首都要塞化でもバイデン暗殺の脅威 西暦が20の倍数の年に不吉出来事「テカムセの呪い」

全米で厳戒態勢が敷かれている(ロイター)

米民主党のジョー・バイデン次期大統領(78)の就任式を20日(日本時間21日)に控え、過激なトランプ支持者たちが襲撃を予告。そのため首都ワシントンなどを中心に、全米で厳戒態勢が敷かれている。トランプ支持者への呼びかけは、6日の連邦議会議事堂襲撃事件時よりも大規模に及び「バイデン氏暗殺」という最悪のシナリオも危惧されている。専門家は他にも標的となりかねないポイントを指摘した。

バイデン氏の第46代米国大統領就任式を前に、式典が行われる首都ワシントンの連邦政府施設が集中する中心部は、バリケードが張り巡らされて封鎖。州兵計2万5000人以上が警備に当たっている。トランプ大統領の就任時が約8000人だったのと比べると、いかに異例かが分かる。

このほかニューヨークやロサンゼルスなど、全米各地でも厳戒態勢が敷かれており、ツイッターには「まるで9・11の時のようだ」といった声も上がっている。

そんな中、17日に予定されていた就任式のリハーサルが「治安上の懸念がある」との理由で18日に延期された。また、バイデン氏自身も18日に予定していた自宅がある東部デラウェア州ウィルミントンから首都ワシントンへの移動を、同じく「治安上の懸念がある」との理由で中止したというから穏やかではない。

すべては「バイデン氏暗殺」という最悪のシナリオを回避するためだ。

6日には大統領選の結果に不満を持つトランプ氏の過激支持者たちが連邦議会議事堂に多数乱入し、5人の死者を出す大暴動に発展した。12日には、就任式に際してホワイトハウスへの襲撃を予告したとして男1人が逮捕されている。過激支持者たちは口だけでなく、本当に“凶行”に及ぶ可能性も高い。

ある在米ジャーナリストは「表立って口にはしないが、バイデン氏暗殺の可能性を危惧している人たちがいるのは明らか。それほどまでに、連邦議会議事堂襲撃は全米中に衝撃を与えた。現在の異様な光景も人々の警戒感を高めている」と現地の状況を明かす。

実際、警備当局の警戒度の高さは本物だ。6日の連邦議会議事堂襲撃の際には警備側の“内通者”が過激支持者を招き入れたと報じられた。大統領選結果の認定でトランプ氏に反旗を翻し“反逆者”とされたペンス副大統領が標的にされたが、タッチの差で脱出したといわれる。

今回招集された2万5000人以上の州兵たちの中にも“内通者”がいないとも限らず、警備当局は就任式本番を前に、徹底した身元調査を行い、万全を期している。

テロに詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、標的はバイデン氏だけではないと指摘している。

「過激派の犯行予告は小さなものも入れたら数限りなく、そのすべてをFBI(米連邦捜査局)が監視するのは不可能。必ず漏れが出てくる。彼らが狙うのはソフトターゲット。つまり、警備が薄くて狙いやすい反トランプメディアや各州の民主党議員、さらにはトランプ氏をSNSから締め出したIT企業の本部が狙われるでしょう」

実際に昨年10月、民主党のミシガン州知事誘拐を計画したとして、トランプ氏の過激支持者が逮捕された。こうした不届き者たちが同州の警察官襲撃や州政府の転覆、内戦までも企てていたことも判明している。

過激支持者たちはSNSを通じて、全米中にいる“同志”たちに抗議行動を呼びかけており、その規模は6日の連邦議会議事堂襲撃とは比べものにならないほどになっている。

黒井氏は「おそらくというか、必ずテロ的な行動は起こる。過激支持者たちはマジメに自分たちの行っていることが米国のためだと思っている」と指摘する。

一部には、西暦が20の倍数の年に選出された大統領には、不慮の事故が起きるという都市伝説「テカムセの呪い」を“予言”する人もいる。

1860年のリンカーン大統領を含め、80年、1900年に選出された3人、1960年のケネディ大統領が暗殺。80年のレーガン大統領は暗殺未遂、2000年のブッシュ大統領(子)も手投げ弾による暗殺未遂があった。

無事、バイデン大統領誕生となるのか。

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