【プロレス蔵出し写真館】天龍、鶴田、坂口…酒豪軍団に猪木が一気飲み圧勝したワケ

ビールの一気早飲み大会を行う天龍、鶴田、猪木、坂口(左から=89年1月4日、プロレス大賞)

東京スポーツ新聞社制定「2020年度プロレス大賞」は、昨年12月14日にオンラインで選考委員会が行われ、内藤哲也が3年ぶり3度目の最優秀選手賞に輝くなど、各賞の受賞者が決定した。例年なら年明けの1月4日に授賞式が行われるのだが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となった。

さて、近年の授賞式は「レスリング特別賞」も含め、多くの受賞者が揃い盛大に行われた。しかし、過去には集合写真に5人だけという、最小人数で行われた授賞式もあった。

それは今から32年前の1989年1月4日、東京・銀座の東急ホテルで行われた88年度の授賞式。一体なぜ5人だけだったのか――。

この年の受賞者は

最優秀選手賞 天龍源一郎
年間最高試合賞 天龍源一郎VSスタン・ハンセン(7月27日・長野=PWF、UN2冠戦)

最優秀タッグ賞 該当チームなし
殊勲賞 藤波辰巳(現・辰爾)
敢闘賞 長州力
技能賞 ジャンボ鶴田
新人賞 馳浩
特別大賞 前田日明
大衆賞 ジャイアント馬場とラッシャー木村

特別功労賞 故ブルーザー・ブロディ
功労賞 栗栖正伸と小杉俊二

授賞式に出席し、集合写真に収まったのは天龍、長州、鶴田、馳、前田の5人だけ。木村は遅刻して集合写真に間に合わずパーティーのみ参加。馬場は恩人が死去したため欠席だった(ドラゴンの欠席は謎)。

集合写真は寂しいものだったが、授賞式後のパーティーはこの上なく盛り上がった。ムードメーカーはMVPの天龍、そしてアントニオ猪木だった。猪木は久々に顔を合わせた天龍、鶴田に積極的に声をかけ、場を盛り上げ、公には見られないツーショットを演出した。

猪木はUWFを旗揚げした前田とも、前田が新日本を解雇処分になって以来の顔合わせ。国際軍団として新日本では敵対していた木村とは笑顔で談笑。若手の小橋健太(後の建太)にまで声をかけていた。

天龍は長州、前田、藤原喜明と笑顔でビールを注ぎ合い外交手腕を発揮。前田はといえば旧UWF以来となる木村と笑顔で再会。坂口征二とザ・グレート・カブキ、越中詩郎と三沢光晴(素顔で出席)、サムソン冬木、川田利明も旧交を温めていた。

そして、この日のハイライトはビールの一気早飲み大会だった。猪木を囲んで天龍、鶴田、長州、坂口がコップにビールを公平に注ぎ、ドン荒川の「ヨーイドン」の声でスタート。ところが、猪木はコップをちょっと動かしただけで飲みほして1番。天龍が「もう一丁!」とばかり再チャレンジを要求し、藤原も加わり猪木に挑むが、またも猪木が圧勝。5回ほど行った一気飲み大会はすべて猪木が勝利した。

なぜ猪木が早かったのか? その場では分からなかったが、後で写真をよーく見てみると、猪木はなんと大きく開けた口に、コップのふち全体をくわえて飲んでいた(写真)。そしてそのまま首を後ろに傾け、まさに一気、一口で飲んでいたのだ。

ちなみに、猪木は前年の12月にロシア(当時はソ連)のレスリング&サンボ選手のプロ転向を計画して、モスクワやグルジア共和国(2015年から外名ジョージア)を訪問し、国家スポーツ委員会を始め多くの要人と接触した。その際、訪問する先々で猪木を歓迎するパーティーが開かれ、一気飲みの嵐だったようだ。そして、時に猪木はコニャック3本をわずか1時間あまりで空け、関係者のド肝を抜いたと同行した本紙記者がレポートしていた。

この後、新日本に参戦することになるソ連のレッドブル軍団との契約が成立した要因は、この時、猪木が酒の付き合いで築き上げた信頼も大きかったと言われている。

猪木は一気飲み、そして酒の〝達人〟だった(敬称略)。

© 株式会社東京スポーツ新聞社