「考えるからこそ、やりがいが見つかる」 春夏2度の甲子園出場、慶応高・森林監督の野球論

著書を出版した慶応高の森林監督=同校の日吉台野球場

 高校野球の強豪・慶応で指揮を執り、春夏2度の甲子園出場に導いた森林貴彦監督(47)がこのほど、独自の指導法や野球論を一冊にまとめた。選手が主体的に取り組むことの大切さを説き、「野球をツールに物事を考える習慣や困難に立ち向かう力、スポーツマンシップを身に付けてほしい」との願いを込めている。

◆選手が自ら動き、協調性を
 「Thinking Baseball 慶應義塾高校が目指す“野球を通じて引き出す価値”」(東洋館出版社)と題した著書では、指導者を志すきっかけとなった高校時代の思い出を明かしている。

 当時の上田誠監督から「二塁けん制のサインを考えなさい」と提案され、選手同士で議論を重ねて新しいサインを生み出したという。「グラウンドが暗くなるまで夢中になった。考えるからこそ自分なりのやりがいを見つけられる」

 選手自らが動き、仲間との協調性を養うことができるのは、教室だけでは学ぶことができない野球の魅力の一つだと考える。慶応ではノーサインで練習試合に挑んだり、選手に1週間の練習メニューを組ませたりもしてきた。

◆「甲子園を人生のクライマックスにしないで」
 県高野連加盟後10度の甲子園出場を誇る慶応には、県内外から毎年有望な選手が集まってくる。「脱・丸刈り」の先駆けとなった自由な校風を引き継ぎ、指揮官が見いだそうとするのは勝利至上主義とは異なる価値観だ。

 「高いレベルで選手主体の指導をしている慶応だからこそ、日本一にならないといけない。でも、甲子園を人生のクライマックスにしないでほしい」と持論を展開する。

 描く指導者像は明快だ。「選手を斜め上の角度からドローンのように見守って、間違えたら軌道修正する。選手の努力、やる気を良い方向に導くこと」。本著を通じて、若手指導者らの課題解決の一助になればとも考えている。

© 株式会社神奈川新聞社