日本が深刻なコロナ禍で行き詰まるのに、台湾とベトナム経済が好調なワケ

2020年は年半ばには多くの国で制限が緩和されるなど、各国の経済活動に明るさが見え始めていました。しかし、年末から2021年にかけ、主要国におけるコロナ問題が再び深刻化しています。

今年もコロナウイルスとワクチン開発のせめぎあいが予想されますが。世界経済、株式市場は、昨年以上にコロナ問題へ振り回されることとなりそうです。そのなかで、アジア市場のなかで注目される国、そのポイントをいくつか挙げてみたいと思います。


経済状況と株式市場の乖離が鮮明に

2020年後半以降、世界的に経済状況が悪化している一方で、株式市場は絶好調、という状況が顕著になりました。不景気の株高です。

先進国の株式市場では、日本の日経平均株価、米国のNYダウ工業株、ナスダック指数などはいずれも上がり、特に日本の日経平均株価は約30年ぶりの高値となりました。各国が相次いで金融緩和、追加経済対策など資金供給を実施して景気を支える、という方針を明確にし、あふれた資金が株式市場に流れていると推測されます。

とはいえ、すべての産業の個別株が値上がりしているわけではありません。移動制限による需要の低迷などにより旅客輸送、エネルギーなどのセクターの企業の業績悪化、株価低迷が顕著になりました。一方で、テレワークや巣ごもり消費関連企業は、株式の値上がりが目立ちました。

今年も昨年以上に、好調な企業と低迷する企業の二極化がはっきりとしてくると思われます。

アジア新興国、コロナ問題への対応の違いくっきり

アジア新興国の方に目を移すと、景気対策や金融緩和以外にコロナ問題への対応の差が経済状況や株式市場に大きく影響を与えています。特に、中国、台湾、ベトナムは、迅速なコロナ対策が他国から評価され、企業の経済活動もほぼ正常化しています。

このなかで、台湾とベトナムの状況を確認したいと思います。まず台湾ですが、台湾はデジタル担当大臣 ・オードリー・タン氏が主導した新型コロナウイルスの抑制策が内外から高く評価されており、実際に台湾経済、企業の生産活動もほぼ正常化しています。

TSMCの決算は絶好調

今の台湾は、実体経済が良好なうえに株式市場も好調、という正常な状態にあるといえます。そのなかで象徴的だったが、台湾を代表する企業であるTSMCが1月14日に発表した2020年10―12月期決算です。

同社は、世界で比較的早いタイミングで決算を発表する企業のひとつで、近年は同社の決算状況が半導体業界や関連産業の現状や先行きを見る判断材料になるという傾向が強まっています。

今回の決算内容は、売上高が前年同期比14%増、純利益が同23%増と増収増益で、四半期ベースで売上げ、純利益ともに過去最高となりました。足元の好業績だけでなく、注目されるのが、過去最大規模の280億ドル(約2.9兆円)の設備投資を発表したことです。

不安定な世界情勢のなかで、同社がこのような大規模投資に踏み切ったことは、半導体関連産業、同社の先行きの明るさを示唆していると言ってよいでしょう。今後も同社株が台湾株式市場をけん引することになりそうです。

ベトナムはコロナ禍でもプラス成長

そして、もうひとつ注目される国がベトナムです。ベトナムもコロナ封じ込めに成功している国の一つとして内外から高く評価されています。

実際、ベトナムの2020年のGDP成長率は前年比2.91%でした。直近10年間では最も低い水準ではありますが、世界的にマイナス成長となっている国が多い中では、大健闘といえます。

成長の原動力のひとつが輸出です。2020年の貿易収支は199.5億米ドルと前年比83.5%増加しました。特に対米輸出が好調だったことからみて、以前から言われていた米中貿易戦争激化によって、代替輸出先としてベトナムが選ばれていることの証しといえるでしょう。

また、TPP11、RCEP、欧州とのFTA、英国とのFTAなど、対外開放をすすめてきたことで、外国からベトナムに対する投資も拡大しています。

外資主導から自国産業育成へ

外国の力をうまく利用しながら、徐々に自国産業を育成していくという今のベトナムの状況は、かつて中国が深センや上海などの経済特区に外国企業を誘致し、そののち自国産業を徐々に育成につなげて行ったパターンと似通っています。

ベトナムと中国では、国の経済規模や政策執行スピードの面で雲泥の差はありますが、外国主導の成長から自国産業育成を目指す、という政策の方向性の面ではほぼ同じ道をたどっているといえるでしょう。今のベトナムの状況はまだ外資主導ですが、将来的には中国のように自国産業が育ってくるベトナムに期待したいところです。

経済が好調なだけではなく、株式市場のほうも好調で、ベトナムVN指数の2020年年間騰落率は14.9%でした。2020年12月には、ベトナム個人投資家の証券口座新規開設件数が63,000件超と、月間過去最高になるなど、ベトナム現地では株式投資熱が高まっています。

個人投資家も今の自国経済の良好さを認めているのでしょう。台湾と同様にベトナムも、良好な経済状況社を素直に反映した株高になっている、と評価できます。2021年も好景気や外部からの投資増がベトナム株式市場を押し上げる、というパターンが続くと思われます。

<市場情報部 副部長 明松真一郎>

© 株式会社マネーフォワード