コロナ禍の今、「子どもに将来なってほしい職業ランキング」は親のしんどさを表している?

新型コロナウイルス感染拡大が収まらなければ、今以上の不況を迎える可能性があります。特にお子さんのいる家庭では生活費の確保、将来設計の見直しなどを強いられかもしれません。特にお子さんのいる家庭では生活費の確保、将来設計の見直しなどを強いられるかもしれません。また、コロナ禍収束後も、私たちが経験したことがない新しい社会を迎えることは十分予想できます。

WEBメディアの運営・コンサルティングを行う「ビズヒッツ」が興味深いランキングを発表しました。「子どもに将来なってほしい職業ランキング」で、子を持つ全国の男女500人に対して実施した調査です。

コロナ禍の今、多くの親は子どもに対し、どんな職業に就いてほしいと考えているのでしょうか。また、このランキングから今の大人が考える未来の社会・経済観はどんなものなのでしょうか。ランキングをもとに推測したいと思います。


先が見えない今、親が子ども(男の子)に望むのは最も安定した職業

まず始めにご紹介するのは「男の子になってほしい職業」です。昭和の時代には「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」というテレビCMが流行し、「優しく逞しく成長さえしてくれれば、経済は後からついてくる」というような風潮がありました。

しかし、平成を迎えてすぐにバブル経済が崩壊。「わんぱくでもいい」という、やや牧歌的にも聞こえる教育は姿を消しました。現在に至るまで、経済的な豊かさを最優先して目指すような子育てが浸透し現在に至ります。

今、将来が全く予測できないコロナ禍です。多くの親は、自分の子ども(男の子)にどんな職業に就いて欲しいと考えているのでしょうか。

1位は「公務員」。「寄らば大樹の陰」を感じさせ、以前なら「夢がない」と揶揄されたことでしょう。しかし、低迷する日本経済と、今のような社会の混乱を見れば、親が子どもに望む職業のトップに躍り出るのは十分納得できます。

また、2位には「エンジニア・プログラマー」がランクイン。将来はさらに発展するだろうデジタル社会において、ツブシがきく職についてほしいという親側の思いが感じられます。

3位は「スポーツ選手」で、「子どもが描く将来なりたいもの」の定番職種が食い込みます。4位以下はやはり「医師」「警察官」「教授・研究職」「消防士」と、安定系の職種ばかりがズラリ。先が見えない今、大半の親は子どもに対し、やはり堅実な職について欲しいと願う傾向が強いことがわかりました。

親が子ども(女の子)に望むのは、「女性ならでは」の職業ではなくなった

続いて「女の子になってほしい職業」を見ていきましょう。かつて、「女性の花形職業」と言えば、必ず上位にキャビン・アテンダントが挙がった時代もありました。LCC就航以降、航空業界の採用人数が増加したことで、就労のチャンスが増えました。

そのせいか、かつての「狭き門」「憧れ」の印象は薄まり、肉体的にも楽ではないことから、以前ほどの人気職ではなくなったと見る向きも少なくないようです。
そんな中、今の多くの親は、自分の子ども(女の子)にどんな職業に就いてほしいと考えているのでしょうか。

1位は「看護師」、2位は「薬剤師」でした。長期高齢化社会を迎えるこれからの社会では、医療従事職の安定感とニーズの高さから、多くの親が子どもに就いてほしい職業として挙げているように見えます。

また3位以下は「公務員」「医師」「保育士・幼稚園教諭」「教師」「管理栄養士」と、堅い職業が続きました。これらはかつて人気を誇った「キャビン・アテンド」「女子アナウンサー」のような女性ならではの職業ではなく、男性と肩を並べて就労でき、結婚・出産後も働ける職業ばかり。

このことから推測すると、自分の子ども(女の子)に対し「性別に限定されない」「長く働ける」職に就いてほしいと望んでいると言い換えられそうです。

「なってほしい職業」と「なりたかった職業」は合致しない

ここまでのランキングからは、今の親が子どもに対し、「できるだけ安定した堅い職業について欲しい」と願う傾向が強いことがわかりました。
一方で、その親自身は子どもの頃にどんな職業に就きたいと考えていたのでしょうか。まず「パパが子どもの頃なりたかった職業」を見てみましょう。

1位は今も昔も人気の職業である「スポーツ選手」。これは驚きませんが、注目すべきは2位の「ミュージシャン・芸能人」や3位の「電車やバスの運転士」です。

子どもを持つ親の世代は、カリスマ的な人気のミュージシャンや芸能人がカルチャーを強く牽引した時代に育ちました。そのため、子どもの頃はこういった「人前に立つ」職業に憧れを抱くことが多かったのかもしれません。

また、「電車やバスの運転士」は今も昔も男児には憧れの職業ではあるものの、先の見えない今は「憧れの職業よりも安定の職業だ」と考える親が多いのか、前述の「(親が考える)男の子になってほしい職業」ではランク外になりました。

時代背景なども反映されるでしょうが、親が考える「子どもになってほしい職業」と「自分が子どもの頃になりたかった職業」は必ずしも合致するわけではないようです。

ママが子どもの頃なりたかった職業は?

次に「ママが子どもの頃なりたかった職業」を見てみましょう。

1位に「ケーキ屋さん・パティシエ」、5位に「お花屋さん」、6位に「芸能人(アイドル・女優・モデル」。いかにも女の子らしい職業が上がりましたが、一方で2位に「保育士・幼稚園教諭」、3位に「教師」と堅実な職業がランクしていることも見逃せません。

男性に比べ、女性は現実的な考えをする人が多いからか、かつて「なりたかった」職業に、堅実なものを挙げた人が多いのではないかと思いました。

かつては、「私はできなかったから、子どもにはなってほしい」と願い、自分が憧れた職業を押し付けるような親もいました。大半は「子どものため」というより「自分のため」であり、そこで親子の考えが合致すれば良いですが、そうでない場合は、子どもはとても辛い思いをします。

それに比べれば、今の親が回答した前述のランキングは実に冷静で、自分のエゴよりも子どものことをよく考えた結果ではないかとも感じました。

親は自分の仕事に実感を抱くことができない?

そして最後のクエスチョン「自分や家族と同じ業種や職種に就いてほしい?」という問いを見てみましょう。この問いからは意外な結果が出ています。

子どもに、自分と同じ職種に就いてほしいと考える親はなんと12.6%。1割強にしか満たない数字で、8割以上の親は、「そうでない職に就いてほしい」と考えているようです。

以下はあくまでも仮説ですが、今子どもを育てている親は、世代的に「仕事での成功を掴みきれていない」「完全に仕事をまっとうした実感がない」「やりがいを感じられない」といった思いが隠されているかもしれません。

日々真面目に働いていても、未曾有の事態がたびたび起こり、そのせいで足止めを食う、辛酸を舐めるといった例は枚挙にいとまがありません。そうなると、「自分の仕事は将来性があるものなのか」「本当に子どもにつなげる仕事なのか」と自信を持てなくなるのは当然です。

こういった理由から「自分が就いている職業」云々よりも、子どもにはまず「安定」「堅実」な職に就いて欲しいという思いがあるような気もしました。

今回ご紹介した「親が子どもになってほしい職業」には、同時に親自身が「今の時代を過ごす大変さ」「しんどさ」が強く反映されているようにも思いました。どんな親でも子どもには豊かで幸せになってほしいと願うものですが、今は親自身がまず大変で、なおかつ夢のような未来がなかなか想像できません。

もしかすると、子どもには今の自分のような思いをさせないためにも、できるだけ安定を望む職業に就いてほしいと考える人が多いのではないかと思いました。

出典
調査対象:お子さんのいる全国の男女
調査人数:500人(女性356人/男性144人)
調査日:2020年10月24日~26日
調査方法:インターネットによる任意回答

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