長崎出身の版画家・田川憲の水彩画公開 対比楽しんで アートギャラリー「Soubi’56」で31日まで

田川憲の版画「阿羅漢」(右)や水彩画が並ぶSoubi’56=長崎市出島町

 長崎市出身の版画家、田川憲(1906~67年)の水彩画や版画が、同市出島町の田川憲アートギャラリー「Soubi(そうび)’56」(日新ビル1階)で公開されている。田川は、古き良き長崎の風景などを版画で描いたが、水彩画作品は珍しいという。
 田川は長崎商業学校(現・市立長崎商業高)を卒業後、画家を志して上京。木版画家の恩地孝四郎に学び、自画・自刻・自摺(ず)りによる芸術としての木版画「創作版画」に取り組んだ。従軍画家として大陸に渡り、帰郷後は古里・長崎の洋館や唐寺のある異国情趣をたたえた長崎の風景を数多く描き続け、「東の棟方志功・西の田川憲」とうたわれた。
 同ギャラリーは、田川憲と作品を多くの人に知ってもらおうと、孫の田川俊(たかし)さんと妻の由紀さんが2018年にオープン。通常は、所蔵する田川憲の作品群の中から版画1点と作品に関する手記(エッセー)1点を2カ月ごとに展示・入れ替えをしている。
 今回はオープン3周年を記念し、特別に同ギャラリーが所蔵する田川の水彩画約20点のうち色紙作品8点も一緒に並べた。同市南山手地区から望む洋館と長崎港、出島などの風景、ジンジャーやパンジーの花を描いた作品のほか、南蛮人や長崎くんちの傘鉾(かさぼこ)、精霊船のみよしなど長崎のシンボルとなるものを1枚に描き詰めたものもある。
 田川は、展示中の手記「ただ一つのもの」の中で、版画を彫ることを「緊張」と記していた。由紀さんは「(版画と違い)水彩画は自由に楽しみながら描いていたのではないだろうか」とみる。
 今回展示している版画1点は、風景画ではなく、仏教の聖者「阿羅漢」が鬼を腕で押さえ込む様子を描いた作品。「新型コロナウイルスを押さえ込んでほしい」という思いを込めた。
 由紀さんは「今回の水彩画はこれまで公開したことがない作品。版画と対比しながら楽しんでほしい」と話した。
 水彩画の公開は、1月31日まで。毎週金、土、日曜日のみ開場(午前11時~午後6時)。入場無料。同ギャラリー(電095.895.7818)

田川憲が長崎のシンボルを色紙に描き詰めた水彩画=Soubi’56

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