G桑田コーチに期待したい〝意識改革〟 ジャイアンツ球場に残る「桑田ロード」伝説

桑田コーチは原監督(左)の期待に応えることができるか

【赤坂英一 赤ペン!!】桑田真澄氏(52)の巨人復帰で、借金や原監督との確執はどうなった、次期監督は阿部二軍監督とのマッチレースか、というウワサ話がかまびすしい。が、まず現時点で桑田投手チーフコーチ補佐に期待したいのは、練習と体調維持に関する徹底的な意識改革である。

私がこの仕事を始めた1988年、桑田は弱冠20歳にしてすでに先発の柱。プロ意識の高さもベテラン並みで、日頃からこう公言していた。

「僕は、野球人生を一年一年ではなく、引退するまでのトータルで考えています。例えば1年だけ20勝しても、翌年ケガをして0勝だったら意味がないでしょう。それより毎年10勝できる投手のほうが、チームにとっても価値があると思う」

コンスタントに勝てる投手になるため、桑田は調整方法だけでなく食事のメニューなども自分で考案。当時から「科学的」な練習と生活を実践している投手だったのだ。その上で、誰もかなわないランニング量を自分に課していた。連日ジャイアンツ球場の外野グラウンドで左右両翼を往復し、桑田の走った跡だけ芝がすり切れて「桑田ロード」と呼ばれるようになった伝説もある。

90年の年明け早々にはジャイアンツ球場で朝6時から自主トレ開始。グラウンドをうっすらと覆った雪に、桑田の足跡が点々と残されていた。

それほどストイックな生活を送っていた桑田が現役時代、しきりに主張していたのが喫煙の害である。エースとして立場を確立した95年に、ロッカーや移動用バスを分煙化するよう、長嶋監督に直訴。これを実現させると、記者にも取材エリアでの禁煙を要望した。

今では考えられないことだが、球団事務所がまだ神田のオフィスビルにあった90年代、記者室は喫煙OK。オフにここで契約更改の会見が行われるとき、桑田は「会見の30分前からたばこを控えてください」と報道陣に訴えていたのだ。

「たばこを吸っている人は脳細胞の数%が死ぬともいわれています。寿命が3年違ってくるという報告もある。健康はお金に代えられません。プロ野球選手はいいプレーをして、お客さんに喜んでもらって、それで家族を養ってるんですから」

というのが当時の桑田の主張。残念ながら球界にはまだ愛煙家が少なくない。コーチに就任してからも、積極的に“健康増進対策”を推し進めてもらいたいものである。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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