新型レクサスISの魅力、発進からコーナリングまでの切れ目のないスムーズな走り

2013年にフルモデルチェンジを行ったレクサスのスポーツセダンである「IS」が2度目のマイナーチェンジを行いました。2019年4月に完成した自慢のテストコースで鍛えられたそのハンドリングはフルモデルチェンジ級と言えるものです。


気合いの入り方が違う

これまでも年次改良や2016年にサスペンションなどを含めたマイナーチェンジを行ってきたISですが、本来であれば新型導入から7年以上経過していますので、フルモデルチェンジのタイミングなのかもしれません。ただ、日本に限って言えばIS自体の販売台数は決して多くはありません。もちろん、国産セダン市場がシュリンクしている中、同門のクラウンですら昔のように売れない現実もあります。

ただライバルとして取り上げられることの多い、メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズ、アウディA4などの欧州勢の販売は堅調と言えます。

その中で現在あるリソースを活用しつつ、新しい走りの世界をどう表現するか、前述したようにレクサス(トヨタ)は愛知県豊田市下山地区に車両開発用のテストコースを開設しました。世界の自動車メーカーの聖地とも呼ばれるドイツのニュルブルクリンクサーキットからインスピレーションを得た全長約5.3km、高低差約75mというコースを使い、フルモデルチェンジを行わなくても徹底的にハンドリング性能を磨き込むことで、ライバルに勝つだけで無く、新しいレクサスの走りを表現できると確信したわけです。

試乗したのはIS300“Fスポーツ”、車両本体価格は535万円(オプション除く)です

サイズを拡大、デザインも大胆に

とはいえ、見た目も重要な要素であることは間違いありません。新型ISのデザインコンセプトは“Agile(俊敏)& Provocative(挑発的)”。従来以上に走りを予感させるデザインにするためにボディサイズを拡大しました。

新開発の小型LEDヘッドランプを採用することで重心の低さを表現しています

従来までのISもスポーティなデザインの中に“品の良さ”を感じさせるものでしたが、新型はより“攻め”のデザインであることがわかります。詳細は写真を見てもらえばわかるはずですが、マイナーチェンジ前のクルマと並べると驚くほど変化、流行の4ドアクーペ的にも見えます。

フロント&リアの造形変更はもちろんですが、やはり30mm拡大した全幅、特にリア側のフェンダーの造形は踏ん張り感というより、アスリートの強靭な筋肉美すら感じさせます。

Fスポーツ専用の車体色「ラディアントレッドコントラストレイヤリング」は16万5000円のオプションです

このフェンダーを作るためにレクサスではボディパネルを製造する工程で「突き上げ工法」というその名の通り、内側からパネルを突き上げることで立体的な造形を実現したとのことです。実際写真以上にその造形は大胆かつ流麗で、30mmという数字以上にワイドな印象を受けました。

ナビを中心にグレードアップ

インテリアに関しては基本的な造形に変更はありません。

ただ、細かくチェックすると左右の空調のレジスター(吹き出し口)の形状が四角から丸形に変更した点、インパネ上部やドアパネルに有彩色を設定するなどマイナーチェンジ前とは異なる仕様となっています。

立体的なバンパー造形やワイドトレッドにより従来以上のスポーティさをアピールします

そして最も大きな変更点はナビを始めとするインフォテインメントシステムの改良です。

レクサスではこれらをマルチメディアシステムと呼びますが、10.3インチのディスプレイは2016年のマイナーチェンジの段階で搭載されています。

しかし、今回、このディスプレイ自体の取り付け位置を室内側に移動させました。細かく言うとディスプレイは従来インパネ少し奥に設置されていたのですが、それを手前かつ斜め上方に移動させることで同じサイズでも視覚的には画面が大きく見えます。さらに画面に手が届く距離に設置されたことで新設定のタッチ操作にも対応しています。この他にもパネル自体の輝度も向上しているようで地図の見やすさはかなりレベルアップしていると言ってよいでしょう。

10.3インチのディスプレイは取り付け位置の変更やタッチ機能に対応、スマホ連携も行えます

またAppleのCarPlayやGoogleのAndroid Auto、さらにSDL(スマートデバイスリンク)という規格や2画面表示にも対応しています。

同時にセンターコンソールに装着されている「タッチパッド」のサイズアップや設置位置もドライバー寄りに変更されました。

つまりUI(ユーザーインターフェース)を考えると、従来までのタッチパッド、音声認識、ステアリングスイッチにプラスしてディスプレイへの直接タッチが可能になったことで操作の選択肢も増え、ユーザビリティ自体も向上していることになります。

一体感ある走りはジャパンオリジナルと言える味

Fスポーツ専用にオプション設定された本革シートにはベンチレーション機能も装備します

今回はメインを2L直4直噴ターボの「IS300」、2.5L直4ハイブリッドの「IS300h」には短時間ですが試乗できました。

個人的にはトヨタのハイブリッド車に乗っていることもあり(レクサスと比較しては失礼ですが)。ハンドリングと燃費性能を両立できるIS300hに対する期待度が高かったのですが、個人的にはターボ車の方に大きな感銘を受けた次第です。

冒頭に述べたテストコースにおけるは走行試験はもちろんですが、とにかくハード&ソフト共に新技術やチューニングを徹底的に行ったそうです。ここでは全ては書き切れませんが、例えばステアリング操作ひとつを取っても「切り込んだ」際だけでなく「戻す」際のフィーリングにもこだわっているそうです。

実際驚いたのは走り始めてから加速、そして減速してカーブを曲がるなどの一連の動きに切れ目が無いことです。人間の感覚は人それぞれですが、自分の中では「こう走ればスムーズに行ける」とイメージしてステアリングを握るのですが、色々な速度域で自分のイメージにかなり近くクルマが反応してくれます。

搭載する2Lターボは驚くほどの高出力というわけではありませんが、組み合わされる8速ATには「8-Speed SPDS」というタイプが採用されており、他のトヨタ車(例えばクラウン)に比べると反応速度は高く、その辺も切れ目の無いフィーリングに寄与していると感じました。

冒頭にボディのワイド化について触れましたが、その理由のひとつに新たに19インチタイヤを履く必要があったそうです。もちろんハイパフォーマンスタイプなのですが、最初イメージしていたガチガチな乗り心地は皆無、それよりも奥行きが深く、全体のフィーリングはクルマを操っている心地良さにも繋がります。

専用デザインの19インチアルミホイール。タイヤは前後で異なるサイズを装着します

レクサス車の美点とも言える静粛性の高さや、乗り心地も良好。前述した欧州のプレミアムセダンはそれぞれ個性的ではありますが、ISもレクサスの開発陣が作り上げた工芸品的な独自の仕上げと言えるものです。そもそも比較すること自体が必要ないほどのクルマに変貌しました。

こうなるとこれまで販売していたISの中古車の動きも気になるところですが、それはまた後日ということで。

新型ISの初期受注は好調らしく、やはりハイブリッドが60%位売れているそうです。しかし筆者的にはレクサスの匠が仕上げた走りを乗る度に感じることができる2Lターボの“Fスポーツ”をオススメしたいと思います。

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