冨山和彦氏ら各界有識者70名以上がコロナ後の世界を徹底討論 生産性運動65周年記念大会

ポストコロナにおいて、企業経営や人材育成、働き方はどうあるべきか。各界を牽引するリーダーたちが討論する「生産性運動65周年記念大会」が、2020年10月26・27日の2日間にわたり、オンラインで開催された。

主催する日本生産性本部は創立65周年を迎え、2020年9月には日本の生産性向上にむけた課題を分析した「生産性白書」を刊行。大会では、「人材育成」「働き方・労使関係」「経営革新」「イノベーション」「公正で活力ある経済社会の実現」の5つをテーマとする合計15の分科会を実施し、経営者や学識者ら70名以上が登壇した。

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「働き方・労使関係」をテーマとした分科会「健康経営と生産性~“いきいき”とした人と組織の実現~」では、東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の川上憲人教授や慶應義塾大学総合政策学部の島津明人教授らが登壇し、働く人の心と体の健康増進と組織活性化を通じた生産性向上について議論した。川上教授は「健康いきいき職場づくりフォーラム」の取り組みを紹介しながら、ウィズコロナ時代では労働者の心の健康増進活動がますます重要な意味を持つとしたうえで、テレワークや在宅勤務を導入する企業が増加し、コミュニケーションと信頼感の低下が顕著に見られることから、マネジメントを変える必要性があると指摘した。これに対し、フジクラ健康社会研究所の浅野健一郎代表取締役CEOは「以前は職場で何をしていたのかを挙げてみて、そのうちの何がテレワークで失われたのかを考えていくとマネジメントのヒントがみつかると思う」とした。また早稲田大学教育・総合科学学術院の黒田祥子教授は、マネジメント側のメンタルケアの重要性も強調した。

「経営革新」がテーマの分科会「経営意思決定の新機軸~withコロナ時代の経営と生産性~」では、経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦IGPIグループ会長、中外製薬の永山治特別顧問兼名誉会長、学習院大学経済学部の宮川努教授が登壇した。まず基調講演で、冨山氏はコロナ禍やデジタル改革など大きな危機が訪れている中で迅速に意思決定ができる経営人材を育成する必要性を指摘した。永山氏はイノベーション経営における経営者の役割、宮川氏は生産性向上のための投資のあり方について語った。次にパネルディスカッションでは人材育成投資や多様なステークホルダーへの成果の公正分配について議論が交わされた。人材育成投資については、冨山氏が人事を公共財として捉え、投資していくことが重要だとしたのに対し、永山氏も個々の企業による人材投資に加え、国や産業が資金を出して基礎的な人材育成をするメカニズムを作ることが必要だとの認識を示した。

また「イノベーション」の分科会「サービス産業の生産性向上~生産性経営への転換をどう図るか~」では、新型コロナ危機を踏まえた企業経営のあり方や生産性経営への転換について、企業経営者・労働組合それぞれの立場から議論がなされた。産業戦略研究所の村上輝康代表がモデレーターを務め、JTBの田川博己取締役相談役やUAゼンセンの八野正一副会長ら4名がパネリストとして登壇した。田川氏は「従来はマーケットのニーズやお客さまのウォンツを読んで商品を提供していたのに対し、これからはお客さまの感性にどうやって耳を傾けて、それをデータ化し商品化していくかが重要になる」とした。また、八野氏は労働組合の立場から、労働者一人当たりの付加価値を追求することの重要性を強調した。

 大会の映像はYouTubeの日本生産性本部公式チャンネルで公開されている。

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