「保守分裂」でも「現職が街頭に立たない」コロナ禍の知事選!雪国・岐阜県が今アツい!【2】(フリーライター・畠山理仁)

私のような選挙好きにとって、今回の岐阜県知事選挙が「面白い」ことは間違いない。地元メディアも「54年ぶりの保守分裂選挙」として、連日、報道に力を入れている。

岐阜新聞には知事選の特設ページが設けられ、各候補者のインタビュー動画がアップされている。
【岐阜新聞Web「2021岐阜県知事選挙」】

中日新聞も特集ページを立ち上げている。
【中日新聞「岐阜県知事選2021」】

ここまで充実した報道がなされる選挙はなかなかない。岐阜県の有権者は本当に恵まれている。この情報を生かさないのはもったいないと私は思う。岐阜県民がうらやましい。

今回の岐阜県知事選挙の構図を解説するにあたり、まずは立候補した4人を紹介したい(届出順)。

江崎禎英(えさきよしひで) 56歳 無所属 新人 元内閣府大臣官房審議官
稲垣豊子(いながきとよこ) 69歳 無所属 新人 元小中学校教諭・新日本婦人の会岐阜県本部会長
新田雄司(にったゆうじ) 36歳 無所属 新人 薬剤師・元岐阜県職員
古田肇(ふるたはじめ) 73歳 無所属 現職 岐阜県知事・元内閣総理大臣秘書官

【会場でのクジ引きの結果、立候補届出順が決まった】

岐阜県の選挙を語る前に知っておきたいのは、ここが「自民王国」であるということだ。県内の衆議院小選挙区は、岐阜1区〜岐阜5区までの全5議席を自民党が独占している。参議院の2議席も自民党だ。そして、定数46の県議会では、県政自民クラブが31人で最大会派となっている。

ところが今回の知事選では、県内の自民党国会議員、県議の間で支持が割れている。現職の古田氏を支持する陣営と、新人の江崎氏を支持する陣営に二分されている。

今回の知事選で、自民党岐阜県連はどちらの候補にも推薦を出していない。しかし、県議で構成される県政自民クラブは古田氏、江崎氏の2人に推薦を出している。

定数1の知事選で2人を推薦──。わかりにくいのでもう少し具体的に見てみる。

自民党県連会長の野田聖子衆議院議員(60歳)をはじめとする国会議員6人は、現職の古田氏を推している。31人いる自民党県議のうち15人は古田氏支持だ。

一方、自民党県連会長代行の猫田孝県議(80歳)は江崎氏を推している。江崎氏を推す国会議員は大野泰正参議院議員1人。自民党県議は猫田氏を含めて16人が江崎氏を支持している。

この「分裂劇」の主役ともいえる猫田氏は県議13期のベテランで、県政に大きな影響力を持つ重鎮だ。過去4度の知事選では現職の古田氏を担いできた。2005年の郵政選挙では、無所属で出馬せざるをえなかった野田氏を「県連公認候補」として支え、なんとか小選挙区で勝利させていた。ところが今回の知事選では、野田氏と猫田氏が真っ向から対立しているのだ。

【新人の江崎氏擁立の中心となった猫田孝県議】

「今まで一緒に戦ってきた野田聖子さんについてどういうお気持ちですか」
告示日に報道陣からそう問われた猫田氏は、こう答えていた。

「この選挙が済んだら、うちの自民クラブの人間はみんなクラブに戻ってくるんですよ。だからクラブが割れることは絶対にないの。それから衆議院の選挙が10月までに必ずある。(岐阜県選出の衆議院議員は)5人いますけども、5人ともみんなが応援するわけですよ、我々県会議員は。県連も割れることは絶対にないの。野田聖子先生とか古屋圭司先生とか、そういうことじゃなしに、勝って握手したら、それで県連は一枚岩でいけるんですよ。だからそういう心配は、僕は全くしていない」

この言葉でもわかる。今の岐阜県の政治が自民党を中心に回っていることは間違いない。

 

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【岐阜県選挙管理委員会事務局・第20回岐阜県知事選挙特設サイト】 
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