いながきの駄菓子屋探訪28千葉県船橋市「リュウ君の店」ただの“変な駄菓子屋”じゃなかった!

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は千葉県船橋市の「リュウ君の店」です。

バラエティー番組に頻繁に登場する店

駄菓子屋がテレビ番組に出てくるときは、地域社会における駄菓子屋の役割に着目した、わりと真面目な内容が多いように思います。この日訪ねたのは、その傾向とは全く違う、バラエティー番組に頻繁に登場する一風変わったお店。「面白い男性店主が運営する、変な駄菓子屋」という切り取られ方になっていることが多いので、実際はどういう感じなんだろうと思い、行ってみることにしました。

JR船橋駅からほど近くの住宅街。すっかり日が暮れてからの訪問になってしまいましたが、細い路地の先に明かりとパラソル付きのテーブルが見え、すぐにそれとわかりました。お店の外には2台の古いゲーム機が並び、とてもノスタルジック。その横にはツッコミどころ満載の、「すべて手動のラーメン自販機」がありました。

珍名の調理品メニューが並ぶ

店内ではさらなるツッコミどころ、店主がコスプレしたブロマイドを販売中。壁に貼ってある調理品メニューは「あいちゃんスペシャル」「ロマンス」「なぞスペシャル」など、どんな物なのかがパッと想像できない珍名が並んでいます。諸々含め「これは唯一無二感のある大変なお店に来てしまった」と思い、気になるメニューを注文しつつ、店主にここに至るまでの道のりを聞かせていただきました。

リュウ君の店は平成12年(2000年)、勤めていた会社を退職した店主が、転職先を探している最中に発想を転換。自宅を改装し夫婦で創業したそうです。店名は当時飼っていた犬の名前から取ったとのこと。

ありきたりな店じゃダメだ

駄菓子屋いながきまで紙芝居をやりに来てくださったときの写真

「転職先を探していた時期、自宅でDIY作業をやってるときに近所の小学生が手伝いに来てくれてたんですが、そこでお菓子を振る舞ってワイワイやるのがけっこう楽しかったんですよ。『そういえば祖母が駄菓子屋をやってたなあ』なんてことも思い出して、就職しないで思い切って駄菓子屋をやってみることにしたんです。ところが、始めてみたものの全然稼げない。駄菓子屋なんだから、そりゃそうなんだけど(笑)、やっぱりありきたりな店じゃダメだと思って、調理品を出したり、オリジナルの変な商品を作って売ったりね。そうしたらお客さんもたくさん来てくれるようになって、なんなら取材もたくさん来てくれるようになって、食べていけるようになったんですよ。そこまで行くのにオープンしてから7〜8年はかかったかなあ。今は通学路の旗振りやガマの油売りの大道芸、オリジナルの絵本の作成なんかをやりながら楽しくやってますよ!」

珍名メニューは基本的には発案した子の名前を採用し、その子にとっての栄誉になっているんだとか。ブロマイドも、店主が行っている活動に則した格好をしているというだけで、ギャグでコスプレをしているわけではありませんでした(それを売るのはまた別の発想だと思いますが笑)。

とても書き起こしきれないほど、いろんなお話をしてくださった店主から伝わってきたのは、ものすごく子ども想いで、芸術家肌の方だということ。これからも地域の子どもたちや、テレビの番組を見た人を楽しませてくれるに違いありません。

リュウ君の店

住所:千葉県船橋市本町5-11-14

電話:080-3253-0802

営業時間:土日13:00~19:00、月火金15:30~19:00

定休日:水木

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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