インフルエンザ激減

 ぱらぱらと記事の切り抜きノートをめくると、1年前のちょうど今頃、本欄で新型コロナウイルスについて初めて書いていた。鳥インフルエンザに口蹄疫(こうていえき)ウイルスと「見えない敵」は前からいたが、いま新たな敵がやってきた、と▲2年前の今頃、2019年1月は、インフルエンザが急拡大していた。流行はまだまだ加速しそうだと本欄に書いている▲その月、県内ではインフルエンザ感染者の1週間の報告数が、1医療機関当たり55人を超えた。施設のお年寄りが集団感染する例が全国で相次ぎ、列島は真冬の脅威にさらされていた▲今はどうか。コロナが拡散する一方で、インフルエンザの患者は例年よりぐんと減っている。感染者は1医療機関当たりで1人にも及ばないという▲マスクの着用、消毒、手洗いが日常生活で定着したこと。海外から観光客が来なくなり、ウイルスの“持ち込み”が減ったこと。この二つが感染者減少の理由らしい。世界的にコロナ感染が広がったからこそ、インフルエンザは抑え込まれたことになる▲毎年、今の時期はウイルスに油断ならないが、この先はどうだろう。コロナ禍はいずれ収まり、生活習慣が変わったことでインフルエンザの流行は抑えられていく-と、この苦境を越えた後の「脱ウイルス社会」を、つい夢想する。(徹)


© 株式会社長崎新聞社