大学入学共通テスト、自己採点後の出願校変更は入試科目以外の点に注意したい

大学入学共通テストがついに実施されました。従来の大学入試センター試験との出題傾向の違いや難易度について、すでに多く情報が発信されていますので、ここでは自己採点後に出願校を変更する場合の注意点について考えます。今回の入試から高大接続改革により、学力の3要素のうち「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(以下、主体性等)を一般選抜で評価しなければならないとされています。これに関連して多くの大学で志願者本人が作成する書類(志望理由書等)や面接などが新たに課されています。出願校を変更する際、こうした学科試験以外の要件を見落とさないよう注意したいところです。

予想ボーダーラインに加えて確認しておきたい出願書類

多くの受験生は、河合塾の共通テストリサーチと駿台・ベネッセデータネットの両方に参加をしていると思います。自己採点集計に基づく予想ボーダーライン(河合塾)や合格可能性判定基準(駿台・ベネッセ)は1月20日(水)午後から公開されています。国公立大学を目指す受験生は、バンザイシステムやインターネット選太君を使って、1月25日(月)から2月5日(金)までの期間で行う2次試験出願のための準備を進めていることでしょう。

中には共通テストで思うような得点が取れず、当初予定していた出願校から別の大学に変更することを検討せざるを得ない場合もあるでしょう。こうした時、バンザイシステムやインターネット選太君は役に立ちます。受験科目や得点を入力すれば、配点などの煩雑な計算を自動で行い、条件に合った出願校を表示してくれます。

こうして表示される大学が、生徒によっては当初は全く考えていなかった大学の場合もあります。その場合、出願期間の締め切りに追われて、出願校がどのような大学なのかあまりよく知らないままに出願するケースが毎年のように見られます。そこには入学後に起きる不適応問題が内包されていますが、どうしても大学に合格したいという生徒の気持ちを考えれば全てを否定することはできません。ただ、今年の場合は出願校を当初の予定と変更する際、主体性等の評価のための出願書類に注意が必要です。

入試科目と異なり、主体性等の評価方法は各大学によって多様

高大接続改革によって、一般選抜でも主体性等を評価することになり、各大学は様々な方法で評価を行います。面接を新たに課すなどはその典型例です。ただし、主要な私立大学は出願時に高校時代の活動などの記載・入力を課していますが、入試で点数化はされない場合がほとんどですので、受験生は過度に気にする必要はありません。この点については下記のコラムで解説しています。

2021年度入試 調査書の「主体性等」の準備は今のうちに済ませる、一般選抜出願には必須

https://univ-journal.jp/column/202043236/

受験生にとって問題となるのは国公立大学です。多くの国公立大学は文科省の政策を受け止めて主体性等の評価に取り組んでいます。そのため、面接、小論文、総合問題などを新たに課すなど入試科目を追加または変更しています。このように入試科目の追加・変更であれば見えやすい情報のため、見落とすことは少ないのですが、志望理由書など入試科目ではないもので、なおかつ点数化もされない場合は見落としがちになります。

前述のようにほとんどの私立大学は、学校活動の経験などを記載すれば良いので、文章を1つ作れば併願する場合でも使い回しが効きます。しかし、志望理由書の場合は、なぜ志望するに至ったのかという理由がある程度は書かれている必要があります。さすがに「バイザイシステムが表示したから」とは書けないので、出願する大学のHPぐらいは見る必要があります。

志望理由書の他には、活動報告書、自己申告書、自己推薦書、自己評価書、学習計画書、実績報告書など大学によって多様ですので、出願校を変更した場合、事前に準備していた文章をそのまま流用することができないこともあります。入試科目であれば、理工系は「英数理」とパターン化されていることに比べると対策が少々厄介です。

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任意提出ではなく、出願要件や点数化される場合は提出が必須

大学によっては、提出や申請は任意としているところもあります。佐賀大学や大分大学の「特色加点」などは申請しなかった場合は0点として扱われますが、学科試験の得点が合格ラインを超えていれば合格となります。この場合は試験で得点する自信があれば、未申請でも合格は可能です。ただ、点数化されるものを申請しないというのは、入試対策のセオリーからは外れていますので、よく練られていない文章でも良いので何らかのものを提出・申請することが良いでしょう。

大学によっては、全出願者の志望理由書等を点数化して合否判定に使用するところもあります。この場合の配点も各大学で様々ですが、2次試験総点の2割近くになる大学もありますので、そのような場合にはさすがに見過ごせません。そのため、点数化される場合は、多くの受験生は限られた時間の中でそれなりの作文をして提出すると思います。

ここで問題となるのは、点数化はされないものの提出を必須としている場合です。横浜国立大学の場合、「自己推薦書」の提出が求められています。点数化はされませんが出願書類の一部ですので、未提出だと出願書類の不備となります。つまり出願要件を満たしていないことになります。この場合、受験生にとって最悪のケースは、書類不備のため合否判定の対象外とされることです。今年の受験生は本当に多くの苦労を乗り越えてここまで来ています。書類の不備のような実力外でのケアレスミスは是非とも避けたいところです。

大多数の高校生は特別な活動を経験していないため、評価ではほとんど差がつかない

主体性等の評価の配点比率は、多くの場合、合否に決定的な影響を与える程ではありませんので、受験生はここでの評価が低くなっても構わないと割り切って、簡素な文章でも良いので必ず提出しておくことが大切です。そもそもこうした書類で決定的な差がつくことはほとんどありません。多くの大学は複数の審査担当者がルーブリックを用いて点数を決めていると考えられますが、白紙提出や指定文字数以下などを除くと極点に悪い点数はなかなか付けられないものです。それは活動内容にそれほど差が出ないことも理由のひとつです。

全国的に見れば、SSHやSGHの高校などで特別な活動を行った経験を持つ高校生の方が少なく、大多数の高校生は校内での学校活動が高校生活の中心です。文化祭や体育祭など学校行事も学校間で大きな違いはないため、そこでの活動で差が生じることの方がむしろ少ないと言えます。また、志望理由も「地元の大学だから」、「先輩が多く進学しているから親近感がある」でも十分な理由です。

入学後の学修内容や研究内容を深く調べていることに越したことはありませんが、こうした書類の作成に時間を取られるよりも、合否に決定的に影響する学科試験対策のために時間を使いたいところです。主体性等の評価のための書類には過度な完成度を求めないで、時間がない場合には、形式的に整っていれば良いと割り切ることが大切です。大学も本音としては、主体性<学力です。

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