世代を超えて紡がれる下町コミュニティ「霜降銀座商店街」

東京・駒込にある霜降銀座商店街

いろいろなお店が集まってできている商店街は、日用品や食材などを買いに行くときに便利な場所です。

中でも、JR山手線・駒込駅近くの「霜降銀座商店街」は、人情味あふれる人との距離感も魅力の商店街。常連客になると、よく買うものをお店の人が覚えていてくれたり、近況報告や雑談ができたりと、人とのつながりが感じられる場所に変わります。

お店は創業90年の肉屋、国産大豆100%を使った豆腐屋、手ごろな値段で新鮮な野菜がそろう八百屋、そして生活雑貨店など、どれもが地域の人たちに欠かせない存在。

しかし、この状況を残していくためには、行動を起こす必要があります。世代交代が行われずに高齢化したり、地域に住む人の数が減ってしまったりすると、大好きなお店が無くなってしまうこともありえるからです。

商店街にある靴専門店の3代目・中村さんは、数年前に霜降銀座商店街の公式HPの管理者になりました。

世界各国の観光客や日本人のお客さんに、この商店街を楽しんでもらいたい」と思い、公式HPのリニューアルを決断。各店に声をかけ、およそ2ヵ月かけて、取材や撮影をして特色を詳しく紹介したページを作りあげました。すると、日本各地から商店街の関係者が足を運んでくれるようになったのです。

そんな中村さんが営む靴専門店と、商店街のオススメ店を見てみましょう。

お客さんの人生に寄り添う「パリーシューズ靴専門店」

一般的な大人用の靴はもちろん、看護師、調理師、建設労働者などさまざまな業種の方に向けて、また子どもや足が悪くなったお年寄りの方向けなど、2000種類以上の靴を販売する専門店。63年前、中村さんの祖父の代にオーダーメイド靴の事業が始まり、時代の流れとともに靴専門店へと変化していきました。

店を継ぐ中村さん一家は、各人の足に合った靴を提案する「シューフィッター」の資格を持っていて、お客さんが満足できる快適な靴選びをサポートしてくれます。

「自分が子どものころよりも、現代のほうが靴の色や柄が豊富です。羨ましいですね」と中村さんは笑顔で話します。店頭に並べられた子ども用の長靴やスニーカーは、特にカラフルでした。

また、地域との結びつきも強く、近隣の学校指定の上履きも購入できます。

「学校を卒業し、社会に出る。結婚をして子どもを生むなど、ライフステージに合った靴を提供し続ける、お客さんの人生を子どものころから見守る靴専門店でありたいと願っています」(中村さん)

オンリーワンのジーンズが魅力!アメリカンスタイルのアパレル専門店「Jeans First」

「Jeans First」は、若いころからジーンズやアメリカンスタイルの服が好きだという、67歳の店主が営む専門店です。

「この仕事を始めて50年近く経ちますが、毎日のように店頭で販売している服を着ています」と店主。最高のモデルですね!

販売する服は、展示会場やメーカーから送られてきたカタログに目を通し、季節ごとに店主が自ら選んでいます。店主が選ぶものは柄ものや派手なデザインなど存在感のあるものがメイン。それらを好む大型バイクの愛好家たちがお客さんに多いそうです。

店主曰く、アジアからの旅行者は日本製の「oni denim」というブランドをよく購入していくそう。重量感のある素材、独特の竹の節のような模様、落ち着いた色合いと天然の染色などがファンにはたまらないとのことです。

大人も子どもも大好きな手づくりのパン店「飯粉屋」

お店の面積こそ小さいものの、毎日70~80種類ものパンを販売している「飯粉屋(ぱんこや)」。エビカツパンやフルーツホイップパン、朝食用のメロンパンなど豊富なラインナップで地域の方の人気を得ています。

パンの種類に合わせて作り方を変えるほど、商品にはこだわりが詰まっています。たとえば、あんパンや胚芽パンは天然酵母の製法を使い、弾力のある食感でおいしさを引き立てていますよ。

ひとつ30円の天然酵母「こどもぱん」はオススメ商品のひとつ。

名前を見て“子ども向けのパン”だと思っていましたが、「子どものように可愛いサイズで、ひとくち食べると幸せな気分になれたため『こどもぱん』と名付けました」とスタッフ。パンのきめが細かくふんわりした食感が大人にも人気です。

また、もっとも印象的だったことは、スタッフとお客さんの会話がとてもフレンドリーだったこと。そして常連さんがお店に来るとすぐ「用意してありますよ」と、希望の商品をすぐに渡している様子もありました。

「ただおしゃべりが好きなだけです」と言いますが、その温かな対応が飯粉屋の最大の魅力のように感じます。
*現在不定期で日曜休みです。

地域を代表するコーヒーブランド「百塔珈琲」

百塔珈琲(ひゃくとうこーひー)は駒込駅近くに2店舗を構えるコーヒーショップ。百塔とは、店主が「百塔の町」と呼ばれるチェコとその文化を愛していたことからつけられたと言われています。

店内にはレトロな雰囲気を演出させるインテリアが揃っています。商店街にある店舗は化粧品店だった場所を改装して作られたそう。

メインのハンドドリップコーヒーやエスプレッソをはじめとしたメニューはテイクアウトにも対応しており、お店でゆっくりできないお客さんでもおいしいコーヒーが楽しめます。近くの花屋や魚屋の方も常連だそうですよ。

百塔咖啡ではFUJI ROYAL焙煎機を使用しており、コーヒーの香りがしっかりと残る点が特徴です。豆はバリスタが毎朝、時間をかけて選んでいるそう。ひとくち飲めばその品質のよさが感じられるでしょう。

筆者のオススメはホットラテ。濃厚なミルクの香りとまろやかなコーヒーが魅力です。

数量限定で毎日販売される手作りスイーツは、夏には爽やかで甘酸っぱいオレンジ、冬にはチョコレートなどを使い季節ごとにメニューが変わります。

今回味わったのは、抹茶ホワイトチョコマフィン。ふんわりとしたケーキに抹茶の香りとブロック状のホワイトチョコレートを組み合わせた商品で、何層もの味わいがお腹を満たしてくれます。

温かな日常がある商店街

2020年に新型コロナ感染症が拡大してから、商店街に訪日観光客の姿が見えなくなってしまいました。しかし、不要不急の外出が制限されている中で、地域の方が商店街の魅力を再発見し始め賑わいを見せているようです。

商店街に流れる軽快な音楽、お店の人やお客さんの話し声、商店街が作る日常はみんなで守る価値のある文化です。日本に訪れた際には、温かな日常に触れられる霜降銀座商店街へ足を運んでみてください。

In cooperation with 霜降銀座商店街

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