インドネシア旅客機墜落事故でフェイク画像続々

海上で発見されたスリウィジャヤ航空機のものと見られるタービン(ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】インドネシアで9日に起きた旅客機墜落事故をめぐるフェイクニュースが飛び交っている。

乗客乗員62人を乗せたスリウィジャヤ航空182便が9日午後、首都ジャカルタから北部カリマンタン島ポンティアナクへ向け離陸直後、レーダーから消え、連絡不能となった。翌10日、ジャカルタ沖の海上で機体の一部が回収され、航空当局は墜落と断定。運輸省と国軍が現場の捜索を続けている。

10日夜には、この事故機が海面に激突する瞬間とされる画像がツイッターで出回った。海辺でスカーフをかぶった女性がたたずむ背後に、急降下する飛行機が写り込んだカットだ。画像は一気に拡散し、地元ニュースサイトも相次ぎ取り上げた。

だが、画像解析の専門家はツイッターで「報道から推測するに、SJ182便は時速約550キロで墜落している。写真はスマホのカメラで撮られているが、この速度の機体を鮮明に撮影できるだろうか」と疑問を呈した。

これをきっかけに、画像の真偽に話題は移った。投稿した男性はあまりの反響にたまりかね、翌11日になり「フェイクでした」と白状。画像を削除し「デマを広めるつもりはなかった。遺族にもおわびしたい」と謝罪した。

この男性は、こともあろうに同国のジョコ・ウィドド大統領の事務局で働くスタッフだった。ネットでは「イタズラでは済まされない」「法的な処罰が必要」などと炎上が続いている。

他にも「墜落の瞬間」とされる画像が複数ネットで出回っているが、いずれもフェイクだ。地元ニュースサイト「ムルデカ・ドットコム」によると、うち1つは1996年に起きたエチオピア航空961便ハイジャック墜落事件のもの。同機が燃料切れで海面に不時着しようとする映像を悪用し、画像をキャプチャー、反転しネット投稿された。

また、海を漂流していた赤ちゃんが救助されたという話題も駆け巡り、感動を呼んだが、これも偽ニュースだった。

拡散しているのは、救命具に包まれ、泣き叫ぶ赤ちゃんを大人たちが救助している画像だ。「2018年10月にインドネシアで墜落したライオン航空機の生存者だ」と解説しているサイトなどもあるが、これまたデマ。実際は、同年7月に沈没したフェリーに乗っていた赤ちゃんの救助シーンだった。

同国では大事件が起きるたび、こうしたフェイクニュースが出回るため、当局も頭を悩ませている。

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版)。

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