コロナ禍で「死にたい」と思った文化人は3割超…芸術・エンタメは「不要不急」なのか

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新型コロナの感染拡大はいまだに収束の目途が立っておらず、さまざまな業界に大ダメージを与えている。とくに音楽や演劇、映画といった“文化”に関わる業種では、苦境に立たされている人が多く存在するようだ。とあるアンケートでは3割以上の文化人が「死にたい」と思ったことがあると回答し、大きな波紋を呼んでいる。

該当のアンケートは、『演劇緊急支援プロジェクト』が昨年12月31日から今年の1月7日にかけて実施したもの。「文化芸術に携わる全ての人の現況とコロナの影響に関するアンケート」と題して、自粛生活が始まって10カ月が経過した現在の状況についてリサーチが行われた。

アンケートには団体に加盟している会員や「文化芸術に携わるすべての人々」が参加し、5,378の回答が集まることに。そこで「コロナ自粛前から、現在の収入は変わりましたか?(概算払いを除く)」と質問したところ、最多となる39.1%の人が「50%以下」と回答。また、5.4%の人は「無収入」と答えており、「いま先々の新しい仕事の依頼はありますか?」という質問でも「まったくない」という回答が32.6%を占めている。

経済的な困窮に伴い、メンタル面で追い詰められている人も多い様子。「コロナ禍で死にたいと思った事はありますか」という質問に対して、32.5%の人が「ある」と回答。また「いまの状況で思うこと」を尋ねた項目では、《仕事が無くなるのはもう嫌です。生きていけません》《コロナに感染しなくても、死んでしまうんじゃないかと思う》といった悲痛な叫びが表明されていた。

ミュージシャンの世良公則は、自身のTwitter上でアンケート結果について言及。「実際はこれ以上だろう」「関係業者も含め調査が必要」と、問題提起を行っている。

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文化や芸術が追い込まれている窮地

文化人に対する経済的なサポートとしては、文化庁による「文化芸術活動の継続支援事業」をはじめとしてさまざまな施策が行われてきた。しかし手続きが煩雑であったり、フリーランスでは申請が困難であったりと、実情に即しているとは言い難い。文化人に対して十分な支援が行われていない理由としては、そもそも文化が「不要不急」と見なされている…という背景がある。

娯楽や芸術は、人が生活するうえで必要不可欠なものとは考えられていない。この問題については、コロナ禍のはるか以前から議論が交わされてきた。もっとも有名なものとしては、小説『嘔吐』などで知られる世界的文学者、ジャン=ポール・サルトルをめぐる論争が挙げられる。サルトルは1964年、新聞のインタビューに答えるかたちで「飢えて死ぬ子どもの前では『嘔吐』は無力だ」と発言。そして、文学者は飢えている人間の側に立つべきだと主張した。

いくら優れた作品であっても、空腹を満たすことはできない──。誰もがそう思っているからこそ、サルトルの発言は大きな波紋を呼び、現在に至るまでさまざまな作家たちに言及されてきた。しかしコロナ禍によって明らかとなったのは、むしろ「空腹を満たすだけでは生きられない」という事実ではないだろうか?

ひたすらに自粛を強いられる日々が始まってから約1年。その中で精神的に疲れ果て、耐えきれなくなってしまう人は少なくない。生命が脅かされている今だからこそ、「いかに心をケアするか」という問題が浮き彫りとなりつつある。そうした意味では、文化は決して不要不急などではなく、社会的な使命を帯びていると言えるだろう。

この社会に住む人々の生活を守るためにも、一刻も早く文化人に対するサポートが整備されることを期待したい。

文=田村瞳

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