メジャー時代と特徴一変? ロッテ・マーティンが日本で遂げた進化の証とは…

ロッテのレオネス・マーティン【写真:荒川祐史】

来日後はロッテ随一の長距離砲として活躍するマーティンだが…

「現役メジャーリーガー」という肩書きで入団した選手は数あれど、ロッテのレオネス・マーティン外野手が見せた活躍ぶりは特異なケースと言えるだろう。2019年7月にロッテに入団すると、左打席から放たれる豪快なホームランと驚異的な強肩を発揮。これぞメジャーリーガーというスケールの大きなプレーをたびたび披露し、幕張のファンの度肝を抜いた。

来日してからのマーティンは低打率ながら出塁率やOPSといった数字に優れる、一発長打の魅力を持った長距離砲として活躍を見せている。しかし、メジャーリーグで活躍していた若手時代のマーティンは現在とは異なるタイプの選手だったことをご存じだろうか。今回は来日以降のマーティンの特徴、そしてMLB時代の特徴を各種の成績と共に紹介。セイバーメトリクス的な指標にも表れる“変化”について迫っていきたい。

レオネス・マーティンのロッテでの年度別成績【画像:(C)パ・リーグ インサイト】

まず、マーティンが来日後に残してきた数字は、上の通りだ。2019年はシーズン途中での入団となったが、52試合で14本塁打というハイペースでホームランを量産。特に本拠地のZOZOマリンスタジアムでは27試合で10本と素晴らしい打棒を発揮して主砲の1人として強い存在感を放った。

昨季も、シーズン終盤に故障で戦列を離れたにもかかわらず、リーグ4位の25本塁打を記録。前年にチーム最多の32本塁打を放ったブランドン・レアード内野手が故障で39試合の出場にとどまったこともあり、チームは年間を通して長打力不足に苦しめられた。そんな中で数少ない一発長打を期待できる打者として奮闘した。

メジャー時代は徐々に本塁打数を増やすも、もともとは俊足好守の外野手

打率こそ2年続けて.230台と高いとは言えないが、優れた選球眼を持ち合わせているのも特徴のひとつ。昨季は規定打席到達者の中で26人中23位の打率.234だったのに対して、出塁率は同6位の.382と高い。OPSも2年連続で.800台と十分な数字を残しており、その貢献度は打率以上に高い。

レオネス・マーティンのMLBでの年度別成績【画像:(C)パ・リーグ インサイト】

MLBで残した成績も紹介していきたい。キューバ出身のマーティンは若くして母国リーグで台頭し、2009年に21歳の若さでWBCのキューバ代表にも選出されている。翌2010年に亡命してMLBへの挑戦を選択し、2011年にはレンジャーズでメジャーデビューを果たした。

米球界で3年目となった2013年に出場機会が急増し、打率.260でリーグ5位の36盗塁を記録した。続く2014年も2年連続で30を超える盗塁を記録。打率も.274をマークして、レンジャーズの主力の1人となった。2016年にマリナーズへトレード移籍すると、新天地では再びレギュラーに。リーグ7位の24盗塁をマークしただけでなく、キャリア最多の15本塁打を放った。

翌2017年も主力としての活躍が期待されたが、34試合で打率.174と不振に陥り、シーズン途中にカブスに移籍。計2球団でプレーした2018年は84試合で11本塁打とパンチ力は増しつつあった。2019年には65試合で9本塁打とさらにペースは上がっていたものの、打率は.200を切り、シーズン途中にロッテへ移籍することとなった。

MLB時代とNPB時代の成績を比較すると、機動力や長打力といった目に見える部分の変化が際立つ。ただ、それ以上に出塁率に大きな違いが生じているところは見逃せない。出塁率を大きく向上させる要因となっているのが選球眼。それを確認するために、セイバーメトリクスで用いられる指標を利用していきたい。1打席ごとの三振数の割合を表す「三振率」、同じく1打席ごとに選ぶ四球の数を示す「四球率」、出塁率と打率の差である「IsoD」、四球と三振の割合から選球眼の良さを求める「BB/K」といった指標を確認してみよう。

レオネス・マーティンの年度別成績【画像:(C)パ・リーグ インサイト】

ロッテ加入後は四球を選べるようになり、著しく出塁率が向上

三振率はMLB時代とNPB時代でさほどの変化は見られず、三振の数自体はキャリアを通じて多い傾向にある。その一方で、四球率はMLB時代は一度も.100台を記録したことはなかったが、NPBでは2年続けて.110以上の数字を記録。そして、2020年の四球率は.156と高いものとなっている。

また、IsoDもMLB時代の通算が.057と低く、選球眼に課題を残していた。だが、NPBでは2年連続で.110以上の数字を記録し、ともに一流と考えられる.100のラインを上回っている。特に2020年は.148と抜群の数字で、来日以降の平均値はMLBでのキャリア通算の2倍近くになる。

大きな変化を見せるのが「BB/K」で、MLB時代は明らかに四球が少なく三振が多いという傾向にあった。だが、来日1年目は、MLB時代に一度も記録したことのなかった.400台の数字を記録。2020年には.700とさらなる改善を見せており、劇的に向上していることが各種の指標からも読み取れる。

盗塁の数は来日してからの2年間で合計10個と、通算126盗塁を記録したMLB時代に比べると大きく減少している。年齢を重ね、脚力に衰えが見られるのは致し方のないところだが、対照的に、日本の地ではチーム随一の長距離砲として開花しつつある。

32歳にして変化、進化を続ける強肩豪打の助っ人は、来日3年目となる2021年にどんなプレーを見せてくれるか。ロッテの試合を見る際には、これぞメジャーという豪快なホームランや、目を見張るようなバックホームに期待してみる価値は、大いにあることだろう。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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