落合監督が絶句した長男・福嗣さん提案「3つのV逸罰則」

2009年の開幕戦に勝ち和田と握手する落合監督

【球界平成裏面史・落合監督のガンダム愛(2)】リーグ2位からの勝ち上がりで中日が53年ぶり2度目の日本一に輝いた翌年、平成20年(2008年)3月23日夜。都内某所の焼き肉店で、落合博満監督は長男の福嗣さんと2人だけでシーズン開幕前の決起集会を行っていた。そこで福嗣さんの口から衝撃発言が飛び出した。

「優勝できなかったらガンダム1年間禁止だからね」。前年に「優勝できなかったら丸坊主」と福嗣さんに誓った落合監督は約束通り、リーグ優勝を逃すと頭を丸めているが、ガンダム禁止のペナルティーは想定外で「えっ、1年か…」と絶句。ハラミを焼いていたハシはしばらく止まったままだったという。

福嗣さんが決めた無慈悲過ぎるV逸罰則は次のようなものだった。

(1)ガンダムのテレビ放映、DVD、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の視聴禁止

(2)落合監督の部屋にあるガンダムグッズの没収

(3)自宅にあるすべてのガンダムグッズへの接触禁止

「落合博満という人からガンダムを取ったら一体何が残るんですか!」(福嗣さん)というほどガンダムを愛していたオレ流指揮官にとっては厳し過ぎるペナルティーである。それだけに絶対に優勝しなければならなかったのだが、この年、故障者が続出したこともあって落合竜の調子は今ひとつだった。8月に行われた北京五輪に12球団最多の主力5選手(川上、岩瀬、荒木、森野、台湾代表のチェン・ウェイン)を派遣したこともあって夏場の逆襲もかなわず、結局、優勝した原巨人に12ゲーム差の3位。平成16年から23年までの落合政権下8年間で最低の成績に終わった。

クライマックスシリーズ第2ステージで巨人に敗れた10月25日、落合監督に「ガンダム禁止令」が発令された。さすがに1年間は長いということで翌シーズンの開幕までに禁止期間は短縮されたものの、指揮官にとってつら過ぎる罰則であるのは変わりない。しかも落合監督がずっと楽しみにしていた「機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)」セカンドシーズンの放送が10月5日から開始されたばかりだった。

放送開始とともに落合家では仮面をつけた謎の男であるミスター・ブシドーの正体が一体誰なのか? で大盛り上がりだったのだが、落合監督はガンダム禁止令が発令された第4話以降は視聴不可となりガックリ。また福嗣さんにガンプラやポスター、ガンダムの目覚まし時計なども取り上げられ、ガンダムと一切接触ができなくなってしまった。「機動戦士ガンダムOO」が放送される日曜の夕方になると落合監督はすごく寂しそうな様子だったという。

それだけに半年間のガンダム禁止が解除されたときには落合監督の〝ガンダム愛〟が爆発した。当時、東スポの携帯サイトで連載されていた福嗣さんのコラムによれば、平成21年4月3日、ナゴヤドームで行われる横浜(現DeNA)との開幕日を迎えた午前0時になると落合監督は福嗣さんが名古屋まで持ってきた「機動戦士ガンダムOO」セカンドシーズン全25話分の録画ビデオの視聴を開始。朝まで一気に15話まで見ると昼に起床後、球場入りする前に16、17話もクリア。さらに開幕戦で勝利を収めた後、すぐに帰宅して、そのまま最終話まで一気に見てしまったという。

ちなみに横浜との開幕3連戦に中日は3連勝。福嗣さんから「今年も優勝できなかったらガンダム禁止にしようか」と持ちかけられた落合監督だったが、返事はもちろん「NO!」だった。

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