イーロン・マスクもアニメファン!?今後は著作権ビジネスが儲かる理由、注目の国内7銘柄

昨年公開された「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が、コロナ禍でありながら社会的なブームとなり、日本における映画の興行収入ランキングで1位となりました。

日本の映画における歴代興行収入ランキングを調べてみると、ランキング20位の内、9作品がアニメ作品で内2本がディズニー作品、残り7本が日本のオリジナル作品でした。

邦画実写映画はなんと1作品のみと、日本国内においてはアニメの影響力の高さが際立っています。


米テスラのイーロン・マスク氏もアニメファン⁉

海外でもアニメの人気は上昇の一途を辿っています。特に、新型コロナウイルスの流行により巣ごもりとなったことで、アニメの視聴機会が増えているようです。現在、多くの国や地域の動画配信サイトで日本のアニメ作品が上位を占めています。

その影響力は大きく、 フィリピンで日本のアニメ「超電磁マシーン ボルテスV」が実写リメイクされる話も出ています。

さらに、1月13日にはテスラやスペースXを手掛けるイーロン・マスク氏が「アイドルマスター」のキャラクターの1人である輿水幸子の画像をツイッターに投稿して大きな話題となりました。その影響か、ツイート当日「アイドルマスター」の版権を持つバンダイナムコホールディングスの株価が大きく上昇するといったことも起きています。

これらの事例だけでも、海外においても日本のアニメが大きな影響力を持っていることが分かると思います。

動画配信サービスによって変わるアニメ

実はこれまで、日本においてアニメはヒット作しか儲からないシステムとなっていました。というのも、収益のほとんどをDVDやBD(ブルーレイディスク)の販売に依存していたからです。

しかし、近年大きな変化が起こっています。それは、Netflix(ネットフリックス)やAmazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)などの動画配信サービスの拡大です。この動画配信サービスにより、アニメが儲かるビジネスに変化しつつあります。

今までは、コンテンツの市場規模が成長していなかった日本で戦っていたものが、世界で視聴されるようになったことで潜在市場規模が拡大しています。今後は、インターネット配信権による収入が大きくなっていくことに期待できるでしょう。

さらに昨年、ソニーが日本のアニメ・ドラマ・マンガなどのコンテンツを提供する配信サービスを運営している「クランチロール」を買収しました。これにより、日本のアニメの世界展開が加速することに期待できるのではないかと見ています。

<写真:AFP/アフロ>

マンガは海賊版の被害が大きい

映像に続き、マンガの方に注目してみると、こちらはもう少し時間は掛かるかもしれません。その理由は、海賊版による被害が非常に多い状況だからです。

海賊版サイトで有名であった「漫画村」による被害額は3,000億円以上といわれています。海外ではまだ正規な方法でマンガへのアクセスがしにくいことや、翻訳が遅かったりすることで海賊版が溢れている状況です。

しかし裏を返せば、そこまでしても見たいというニーズは非常に高いとも取れるでしょう。この状況も、マンガサブスクリプションサービスや電子書籍、翻訳の迅速化など、着々と収益拡大期が近づいていると考えます。

更に、日本ではリーチサイトが違法化されただけでなく、今年1月1日より著作権法改正により、海賊版と知りながらマンガなどの著作物を読むためにダウンロードすることが違法化されました。

海外でも、徐々にですが海賊版への取組みが厳しくなってきています。また、ブロックチェーン技術が大きな役割を持つ可能性があります。所有権の明確化や偽造の困難さから電子書籍と非常に相性が良いため、海賊版の被害を減らす可能性があるのではないかと考えます。

著作権ビジネスにおける注目企業

注目企業は、キャラクターや作品の著作権、つまり知的財産(IP)を持っている企業です。

・ソニー(6758.東1)……ゲームのサブスクリプションで成功を収め、鬼滅の刃の制作に関わるアニプレックスを子会社に持ち、クランチロールを買収しました。

・メディアドゥ(3678.東1)……電子書籍の取次最大手です。3月に業界向けアルファ版として、ブロックチェーン技術を用いた第1段の「ソーシャル映像視聴サービス」を提供開始します。

・バンダイナムコグループ(7832.東1)……豊富な著作権保有コンテンツ数を誇り、海外市場の取り込み余地が大きいと考えます。

・東映アニメーション(4816.東JQ)……海外でも人気の高い、美少女戦士セーラームーンの劇場版が来年初頭に公開が控え、ワンピースやプリキュアなどにも携わっています。

・ブシロード(7803.東マ)……新日本プロレスやBanGDream!、トレーディングカードゲームなど各種IPを持ち、新たなIPとして育成中のD4DJのアニメを全世界(字幕15カ国語・吹き替え3ヶ国語)で配信して、世界市場の開拓を狙います。

・アルファポリス(9467.東マ)……自社運営サイトに投稿された小説などを書籍・マンガ化する事業を展開しています。

・KADOKAWA(9468.東1)……動画配信・出版大手で、「niconico」などを持ち、アニメ・マンガ・映画などのIPビジネスを国内外に展開しています。

<文:投資調査部 饗場大介>

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