ドローンで海ごみ調査 五島市 空撮写真から量算出 ウェブで公開「回収効率化のきっかけに」

漂着ごみが散乱する海岸でドローンを飛ばす入江さん(左)ら=五島市三井楽町

 国内外から大量の海ごみが漂着する長崎県五島市で、小型無人機ドローンを活用した定点調査が進んでいる。定期的に空撮した海岸の写真を基に、漂着ごみの体積を算出。場所や季節で異なるごみ量をデータ化して把握することで、市の効率的な回収につなげる狙いだ。空撮した動画や写真などはウェブ上でも公開しており、市は「多くの人や企業に現状を知ってもらい、新たな対策のきっかけになれば」としている。
◆毎年1億円
 市は環境省の補助金を活用し、毎年約1億円をかけて漂着ごみの回収や分別などに取り組む。昨年度は約1億800万円の事業費で約3千立方メートル(246トン)を処理した。業者に委託するなどして対応しているが「ごみの量は天候や潮位にも左右される上、人が入れない海岸もある。全ては回収できず、観光地などを優先している」のが現状だ。ドローン調査は昨年1月に始め、ウェブサイトは同3月に開設した。
 調査地点は、福江島の三井楽半島や鐙瀬(あぶんぜ)、奈留島、久賀島など市内9カ所の海岸。現在は1カ所を3カ月に1回訪れ、ごみの量の推移を調べている。市地域おこし協力隊の濵本翔さんが主導し、ドローン撮影やウェブサイト運営などは委託を受けた新木仁士さん、入江雄一さんらが担う。
◆台風後急増
 ドローンでは、サンプルとして各海岸の200平方メートル(20メートル×10メートル)の写真を撮影。一緒に写した1メートルの物差しを基準に、ごみの表面積や体積などを算出している。昨年の調査では、春から梅雨にかけて漂着ごみが流されるなどして減った海岸があった一方、9月の台風接近後は複数の地点で急増したことが判明。サイトでは推移をグラフにまとめている。
 また市内ではNPO法人や市民グループによるごみ回収活動も行われており、サイトには回収イベントの告知や参加者募集などができるコーナーも設けた。
◆国内外から
 1年以上、現場調査を続ける新木さんは「中国や韓国など海外からのごみが多いと言う人もいるが、日本や地元のごみも3分の1ずつはある。地元でも海ごみを増やさない心掛けをしてほしい」と求める。濵本さんは「多くの人に現状を知ってもらいたい。サイトで情報公開したことで、島外の事業者から海ごみ対策で何か協力したいという声も届いている。市の回収業務でも、ごみ量の迅速な把握などに活用したい」と話した。

漂着ごみの量を数値化する際の基準となる1メートルの物差し

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