カーローン400万の返済に苦しむ36歳独身男子。資産形成への最短ルートは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、会社員の男性。400万円のカーローンの返済に苦しむ相談者。金融資産は170万円。今後、不動産購入も考えていますが、ローンが重くて思うように資産形成できないといいますが……。FPの秋山芳生氏がお答えします。

クルマのローン残債がありすぎて困っている。戸建てやマンションの購入も考えているが、資産価値が低下していく事を考えると、怖くて買えない状態。今後、どのように資産形成していけばいいのか、もしくは、このまま貯蓄を貯めるべきかが分からない。

【相談者プロフィール】

・男性、36歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:36万6,000円(年収520万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円

・毎月の世帯の支出の目安:28万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:3万8,000円

・食費:3万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:2万円

・通信費:6,000円

・車両費:2万円

・お小遣い:2万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯蓄総額:100万円

・現在の投資総額:70万円

・現在の負債総額:400万円


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。状況を整理しながら、自動車のローン残債の返済と住宅購入ができるかについて、そして資産形成についても考えていきたいと思います。

家計管理がどんぶり勘定になっている可能性が

家計状況ですが、36万6,000円の手取り収入に対し、28万円の支出であれば、毎月8万円以上貯まる計算になります。ご年齢を考えても、もっと預貯金が大きくなければ辻褄が合わないので、想定外にかかる費用があることや、家計の管理がどんぶり勘定になっている可能性が高いです。いちど、家計簿アプリなどをしっかりと使いこなして、ご自身の家計の中から支出が多いものをあぶり出していけると良いでしょう。

カーローンを完済できるのはいつ?

資産状況については、400万円の負債に対して100万円の貯蓄と70万円の投資という状況は、見直しが必要です。

400万円のほぼすべてが自動車のローンだと仮定して、仮に3%のローンを組んでいた場合、2万円の車両費では完済できるのは23年3カ月先となります。そして、利息だけでも87万円となります。ボーナス払いを年に30万円したとしても9年1カ月かかります。

カーローンの上限期間は5年が多く、長くても6、7年かと思います。2万円の車両費では計算が合わないので、毎月の支払いがもっと多いか、もっとボーナス払いがあるのかと思いますので、確認してください。

そこまで長く車に乗る予定はないかもしれませんが、住宅購入を考えるようであれば、購入の頭金を捻出するためにも売却して、コストの安い車に変えた方が良いかもしれません。一度査定に出してみて、売却する場合は、複数の買取り業者を比較しながら、価格交渉をしてみましょう。

住宅を買うなら、購入価格の10%の現金は必要

未曾有の低金利状態ですので、頭金を無理に入れずに借り入れを多くしてもかまいません。ですが、住宅ローンの審査では、頭金を入れるかどうかが審査基準の1つになる場合があり、適用される金利に影響がある場合があります。

また、住宅ローンの頭金は必ずしも必要ではありませんが、住宅購入の際は購入費用以外にも、

・住宅ローンの手数料 ・引越し費用 ・不動産仲介手数料 ・税金その他費用
・クーラーなどの設置費用 ・家具やカーテン費用 ・火災保険 ・ネット開通工事費用

などの諸費用で、思いのほか出費がかさむものです。ですから、最低でも購入価格の10%は現金がある状態が望ましいです。住宅ローン以外の借金を作らないようにすることが大切です。

持ち家か賃貸か?

住宅ローン返済後に資産化されることを目的に購入を考えること自体は悪くないと思います。ご懸念のとおり、今後、空き家が増えていきますので、住宅の評価額は下がることもありますが、駅近くで日当たりもよく、学校や病院などの環境や立地も良い物件の場合は上がることもあります。

ただし、現状の資産状況では、まだ債務超過状態ですので、住宅ローンなど、新たに借り入れするのはやめたほうがいいでしょう。ご相談者は現在36歳なので、今から35年ローンを組んだ場合、完済が71歳になると思って焦っているかもしれませんが、焦りは禁物です。まずは借金を返済しましょう。それから、現実的に返済可能なローン期間と購入額から物件を検討し、購入価格の10%以上を貯めることを目指しましょう。今後、結婚して子どもが生まれるなどのライフイベントがあるかもしれませんので、住宅購入を決めるのは、家族のフォーメーションが分かってからでも遅くはありません。

また、一生賃貸という選択肢も悪いわけではありません。老後の時期には空室が多くなることが予想されるので、場所にこだわらなければ安い賃貸物件が今よりも多く出てくる可能性にも期待できます。持ち家か賃貸、どちらが良いかは、家に対する価値観をどうもつか次第なのです。

家計改善は保険から

保険については、独身の方が2万円の保険に入る必要はないかもしれません。

医療保険であれば高額療養費制度があるので、ある程度貯蓄があれば賄えます。貯蓄ができていない場合は、保険料を支払うよりも、まず現金を貯めることが優先です。また、万が一のことがあったとしても、独身であれば死亡保険や終身保険で誰かの生活を保証する必要はないのではないでしょうか。

もし貯蓄系の保険に加入しているのであれば、解約し、解約返戻金を車のローンを返済していくのもいいでしょう。おそらく貯蓄系保険の資産増加率より、カーローンの利率のほうが高いと思われます。解約返戻金がどれだけ出るのかも確認し、検討してみてください。

資産形成したいのであれば投資で、万が一の際に家族の生活を守りたい場合は保険で、数年以内に使う費用は貯蓄で対策するのが効果的です。それぞれの手段を混ぜてしまうと、どうしても効率が落ち、高い手数料を払うことになるので注意が必要です。

また、「その他」の費用が5万円あります。衣服美容、医療、交際費、趣味娯楽、特別費などと思いますが、家計簿アプリを活用してできるだけ内訳を可視化していきましょう。使いすぎているポイントがわかれば家計を改善しやすくなります。

お金の優先順位を持ちましょう

現状の状態は、車のローンが非常に大きくのしかかっていますが、一方で家計やキャッシュフローが把握できていないと感じます。まずは家計簿をしっかりとつけることで現状を把握することと、将来をどのようにしたいのかを見定めることが大事ではないでしょうか。

車が大事か、家が大事か、老後の資産を作ることが大事か、結婚資金などを貯めておくことが大事か、仕事でもっと活躍するための自己投資をすることが大事か、色々な尺度で考えてみて、お金を使うプライオリティ(優先順位)を持ってください。お金にコントロールされるのではなく、しっかりと考えてお金をコントロールしていきましょう。以上、少しでも参考になれば幸いです。

© 株式会社マネーフォワード