急車を呼ぶよう指示を受けた。

 救急搬送先の病院で、男性は肺炎を発症し、人工呼吸器が必要なほど悪化していたことが分かった。家族は医師に「最悪の事態も覚悟して」と告げられた。今は重篤な状態を脱したものの、入院は続いている。30代の娘は「高齢で基礎疾患があるのに、いくら病状を訴えても対応は変わらなかった。あとちょっと遅かったら危なかった」と、行政の対応に不信感を募らせている。

 

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