「じきに死ぬから好きにしたい」このままでは破綻確実!父のお金遣いをなんとかしたい

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。 今回の相談者は、38歳、家族経営の会社を営む男性。70歳になる父の、将来を考えないお金遣いが心配だという相談者。改善のポイントや、将来困らないための対策は? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

70歳になる父についての相談です。父が立ち上げた小さな会社を僕が引き継ぎました。父は今、会長として報酬をもらい、年金と合わせて生活費にしています。報酬額はそう多くはなく、手取りにして18万円ほどです。

これがもらえて当たり前の生活を今までしてきたと思うのですが、コロナの影響で会社の経営が難しくなり、まずは役員から報酬カットをすることになりました。

貯金はそこそこあるようですが、「じきに死ぬから好きに暮らしたい」といいながら毎月けっこうな金額のお金を使うので、次の取締役会で報酬のカット、もしくは停止が決まってしまった場合、父の老後の生活がどうなってしまうのか心配でなりません。

自分もまだ小学生の子がいるため、教育費や老後資金など考えると、多額の援助は厳しいのです。一度、父の状況についてみてもらえないでしょうか。

【相談者プロフィール(金銭面は父親の情報)】

・男性、38歳、会社代表

・父(70歳、相談者の会社の会長、妻は既に他界)

・毎月の手取り収入:約18万円

・年金受給額:(社保税控除後)16万4,000円

・貯蓄:約3,500万円

・毎月の支出の目安:40万8,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:2万3,000 円(持ち家、マンション、管理費のみ )

・食費:10万7,000円

・水道光熱費:1万8,000円

・通信費:1万9,000 円

・生命保険料:2万4,000円

・日用品代:2万1,000 円

・医療費:1万3,000円

・教育費:1万5,000円

・交通費: 3万1,000円

・被服費:4万4,000円

・交際費:4万円

・娯楽費:2万5,000円

・その他:2万8,000 円


FP:お父様への報酬支払いが厳しくなり、年金だけで生活を維持していけるか心配だということですね。確かに毎月40万円では支出が多すぎますから、老後資金がいつまでもつのか心配になりますよね。今後の見通しと、将来の生活への対策などを考えてみましょう。

今のままだと、90歳まで生きるために必要な資金は約6000万円

仮に今の生活状況のまま年金だけで暮らすようになると、毎月24万5,000円ほどの赤字で、その補てんが必要になります。総額いくら必要かは寿命によるところもありますからはっきり出せませんが、例えば90歳まで生きると考えると、今後20年でかかる生活費は5,856万円。およそ6,000万円ほど必要な計算になります。現在の貯蓄が3,500万円ほどということですから、生活費だけでおよそ2,500万円不足します。そのほかにも住居の修繕や病気、介護などにかかるお金も必要になる場合がありますから、さらに500万円ほどは準備しておきたいもの。こう考えていくと、不足額は3,000万円ほどになるでしょう。

不足額は多額なのに、現状ではお金が貯まる状況ではありません。3,000万円の差額を縮めるには、まず支出を見直して、圧縮する努力が必須です。お父様の言い分では、「じきに死ぬから好きにしたい」ということですが、今のままでは生活することができなくなる可能性があります。そこを理解してもらいましょう。

毎月の支出状況を見ると、全体的にメタボ支出です。必要な支出、そうではない支出を判断し、支出の仕方にメリハリをつけられると、無理や我慢が少なく支出を減らしやすくなるので、一度お父様と支出を振り返り、「必要」「不要」の仕分けをご一緒にされてみてはいかがでしょうか。10万円ほど下げられると、かなり将来の試算が変わってきます。90歳までの必要生活費を3,500万円ほどまでに下げることができます。

支出削減のポイントは、固定費

支出削減をラクにするポイントは、固定費を見直すことです。最近は大手キャリアでも安いプランが打ち出されていますし、格安スマホもあります。通信費の見直しは意外と支出削減となりますので、ぜひ取り組んでほしいものです。また、生命保険に過度の保障がついていないかの見直しもしてみましょう。時々、立派に独立しているようなお子さんがいる高齢の方でも、ご自身や配偶者の方に多額な死亡保障をかけている場合もあります。特段の理由がなければ、不要なはずです。また、ジム通いをしている方も多い年代ですが、通わなくなっていて会費だけ払っているのなら、やめましょう。意外と「コロナが収束したら……」などと言いながら、ぼんやりと継続している人も多いものです。

固定費の次は日々の支出の見直しも

固定費だけでは削減が不十分であれば、食費、日用品代など、日々の支出も見直します。特に食費は少し値段の高い外食に通う、食材にこだわるなどして高額になるケースもよく見かけます。こだわることはよいのですが、破綻が近づいている場合、優先順位を検討してください。他、おしゃれに気を使ったり、友人との交流を楽しんだりすることにお金をかけすぎる人もいますが、それも同様です。

「どの支出の優先度が高いのか」を考えながら、必要か不要かを判断していくと、意外と「なぜこれにこんなにお金を使っていたのか?」と思える支出が見つかったりもします。

病気、介護状態になった時の対応を話し合っておく

また、高齢になると問題になりやすいのが、入院したり介護状態になったりした時の費用負担です。ご相談者はお父様の年金額や毎月の生活支出などを把握されていますが、資産状況についてはいかがでしょうか。預貯金のほか、マイホームとしてのマンションもありますね。保険などで老後の資金となるものはないでしょうか。また株や債券などの有価証券などはないのでしょうか。

もし、お父様のお金を使う必要が出てきたとき、どこからどうやって支払うことができるのか、資産の情報を把握しておいたほうがよいでしょう。

親に介護が必要になった時に、体力を提供したうえに、貯蓄や生活費からお金まで出すことになると、負担が大きくなります。また、きょうだい間での負担の割合が偏るとトラブル化することもあり得ます。ですから、まずは親自身のお金で介護費などを支払えるようにすることが望ましいでしょう。

直接お金や資産の話を聞きづらいという方も多いものです。その場合は、エンディングノートを書いてもらうなどし、把握できると良いでしょう。3,000万円という多額の老後資金の不足額は、すぐにカバーできるわけではありませんが、何もしなければ、完全に破綻してしまいます。家計を見直し、少しずつでも改善していきましょう。ご高齢ということで刹那的になるのではなく、できることを実践してください。

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