所得税、住宅ローン減税、子育て関連助成金、2021年に変わるお金の仕組み

私たちの生活に身近な税金。その制度は、基本的に毎年何かが変わっています。

新型コロナウイルスの感染拡大が生活や経済活動に大きな影響を与える中、2021年以降、私たちの生活にどのような影響があるのか、改めて考えてみましょう。


税制はどんなスケジュールで変わる?

税制というものは、どのような段階を経て変わっていくのかおさらいをしてみます。多少の違いはあるものの、おおよそのスケジュールは以下の通りです。

2021年度の税制改正では、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の立て直しと、国民生活を守る政策が焦点となりました。

与党である自民党が12月10日に発表した税制大綱を元に、2021年の年明け、内閣が国会に法案を提出し、審議を経て3月に改正法案が成立・公布され、4月に施行される流れになります。よほどのことがない限り、税制改正大綱の内容はほとんどそのまま法案として成立します。

そこで、税制大綱に書かれている税制改正の中で、私たちに影響が大きそうなトピックスを紹介していきます。

2020年の収入から変わった所得税計算の方法

上記は、すでに改正法案が成立していて、2020年1月から実施されている所得税の計算方法の変化です。サラリーマンの場合は2020年の年末調整で、個人事業主の場合は2021年3月15日までの確定申告で所得税の計算が変わります。

改正の背景には、政府が推進している「働き方改革」の一環で、個人事業主やフリーランスが増えてきたことがあります。この改正は、そんな会社員以外のほとんどの方にとって、税金が下がる機会になったと言えるでしょう。

ポイントは以下の通りです。

・ 年収850万円以下のサラリーマンの場合は、影響を受けません。

・ 年収850万円以上のサラリーマンの場合で、23歳未満のお子様を扶養している場合は、影響を受けません。

・ 個人事業主は、課税所得が10万円下がるため税金が下がります。 (合計所得2,400万円以下の場合)

・ 対象の方は、2020年度分の所得税、2021年6月以降の住民税に影響します。

例えば、年収1,000万円で子供を扶養していないサラリーマンの場合、所得税+住民税で 年額45,000円
税金が上がることになります。

住宅ローン控除の延長、床面積条件も緩和

2019年の消費税増税の影響により、住宅の買い控えを避けるために、住宅ローン控除の期間を13年間に延長されました。この措置は本来2020年末までが入居期限となっていましたが、新型コロナウィルス感染拡大の特例措置として、2021年12月末まで入居期限が延長されていました。

今回の改正では、さらにもう1年間の延長(2022年12月末までの入居期限)となる方針が決まりました。そこで押さえておきたいのが、以下のポイントです。

(1)入居期限より前に設定されている、契約期限

注文住宅の場合は、2021年9月末まで、分譲住宅(建売・マンション)の場合は、2021年11月末までに契約を済ませていることが条件となります。つまり、入居期限(2022年12月)ぎりぎりに購入して、すぐに引っ越しをしたとしても、対象にはならない事に注意が必要です。

(2)マンション床面積が40m2に上限緩和 + 条件は所得1,000万円以下

今まで50平方メートルだった床面積の上限が、40平方メートルに引き下げられました。同時に、その条件として「所得制限1,000万円以下」が設けられました。サラリーマンの年収で計算をすると、1,195万円以上の人は受けられない計算です。

今回の改正で、今後のマンション販売事情にも大きな変化が予想されます。改正前の条件で考えた場合、例えば、床面積 50平方メートルの物件と、49平方メートルの物件を比べ、もし販売価格が同額だったとした場合、どちらが選ばれるでしょうか。

50平方メートルの方は住宅ローン控除の条件を満たしているため、購入後、最大で400万程度の減税を受けられます。しかし、49平方メートルの方は控除が受けられません。多くの方が「50平方メートルの物件の方を買いたい」と思うのではないでしょうか。

そのため、住宅メーカーは出来るだけ50平方メートルを超えるように設計・建築をしてきたでしょうし、それ以下の物件は、住宅ローン減税を受けられない分を差し引くような形で、割安の価格を設定する傾向にありました。

今後、予想されるのは以下のような現象です。

・ 新築マンションの1LDK~2LDKの部屋は、今でよりも少し狭くなる。

( 50m2にしなくてもよい分、40m2に近い床面積で、部屋数を増やした方が儲かるから)

・ 独身者、夫婦2人世帯は、住宅購入がしやすくなる。

(住宅ローン控除を受けやすくなったことで、選べる物件数が増えたから)

・ 現在、販売されている 40平方メートルの物件は、早い者勝ちで無くなっていく。

(50平方メートルの物件と比べ、控除を受けられない分、予め安く設定されていたから)

来年以降、住宅購入を検討されている方は、このような情報も加味して検討を進めてください。

ベビーシッター、認可外保育所の助成金の非課税化

現在、ベビーシッターや認可外保育所を利用した場合、助成金を申請できる地方自治体が増えてきました。

例えば、東京都の場合は、制度上限 2,400円/時間 → 150円/時間 で利用が出来ます。1日4時間×5日 として、月に80時間使うケースでは、助成金を使わなければ費用は19万2000円。それが、助成金を使うと12,000円になるという大変お得な助成金です。

ただし今まで、上記の例で計算すると月19万2,000円-12,000円=18万、年間で216万円が雑所得として課税対象となっていました。

東京都福祉保健局のHPに記載されているシミュレーションで、利用者の年収が500万円だと仮定すると、年間約39万円の税金を納めなければいけませんでした。

今回の改正で、この部分の税金が非課税になる見通しが出てきたのは、子育て世帯とって意味のあるニュースだと思います。

この他、エコカー減税が2年延長されたり、2021年に見直された土地の評価額において、増額された場合の固定資産税は現状のまま据え置かれたりと、様々な改正ポイントがあります。

私たちの経済活動に税金は切り離せない存在です。正しく情報を取り入れ、賢く付き合うことで、無駄のない選択をしてください。

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