カギはオリンピックと衆院選、株式相場に影響与える2021年重大イベントを予習しよう

2020年は世界的に新型コロナウイルスの猛威に振り回された年でした。その中で株式市場は一時下落したものの、大規模な金融緩和を背景に回復し、史上最高値を更新した指数も少なくありませんでした。

日本の日経平均株価もバブル以来の高値で1年を終え、2021年に入っても勢いはとどまらず一時2万9,000円台目前まで上昇しています。一方で2021年はオリンピックや選挙など国内の注目イベントを控えています。今回は今年予定されているイベントを確認し、備えをしていこうと思います。


日経平均は2021年に入っても勢いが衰えず

日経平均株価は昨年後半から快進撃を続けています。11月初旬に行われた米大統領通過後から上昇し、2万3,000円近辺にあった株価は節目として意識されていた2万4,000円を突破。新型コロナワクチン開発への期待感なども後押しして、11月中旬には2万6,000円台をつけました。

その後12月はもみ合いが続いたものの、大発会直前で再び上昇し2万7,000円台で2020年を終えました。2021年に入っても半導体需要の増加への期待感などからハイテク株を中心に買いが集まり、1月14日には一時2万9,000円台に迫るまで上昇しています。

バブル期につけた日経平均株価の史上最高値は終値ベースで3万8,915円となっており、あと10,000円ほど節目がないかのように思われますが、ドル建てで見ると歴代最高値を約31年ぶりに更新する水準まで上昇しています。今後はまず3万円の大台に乗せるかに注目が集まっています。

そんな相場の先行きに影響を与えそうな今年の目玉イベントが、オリンピックと衆議院議員総選挙です。

オリンピックは開催される?シナリオごとに事前に備えよう

2020年に1964年以来の悲願として開催が予定されていた東京オリンピック。しかし新型コロナの蔓延により2020年3月に延期を余儀なくされました。迎えた2021年も新型コロナウイルスの感染はとどまらず、感染が比較的抑えられていた日本においても拡大傾向にある状態です。このような中で、昨年に引き続き開催の可否についての判断が徐々に迫られる状況となっています。

では、この先どのようなシナリオがあるでしょうか。考えられるのは予定通り開催、中止、2022年以降への延期の3つです。また予定通り開催されるケースでも、観客を入れるのか、それとも無観客で行うのかなど複数のパターンが考えられます。

政府や大会組織委員会からは開催に前向きな発言が目立ちますが、IOCや海外のメディア、また日本の一部の閣僚からも批判的な発言が出始めました。開催に後ろ向きな理由としては海外と国内でそれぞれ要因が挙げられます。

海外要因としては世界的にワクチン接種が開始されているものの、当初の予定よりは遅れている上、感染拡大は収まっていません。また、国内においてはワクチン接種開始が2月下旬とされており世界から遅れを取っています。

日本国内の秋以降の感染拡大は、要因のひとつとして外国人の入国規制を緩めたことが挙げられており、外国との入出国解禁には慎重姿勢となることが予想されます。このような状況を考慮すると、中止または延期の可能性が高まっていると言えるでしょう。

そこで焦点となるのは、いつ決定が下されるかということです。昨年は3月24日に安倍前首相とIOCバッハ会長による電話会談で延期の決定がされたことから、その時期が一つ濃厚です。

一方でオリンピックを“人類がコロナウイルスに打ち勝った証”として開催させようと意気込んでいる政府関係者からすると、選挙を控えていることを考慮すれば判断の遅れが今後の選挙戦略に響くことも考えられるため、より早めに決定が下されることも考えられます。特に2月以降は細かい情報に注目しておくとよいかもしれません。

相場への影響はというと、これまで上昇してきたものの、オリンピックを期待した動きというよりは世界的な金融緩和をはじめとするその他の要素で上昇しているため、仮に中止や延期が決定されたとしても下落は限定的かもしれません。

一方で、悪材料であることは確かなため、一時的に売りの発端となる場合が想定されるため注意が必要でしょう。個別銘柄で見ると、航空業、旅行関連業など、先行きの更なる収益期待の縮小が考えられるセクターの値動き等には十分警戒が必要かもしれません。

一方で、今後急速に新型コロナの感染が収まり、オリンピック開催となる可能性もちろんあります。その際はポジティブ材料として相場が急騰上昇することも考えられるでしょう。

総選挙はいつ行われる?相場への影響は?

もう一つの注目されるイベントは、今年起こることが確定している衆議院議員総選挙です。今回の総選挙は先述のオリンピックの行方や新型コロナにより、例年より不確定要素が多くなっています。

中でも最も憂慮すべき事項は政権動向ではないでしょうか。目下の菅政権の支持率は発足直後の高い支持率から一転して、30%台で推移しており、不支持が支持を上回る状態となっています。

前安倍政権時も支持率を不支持率が上回っている状態が続く時期はあったため、これだけで今後の内閣ないしは選挙結果を不安視するのは時期尚早ではあります。一方で、コロナウイルスへの対応に対する国民からの批判も高まっており、今後の支持率の動き次第ではより厳しい状況となるかもしれません。

続いて、総選挙のタイミングと相場への影響について考えていきましょう。タイミングとしては春の選挙、都議選とのダブル選挙、そしてオリンピック終了後または任期満了近辺での解散が考えられます。マーケットの観点からするといつ選挙が行われ、どのような結果が想定されるかの2点が注目すべき点ではないでしょうか。

まず目下の新型コロナウイルスの感染状況やオリンピックの開催が不透明である点を踏まえると、春までに選挙が行われることは現実的ではないでしょう。また都議選とのダブル選挙も連立与党の公明党の反対があり可能性は低いでしょう。そうすると夏場以降が考えられます。

仮にオリンピックがない場合は約1ヶ月のオリンピック期間を考慮しないで済むため、都議会選以降から任期満了の間の期間での選挙も十分考えられるでしょう。相場の観点で見ると夏場は年間でもパフォーマンスが低い“夏枯れ”の時期にも重なるため、選挙を不確定要素として例年以上の下振れが起こるリスクに注意が必要でしょう。

加えて、選挙の結果に伴い与野党の勢力図が変わる可能性も考えておくとよいかもしれません。2013年からの株高はアベノミクスと呼ばれた一連の経済対策をはじめ、7年8ヶ月と続いた安倍前首相による長期安定政権によってもたらされたとも言えます。

新型コロナウイルスなど一連の対応の信を問われる今回の選挙は、今までの長期安定政権が揺らいでしまう可能性をはらんでいます。この点がどのように相場に織り込まれていくか見極める必要もあるでしょう。

日本国内でも重大なイベントを控える2021年の株式市場。場合によっては早い段階で波乱の展開となるかもしれません。

<文:Finatextグループ アナリスト 菅原良介>

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