“美しい”は誰かに決められるもの? 男性でありながら、ミス・コンテスト優勝を目指す「MISS ミス・フランスになりたい!」が2月26日公開!

9歳の少年・アレックス(アレクサンドル・ヴェテール)の夢はミス・フランスになることであったが、自分を愛してくれていた両親を事故で失って以来、その夢は叶うことなく15年間の時が過ぎようとしていた。しかし、とある運命的な出会いをきっかけに、忘れかけていた“夢”にもう一度向き合うことに。

ミス・フランスコンテストに参戦することになったアレックスは、持ち前の中性的なルックスに加え、アパートメントに住む仲間たちの協力もあり、原石たる輝きを日に日に強くさせていく。“ミス・フランスになる”。“男性であることを隠しながらコンテストに臨み、かつて夢見た理想の自分へと着実に歩みを進めていくのだが――

――他人の目より、自分はどうなりたいのか。自我と欲求の間で葛藤しながらも羽ばたくことを選んだアレックス

クラスメイトから「ミス・フランスになる」という夢を笑われてから15年。24歳になったアレックスは、幼少期に通っていたボクシングジムでトレーナーとして働いている。ただ、ジムに通う子どもたちからは中性的なルックスをからかわれ、プライベートでは家賃を滞納する月があるほど荒んだ生活を送っていた。思い描いていた未来とはかけ離れた生活を送っていたアレックスであったが、プロボクサーになるという夢を叶えた幼なじみのエリオスとの再会をきっかけに、忘れかけていたミス・フランスへの気持ちが再燃。

母のような家主・ヨランダ(イザベル・ナンティ)や心優しい親友でドラァグ・クイーンのローラ(ティボール・ド・モンタレンベール)をはじめ、国籍、人種、性別、年齢関係なくアパートメントの住人にも協力してもらい、着々と大会参加への準備を進める。その後、“アレクサンドラ”としてジェンダーバイナリーの傾向が強いコンテストへ不信感を抱きながらも、面接・ステージともに順調に勝ち進んでいくが、大切なステージで一世一代のある行動に出る――

――“女性らしさ=美しさの象徴”?おじさま達の伝統的なジェンダー観をオシャレに一蹴するシーンも必見

本作ではアレックスがフランスで最も美しい女性の称号である“ミス・フランス”を目指し奮闘する様子を描くと共に 、ミス・コンテストの審査基準やステージングを通して時代遅れな価値観に深くメスを入れているのが印象的だった。

例えば、運営サイドの上層部は男性が中心で審査期間内に同行するスタッフや地方予選の司会も男性。とにかく、男性、男性、男性なの! そういった環境の中でかつてのミス・フランスが雄一、心の拠り所になる訳だけれど…これだけ男性ばかりが決定権を持ってしまうと、「これって本当に“美しさ”を評価するコンテストなの?」と疑問を抱くこともしばしば。水着や画一的な衣装を着用しての審査なんかも、おじさまが喜びそうなものばかりで今っぽくない。

ただ、今の時代に背いた“伝統的なジェンダー観”を感じてもらうことは、次の時代に進むためにはとっても大切な原動力になるから嫌悪感を抱くようなミス・コンテストの裏側のシーンを描き切ったことは、とっても素晴らしいなと思った(フィクションだけど現実的にはこういうこともあるのかもしれないなぁと思えるほど生々しかった!)。それに色香に屈して欲望のまま行動を取ってしまった男性たちを、女性たちがシャレた言葉で一蹴するシーンが本当に気持ち良いの!

観賞後は「大前提として美しさは画一的なものでも順位を決めるものでもないから!」と、自分自身に改めて自信を持てる作品だったわ。もちろんカワイイ、カッコイイも人ぞれぞれ。いつか、毎年耳にする世界で最も美しい顔100人とかいうのも無くなりそうよね。

さて、主演を務めるのは“ジェンダーに囚われないモデル”のアレクサンドル・ヴェテール。近年では話題のNetflixオリジナルドラマ『エミリー、パリへ行く』などに出演している、注目の人物。“真の美しさとは?” “本当の自分とは?”を問いかけ、もがくアレックスの姿は年齢や性別を超え共感を呼び、フランスでは10月の再ロックダウンにより劇場公開が一週間という短さながらも好成績を収めた。気になる人は感染症対策をしっかりとした上で、チェックしてみて。

■ 映画:MISS ミス・フランスになりたい!
2021年2月26日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
https://missfrance.ayapro.ne.jp/

記事制作/芳賀たかし(newTOKYO)
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