「中止」決めきれぬ東京五輪 競技数を減らし〝ミニリンピック〟強行も

あくまで五輪開催にこだわる森喜朗氏(左)と小池百合子東京都知事

ついには苦肉の策まで…。新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれている東京五輪について英紙「タイムズ」は、日本政府が内密に中止を結論付けたと報じて大きな波紋が広がっている。日本政府、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)が火消しに走るいつもの光景が繰り広げられたものの、現状ではすんなり開催というわけにはいかない。水面下では中止や2024年スライド案などが浮上する中、あの時と同じような〝ミニリンピック〟となる可能性まで出てきた。

英紙の報道を受け、日本政府、組織委、IOCは即座に否定に動いた。日本政府は「そのような事実は全くございません」と完全否定。組織委も「政府においては、菅総理が大会開催への決意を示しておられ、また、コロナ対策調整会議を設置し、大会開催のために徹底的なコロナ対策を講ずることを主導いただいている」とコメントを発表し、IOCも「絶対に事実ではない」との声明を出した。

ただ、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう状況では、いずれも説得力に乏しい。東京五輪関係者は「水面下で誰が中止と言うのか、IOCと日本側で駆け引きが続いていてもおかしくはない」と証言。コロナ禍が終息しない状況では、大会を主催するIOCが中止の断を下すことが理にかなっているが、自ら言い出せば多額の損失につながる。

IOC事情に詳しいある競技団体幹部は「IOCは責任を取りたくないので、自ら『やらない』とは絶対言いません」と断言する。IOC元副会長で名誉委員のケバン・ゴスパー氏(87)が「国連に開催可否の判断を委ねては」と発言したのがいい例だ。

自分たちで決められないなら、誰かに決めてもらうしかない。その上で前出の幹部は「コロナの状況次第だが、最終的には、IOCは各IF(競技団体の国際連盟)に参加、不参加の判断を委ねるのではないか。最終的に参加競技数は(東京五輪33競技の)半分の15ぐらい。五輪という名の小規模大会を開催する形になると思う」と驚きの見通しを披露。これまで可能性を指摘されてきた中止でもなく、4年後のスライド開催などでもないやり方もあるという。

世界中の感染拡大が止まらなければ、米国のような有力選手を多く抱える大国が参加を見送ってもおかしくはない。その時点で、もはや東京五輪が世界一を競う場とは言えなくなるだろう。さらに国だけでなく、競技団体レベルで参加見送りの判断を下す可能性も否定できない。一方で「参加したい」という競技団体がある限り、IOCは中止にはしないという。最終的には競技数、選手数が通常開催の半分にも満たず、もはや「五輪」などとは呼べない〝ミニリンピック〟になる…というわけだ。

IOCの最古参委員、ディック・パウンド氏(78=カナダ)は開催の可否について、春以降になるという見方を示している。東京五輪の開催可否や開催方式における終着点はどこになるのだろうか。事情は全く異なるものの、当時の東西冷戦のあおりを受け、米国や日本など西側諸国が参加をボイコットした1980年モスクワ五輪は極端に参加国と参加選手が少ない中での開催だったが、果たして…。

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