アーセナルファンは仲間を見殺し? 「サッカーファンはチームが弱いほど絆が強い」と判明

ロンドンだけでも数えきれないほどのクラブがあり、フットボール文化が深く根付いている英国。そのなかには世界的強豪クラブもあれば、苦闘を続けているクラブもある。

そうしたなか、『The Conversation』が興味深い研究結果を伝えた。

それによれば、「長く苦しんでいるクラブのサポーターたちほどクラブに“結合”しており、自チームのサポーターたちへの忠誠心が強い」という。人がグループの一員であると感じる時、その強固な帰属状態を“アイデンティティの融合・結合”と呼ぶそう。

今回の調査対象とされたのは、英国のトップリーグで最も成功している5クラブと最も成功していない5クラブ。

前者がマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、チェルシー、リヴァプール、マンチェスター・シティ。後者がクリスタル・パレス、ハル・シティ、ノリッジ、サンダーランド、WBA。

これらのクラブを応援するファンたちに「自チームのファンたちを親族のように感じているか」、「5人のファンの命を救うために自ら電車に飛び込むか(自分1人を犠牲にして仲間5人を救うか)」などの質問をしたそう。また、長期的な不快感(不満など)についても聞いたという。

調査の結果、自分を犠牲にして仲間の命を救うことを最も望んでいたのは、クリスタル・パレスのファン(34.5%)。一方、最も低い値だったのは、アーセナル(9.4%)だったそう。

また、社会的な絆・結びつきが最も強かったのはハル。逆に社会的な結びつきが最も低かったのはチェルシーだったとのこと。

なぜこのような結果になるのか。

これまでの調査では、「降格やダービーマッチでの辛い敗戦などの悲しい経験の共有が他のサポーターグループとの絆に結びつく」ことが示唆されているという。

優勝などの幸福感に満ちた出来事もグループの結びつきを強化しうるものの、人々に本当に残るのは悲しい出来事のほうだそう。

また、弱いチームのファンたちの並外れた忠誠心を説明するもうひとつの側面は、認知的不協和理論だとか。

人間は自分の信念や価値観と矛盾する行動をとると強いストレスを感じる。

長く苦戦しているチームを応援しているファンたちに「なぜ自分はこんな経験をしているのか?」という問いをした場合、「このクラブが大好きだから」という回答になる可能性が高い。これが勝利によって報われることのないクラブに多大な時間や金を費やすことへの食い違い(不協和)を減退させるものかもしれないという。

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ただ、不協和が発生するためには、ファンたちがそのグループのために苦しむことが自発的であると認識される必要がある。

理論上はファンたちはいつでもサッカーの応援を止めることができる。だが、現実には多くのファンたちは親や友人など現存する関係性を通じてファンになる。

これによって、断ち切ることが困難かつ複雑で永続的なネットワークにつながる可能性があるとのこと。

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