明暗分かれた鷹、上々の楽天&ロッテ 不発オリ…12球団昨季の補強を診断【パ編】

ソフトバンクのウラディミール・バレンティン【写真:藤浦一都】

ソフトバンクは鳴り物入りで加入したバレンティンが期待を裏切る形に

2021年もスタートし、新たな1年が始まった。プロ野球の各球団は迫るキャンプインに向けて、戦力編成を整え、今季に向けてのチーム作りを進めている。

チームの戦力状況を見極め、足りない部分を補う補強。それがハマるか、ハマらないか、で、その年のシーズンの行方を大きく左右することになる。期待して獲得した助っ人がそれに応えられないことも珍しくはない。

では、昨シーズン、開幕前とシーズンに入ってから各球団が行った補強の成果はどうだったのか? 今季のキャンプインを前に検証してみよう。なお、貢献度を測る指標「WAR」は、セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。今回はパ・リーグ6球団だ。(※はシーズン途中加入の選手)

【ソフトバンク】合計WAR1.8(平均0.9)
M・ムーア投手
13試合6勝3敗0S0H 2.65 WAR2.5
W・バレンティン外野手
60試合191打数32安9本22点 .168 WAR-0.7

4年連続で日本一となったソフトバンク。昨季の補強はムーアとバレンティンの2人だけだった。ムーアは開幕直後にふくらはぎの怪我で離脱したものの、復帰後はローテの一角として貢献。150キロを超える真っ直ぐと斬れ味鋭いカーブを武器に6勝をマークした。

対照的に期待を裏切ることになったのはバレンティンだ。外国人枠からは外れた大砲だが、開幕から不振に喘ぎ、打率.168、9本塁打と低迷した。

ロッテは美馬が10勝、ハーマンや澤村らもチームに貢献

【ロッテ】合計WAR6.4(平均0.71)
J・ジャクソン投手
7試合0勝0敗1S3H 3.86 WAR0.3
F・ハーマン投手
38試合3勝2敗1S23H 2.15 WAR1.2
J・フローレス投手
14試合2勝2敗0S1H 7.66 WAR0.3
小野郁投手
40試合2勝2敗0S4H 3.23 WAR0.7
美馬学投手
19試合10勝4敗0S0H 3.95 WAR3.1
西巻賢二内野手
11試合16打数4安0本0点 .250 WAR-0.1
福田秀平外野手
62試合204打数44安5本19点 .216 WAR-0.2
澤村拓一投手※
22試合0勝2敗1S13H 1.71 WAR0.7
チェン・ウェイン投手※
4試合0勝3敗0S0H 2.42 WAR0.4

リーグ2位に食い込み、クライマックスシリーズに出場したロッテ。開幕前に7選手、そしてシーズン中にも2選手を補強し、積極的な動きを見せた1年だった。FAで獲得した美馬は10勝をあげ、WAR3.1とチームに貢献。人的補償で移籍してきた小野やハーマン、シーズン途中加入の澤村、チェンなども働いた。

一方で美馬同様にFAで加入した福田秀は怪我が相次いだこともあって62試合の出場にとどまり、打率.216に。貢献度を示す「WAR」もマイナスとなってしまった。ジャクソンは開幕直後に本人の申し出により契約解除となり退団した。

【西武】合計WAR1.5(平均0.3)
R・ギャレット投手
49試合3勝2敗0S16H 3.10 WAR1.2
S・ノリン投手
5試合1勝2敗0S0H 5.75 WAR0.2
C・スパンジェンバーグ内野手
111試合407打数109安打15本57点 .268 WAR0.1
松坂大輔投手
1軍登板なし
森越祐人内野手(阪神)
1軍出場なし

3年連続のリーグ優勝を狙った西武だったが、昨季は3位に終わった。新戦力の補強ではギャレットが大きな働きを見せた。160キロ前後の剛球を武器に、主にセットアッパーとして49試合に登板。16ホールドをマークした。

スパンジェンバーグも111試合で打率.268、15本塁打。守備の指標が悪く貢献度を示す「WAR」は0.1にとどまっているものの、まずまずの働きだった。対照的にノリンは故障もあり、わずか5試合の登板に終わり、松坂も怪我で1軍、2軍ともに登板はなかった。

楽天は涌井が最多勝、鈴木大がベストナインに輝くなど新戦力が活躍

【楽天】合計WAR9.6(平均0.96)
JT・シャギワ投手
31試合0勝3敗1S6H 5.81 WAR0.2
牧田和久投手
52試合2勝2敗2S22H 2.16 WAR1.0
涌井秀章投手
20試合11勝4敗0S0H 3.60 WAR2.9
酒居知史投手
46試合3勝2敗0S12H 3.65 WAR1.2
鈴木大地内野手
120試合478打数141安打4本55点 .295 WAR1.2
S・ロメロ外野手
103試合356打数97安打24本63点 .272 WAR2.0
池田駿投手※
21試合1勝0敗0S0H 4.32 WAR0.5
高田萌生投手※
1軍登板なし
DJ・ジョンソン投手※
16試合1勝0敗0S4H 3.07 WAR0.3
田中貴也捕手※
9試合15打数6安打1本4点 .400 WAR0.3

開幕前、そして開幕後と合わせて計10人もの補強を行った楽天。シーズン中に大量4件もトレードを成立させ、その積極性が際立った。チームは4位に終わったものの、これらの補強による成果は上々だったのではないだろうか。

まずなんと言っても金銭トレードで獲得した涌井だ。11勝をマークして完全復活。史上初となる3球団での最多勝を達成した。FAで獲得した鈴木大も打率.295をマークし、ベストナインとGG賞を獲得。ロメロや牧田、美馬の人的補償で獲得した酒居といった新戦力も結果を残した。

【日本ハム】合計WAR3.2(平均1.6)
D・バーヘイゲン投手
18試合8勝6敗0S0H 3.22 WAR3.4
C・ビヤヌエバ内野手
54試合168打数37安4本19点 .220 WAR-0.2

昨季5位に終わった日本ハムの新戦力はバーヘイゲンとビヤヌエバの2人だけ。そして、その2人は対照的な結果に終わった。バーヘイゲンは先発の一角として18試合に登板してチームトップタイの8勝をマーク。貢献度を示す「WAR」はチームの投手でNo1だった。

一方、巨人から移籍してきたビヤヌエバは相次ぐ離脱もあり、わずか54試合の出場にとどまった。打率.220、本塁打も4本とふるわず、加入1年で退団となった。

【オリックス】合計WAR-0.7(平均-0.18)
T・ヒギンス投手
41試合3勝3敗0S19H 2.40 WAR1.0
A・ロドリゲス内野手
59試合193打数42安6本25点 .218 WAR-1.5
A・ジョーンズ外野手
87試合302打数78安12本43点 .258 WAR-0.4
飯田優也投手※
4試合1勝0敗0S0H 15.75 WAR0.2

2年連続でパ・リーグ最下位に終わったオリックス。昨オフはメジャー282本塁打の実績を誇るアダム・ジョーンズを獲得するなど積極的な補強に動いた。ただ、蓋を開けてみれば、残念ながら期待外れに終わったと言わざるを得ないだろう。

ジョーンズは打率.258、12本に終わり、守備面でも拙さが目立った。もう1人のロドリゲスは.218、6本と奮わずに貢献度を示す「WAR」は大きくマイナスとなった。ヒギンスは中継ぎとして結果を残したものの、野手2人のマイナスが響き、新助っ人トータルの「WAR」もパ・リーグで唯一、マイナスに落ち込んだ。(Full-Count編集部)

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