落合監督〝中日ボイコット疑惑〟にオレ流反論40分「上原、宮本は認められるのか」

ボイコット疑惑に反論した落合監督

【球界平成裏面史・中日WBCボイコット騒動(2)】平成20年(2008年)11月21日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表候補に選出された5選手全員が辞退したことで「中日はボイコットしたのではないか」と疑われる事態に発展。落合竜は大バッシングを浴びることとなった。翌22日、落合監督はナゴヤ球場のプレスルームに現れると、報道陣を前に大反論を展開した。

落合監督が第一に否定したのが球団ぐるみのボイコットだ。「うちはボイコットしたわけじゃない。辞退はあくまで選手個人の判断だ。若い選手は1年間働いたわけじゃないし、不安があるからできたら辞退したいと言ってきた。本人の意思を尊重しただけで、辞退の判断に現場もフロントもタッチしていない」とあくまで選手の意思を尊重しただけだと強調した。

実際に中日内部にはWBC出場に意欲的だった選手が何人かいた。山本昌は後日、自身のホームページで「実は原監督には日本シリーズのゲスト解説で顔を合わせたときに『ボクはいつでもOKですよ』と立候補しておいたのですが、残念ながら入っていませんでした」と明かしており、予選に出場しながら故障のため北京五輪本番のメンバーから外れた井端もWBCメンバーに選ばれれば出るつもりでいた。それだけに落合監督とすればまず最初に球団ぐるみのボイコット疑惑について否定しておきたかったのだろう。

さらに落合監督は「上原(浩治投手=FA)や宮本(慎也内野手=ヤクルト)は辞退すると言って認められている。一部だけは認められるのか。日の丸を背負ってやりたいというのなら私は尊重する。それと同時に、辞退したいというのも尊重しなければならない。アメリカでプレーする選手は辞退したときにバッシングはなかった。アメリカの球団に対してだってバッシングしてないだろ。選手はプロ野球機構の社員じゃなく、みんな一人ひとりが個人事業主で契約選手だということをはき違えたら困る。もしケガをしても機構は責任をとれないんだろ」と北京五輪後に代表辞退を表明した上原や宮本の名前を挙げ、中日だけが非難されている状況に強烈な不快感を示した。「(日本代表)監督もコーチも連れて来い。オレがちゃんと説明してやるから」と言って約40分にわたるオレ流独演会を締めた。

落合監督の反論については「正論だ」「筋が通っている」という声があがる一方、原ジャパンに対して協力的ではないということでその後も一部ネット上では中日への非難が続いた。結局、翌年3月に行われた第2回WBCに原ジャパンは中日を除く11球団の選手と松坂、イチロー、福留らのメジャー組で参戦。決勝の韓国戦では延長10回にイチローの劇的な決勝打が飛び出し、日本は連覇を達成した。

平日の昼間にも関わらず決勝戦のテレビ視聴率は平均36・4%、瞬間最高45・6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)に達するなどWBC連覇に日本中が歓喜の渦に包まれたが、巨人の渡辺恒雄会長は「こんなにうれしいことはない。各球団、まあ人を出さなかったとこもあるけど、少なくとも11球団はエース、一流のスターを出した」と派遣選手0の中日をチクリ。なおWBC連覇への落合監督のコメントは「よかったね。おめでとうしかない」であった。

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